ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

グラミー・ノミネート:ロナルド&アレサ

2011-02-14 01:55:37 | ソウル、ファンク
RONALD ISLEY / Mr. I

もうすぐグラミー賞!てなわけで今回は『Best R&B Performance By A Duo Or Group With Vocals』部門です。デュオもしくはグループと言うことで、何故かコラボが中心となったノミネート曲は以下の通り。

Chuck Brown, Jill Scott & Marcus Miller / Love
Chris Brown & Tank / Take My Time
Ronald Isley & Aretha Franklin / You've Got A Friend
John Legend & The Roots / Shine
Sade / Soldier Of Love

この中で真っ先に目を惹くのはやはりロナルド・アイズレー&アレサ・フランクリンという特濃デュエットですよね~。ま、それはとりあえず置いといて、新旧バラエティに富んだノミネートになりましたね。クリス・ブラウン&TANKとかジョン・レジェンド&ザ・ルーツのような今時のR&Bから、9年振りの新作を発表したシャーデー。そして大御所チャック・ブラウン。私はこのチャック・ブラウンの元気っぷりが嬉しいですね~。なんてったって“ゴッドファーザー・オブ・ゴーゴー”ですからね。70歳代半ばになってもまだまだお盛んな雰囲気が堪らないですね。ノミネート曲は最新作「WE GOT THIS」からジル・スコットとマーカス・ミラーが参加した「Love」。ボス的な貫禄たっぷりなチャック・ブラウンにジル・スコットがキレのある歌声で絡む。タメの効いたグラインド感抜群のリズムも最高です!

でもね、今回は何と言ってもロナルド・アイズレー&アレサ・フランクリンですよ! 曲が「You've Got A Friend」というのがまた良いじゃないですか。もちろんキャロル・キングの大名曲ですよ。キャロル・キングとジェイムス・テイラーの共演も良いですが、ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイによるデュエットも忘れられませんね。そして今度はあのアイズレー・ブラザーズのロナルド・アイズレーと、クイーン・オブ・ソウルことアレサ・フランクリンのデュエット!

現在考えられる最もディープなデュエットではないでしょうか? いきなりフェイクみたいな感じで入ってくるアレサに、崩しすぎて不安になるほどセクシーに歌うロナルド。ハーモニーなんかもそれぞれ自由気侭に歌ってるような感じでありながら極上に絡み合っていく。堪りませんね。曲が進むに連れてアレサの歌唱は大きく力強くなっていく。まるで大海原のよう。一方のロナルドは大人のフェロモンを出しまくる。濃いですよね。

ちなみにロナルド・アイズレーは、脱税によりおよそ3年間刑務所に入ってまして、昨年の4月に出所したばかり。刑務所内でも王様振りを発揮していたなんて話もあったり。その出所後初のアルバムがこの「You've Got A Friend」を含む「Mr. I」。一方のアレサ・フランクリンは、昨年末に膵臓がんの手術を受け闘病中と報道されたばかり。これはショックでしたよね。早く元気になって頂きたいです。今回のグラミーではアレサ・フランクリンをトリビュートするパフォーマンスも予定されているとか。どんなアーティストが何を歌うのか楽しみですけど、アレサのことを考えるとちょっと複雑ですね。

グラミー・ノミネート:ロバート・プラント

2011-02-13 20:09:26 | ルーツ・ロック
ROBERT PLANT / BAND OF JOY

もうすぐグラミー賞!ってことで今回は『Best Solo Rock Vocal Performance』部門です。気になるノミネートは以下の通り。

Eric Clapton / Run Back To Your Side
John Mayer / Crossroads
Paul McCartney / Helter Skelter
Robert Plant / Silver Rider
Neil Young / Angry World

ロック・ヴォーカル・パフォーマンスと言うことで、ジョン・メイヤー以外はベテラン勢が並びましたね。グラミーらしいと言ってしまえばそれまでなんですが、素直にベテラン勢の活躍を喜びたいですね。しかもこのベテラン勢のなかに違和感無くジョン・メイヤーも収まってる感じで、もちろん良い意味で! ちなみにクラプトンの「Run Back To Your Side」は最新作「CLAPTON」からデルタっぽいギター・リフが印象的な曲。ジョン・メイヤーの「Crossroads」はもちろんロバート・ジョンソンというよりクリームのあれ。ポール・マッカートニーはビートルズ曲を多く含んだライヴ盤「GOOD EVENING NEW YORK CITY」から。ニール・ヤングについては先日書いたばかりなので興味のある方にはそちらを読んで頂くとして、今回は前回の予告通りロバート・プラントです!

実は私、ツェッペリンよりパープル派なんです。なのでプラントよりギラン派です。ま、どうでもいいですね…。で、ロバート・プラントについては、ツェッペリンの1枚目と2枚目ぐらいまではホント凄いシンガーだと思います。あの頃のプラントは大好きです。でもあの頃あまりに凄すぎたためか、その後急激に喉が衰えていった印象。それでもあの唯一無比の歌声だけで、最後までツェッペリンをツェッペリンたらしめていた存在だったとは思っています。

でも逆に、だからこそツェッペリンが解散した後、その存在感がかえって足枷になっていたとも思います。私もなんだかんだ言ってツェッペリンは全てのアルバムをかなりの頻度で聴いてきましたよ。でもロバート・プラントのソロ作はほとんど聴いてないんですよね。やはりあまりにもツェッペリンの影が大きいのと、どうしても全盛期の凄みと比べちゃうとっていうのがあって…。

そしてあのアリソン・クラウスと組んだ前作「RAISING SAND」ですよ。当初はなんでロバート・プラントがアリソン・クラウスと?って思いました。でも聴いてみたら、これが案外良かったんですよね。ですけど、やはりプラントの声はプラントそのものですし、そこにはツェッペリンの幻影と言うか船影が見え隠れする。でもそれを含めて、アリソン・クラウスの美声とT・ボーン・バーネットの幻想的なサウンドが独特の魅力を醸している。しかもこのアルバムはプラントにグラミー賞の2つの主要部門を含む5部門の受賞をもたらしました。これで一気に時の人となったプラント。ある意味、このグラミー受賞がプラントをツェッペリンという足枷から解き放ったとも言えるかもしれませんね。

そんなプラントが「RAISING SAND」の次にリリースしたのが「BAND OF JOY」。プロデュースにはプラント自身と共にバディ・ミラーが名を連ねる。古くはエミルー・ハリスのバック・バンドでならしたギタリストですが、現行アメリカーナ・シーンのキー・パーソンの一人といても良いでしょう。彼は「RAISING SAND」に伴うプラントのツアー・バンドに参加していましたから、その流れで今作への参加となったんでしょうね。

で、この「BAND OF JOY」、プラントの歌が良いんですよ! 「RAISING SAND」の成功からさらに一歩を踏み出した瑞々しさが感じられますし、現在のプラントならではの旨味と言うか、プラントだからこそ成せる味わいが、彼独自の世界観を描いている。また独特の“揺れ”と“広がり”を持つバディ・ミラーの歪んだギターがプラントの歌声によく絡む!さらにバック・ヴォーカルを務めるパティ・グリフィンのしっとりと溶け込むようなハーモニーも絶品。

ロス・ロボスの「Angel Dance」から始まり、リチャード・トンプソンの「House Of Cards」、そしてバーバラ・リンの「You Can't Buy My Love」やケリー・ブラザーズの「falling in love again」までカヴァーするセンスも秀逸。さらに「Cindy, I'll Marry You Someday」や「Satan Your Kingdom Must Come Down」といったトラッドを取り上げているあたりも相当深い。この2曲でのプラントの歌唱にも引き込まれますね。これはディープですよ! またこれらの選曲やアレンジが醸すルーツ解釈も見事。

そして今回『Best Solo Rock Vocal Performance』部門にノミネートされた「Silver Rider」。これはLOWという、近年米インディ周辺でスロウコアとかサッドコアなんて呼ばれているシーンの中核的なバンドの曲。このアルバムの中ではかなり異色な選曲だと思うのですが、その異色さも含めて今作の印象を決定付けている曲でもありますね。バディ・ミラーの幻想的なギター・プレイと、ロバート・プラントの低音&パティ・グリフィンの高音が溶け合いながら、ねっとりと空間を浸食しつつ独特の高揚感を帯びていく。歌自体は至って淡々としていますが、それが逆に何かを語ってくるんですよね。こういう歌唱をパフォーマンス部門にノミネートしてくるって、やっぱり流石はグラミー賞!

ちなみに、パティ・グリフィンはバディ・ミラーのプロデュースで昨年ゴスペル作「DOWNTOWN CHURCH」をリリース。こちらは今回『Best Traditional Gospel Album』部門にノミネートされています。

グラミー・ノミネート:ウィリー・ネルソン

2011-02-13 14:24:54 | カントリー
WILLIE NELSON / COUNTRY MUSIC

もうすぐグラミー賞、今回は「ルーツな日記」的に避けては通れない『Best Americana Album』部門です。気になるノミネート作品は以下の通り。

Rosanne Cash / The List
Los Lobos / in Can Trust
Willie Nelson / Country Music
Robert Plant / and Of Joy
Mavis Staples / You Are Not Alone

ジョニー・キャッシュを父に持つロザンヌ・キャッシュの最新作「THE LIST」は、ブルース・スプリングスティーン、エルヴィズ・コステロ、ジェフ・トゥイーディー、ルーファス・ウェインライト達をゲストに向かえたバック・トゥ・ルーツなカントリー作品。バックの暖かいサウンドもさることながら、ロザンヌの穏やかな中にもハリのある美声が良いですね。 特にスプリングスティーンとデュエットしたドン・ギブソンの「Sea Of Heartbreak」が素晴らしい!

ロス・ロボスの最新作「IN CAN TRUST」も流石のアルバムですね。スタジオ作としては通算14作目だそう。やっぱりこのゴツゴツとした感じのギターが良いですね。全体的にラティーノなやさぐれた哀愁を感じさせる作風の中、ガレージなラテン・ブルース・ロックとでも呼びたい「Do The Murray」が、彼等らしいスパイスが効いてて私は好きですね~。

メイヴィス・ステイプルズの「YOU ARE NOT ALONE」。先のロザンヌ・キャッシュの作品にも参加していたウィルコのジェフ・トゥイーディーがプロデュース。アラン・トゥーサンの「Last Train」なんかカヴァーしてます。あとCCRの「Wrote A Song For Everyone」とか。やはりゴスペルに根ざしたメイヴィスの歌声は素晴らしいですね。

そしてロバート・プラント。バディ・ミラーが全面参加した力作なんですが、実はこの部門でプラントとウィリー・ネルソンのどちらを取り上げようか迷ったんです。で、結局プラントは次回に回すことにしました。という訳で今回の注目はウィリー・ネルソンです。


ウィリー・ネルソン、カントリー界の大レジェンドですね。普通、これ程の人なら寡作になってもおかしくはないのですが、近年も充実した作品を次々にリリースしているから凄いです。盟友アスリープ・アット・ザ・ウィールと組んでウェスタン・スウィングを取り上げた前作「WILLIE AND THE WHEEL」も素晴らしかったですが、最新作「COUNTRY MUSIC」も流石の傑作。プロデューサーはT・ボーン・バーネットですからね。このアルバムが『Best Country Album』部門ではなく『Best Americana Album』部門にノミネートされている所以はその辺りにあるのかもしれません。

ウィリーのペンによるオリジナル「Man With The Blues」で始まり、トラディショナルを初め、マール・トラヴィスの「Dark As A Dungeon」や、レイ・プライス「You Done Me Wrong」、ハンク・ウィリアムスの「House Of Gold」などカントリーの名曲を取り上げているこのアルバム。バックはアコギ、ベース、バンジョー、マンドリン、フィドルなど、アコースティックな楽器が中心、そして肝はドラムレスであること。デニス・クロウチのベースを中心に土の温もりを感じるリズムが素晴らしい! バンジョーやマンドリンが奏でる朗らかなブルーグラス的音色に、バディー・ミラーのエレキ・ギターがアウトローな香りを注入する。この辺りのさじ加減は流石はT・ボーン・バーネットですね。

バック・メンバーは楽曲によって必ずしも一定ではないのですが、例えばフィドルでスチュアート・ダンカン、バンジョーにはライリー・ボーガス、ハーモニカにミッキー・ラファエル、マンドリンにはデル・マッコーリー・バンドのロニー・マッコーリーなど、名手が揃っていてる。バック・ボーカルにはジム・ローダーデイルも。彼等が奏でる土っぽくも麗しいカントリー・タッチが素晴らしいですね。名曲「Satisfied Mind」や「I Am A Pilgrim」の味わいなどは特に格別。またウィリーの渋みと甘みがブレンドされたような歌声がまた滲みるんですよ~。

一方で「Satan Your Kingdom Must Come Down」や「Nobody's Fault But Mine」などが与える、暗い陰影がこの作品を濃厚なものにしています。このブルージーな味わいは堪らないものがありますね。ウィリーの歌がまた深い! さらにアル・デクスターの「Pistol Packin' Mama」が微妙にリズム&ブルースっぽい味を醸していることも効いていますね。やはり一口にカントリー・ミュージックと言えど、それを一つの作品として立体的かつ奥行きのある作品に仕立て上げるT・ボーン・バーネットの手腕には恐れ入りますね。そしてそれを独自の語り口で自分の世界に昇華させるウィリー・ネルソンにも脱帽。


@ブルーノート東京

2011-02-12 18:01:13 | ジャズ
今日はカイル・イーストウッドのライヴを観にブルーノート東京に来ています。ジャム・セッション会員はチャージが無料になるということで、喜んで予約したのですが、実は、失礼ながら、この方のことよく知らないんですよね~。あのクリント・イーストウッドの息子さんらしいですね。ま、何はともあれ、生で聴くジャズ、良いに決まってますよね? ヴァレンタインも近いことですし、ロマンチックなジャズが聴けるかな?

グラミー・ノミネート:スタンリー・クラーク

2011-02-12 12:12:03 | ジャズ
STANLEY CLARKE / THE STANLEY CLARKE BAND

もうすぐグラミー賞。今回取り上げるのは『Best Pop Instrumental Performance』部門です。ポップ・インストゥルメンタルって、かなりマイナーな感じですけど、ノミネート曲は以下の通り。

Laurie Anderson / Flow
Jeff Beck / Nessun Dorma
Stanley Clarke / No Mystery
Gorillaz / Orchestral Intro
The Brian Setzer Orchestra / Sleepwalk

前衛的なパフォーマンス・アーティストとし著名な女流ヴァイオリニストのローリー・アンダーソンはルー・リードの奥様ですね。そしてジェフ・ベックの「Nessun Dorma」は、プッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」の中のアリア「誰も寝てはならぬ」のカヴァー。この曲はかのルチアーノ・パヴァロッティの代名詞的な曲で、私、大好きなんですよ。やっぱこの曲はパヴァロッティが歌わないと、という思いがある一方で、これをギター・インストでやってしまうジェフ・ベックはやはり面白いなと。ジェフ独特のアーム使いが秀逸ですね。ゴリラズの「Orchestral Intro」はアルバム「PLASTIC BEACH」の冒頭を飾る短いインスト。オーケストラによる小曲ですが、なんとなくデーモン・アルバーンっぽいメロディに惹かれます。ブライアン・セッツァー・オーケストラの「Sleepwalk」はサント&ジョニーのカヴァー。エイモス・ギャレットの名演が有名ですが、ブライアン・セッツァーもストレイ・キャッツの頃から演っている十八番。そりゃあエイモスと比べちゃうとさすがに分が悪いかもしれませんが、ブライアン・セッツァー版も相当良いです。

とまあ、なかなかマニアックでありながら興味深い楽曲が並んだこの部門。その中でも注目は何と言ってもスタンリー・クラークですよ! なにせこの「No Mystery」でピアノを弾いているのは我らが上原ひろみな訳ですから!! でもパフォーマンス部門とはいえ名義はスタンリー・クラーク個人なので、上原ひろみがノミネートされたことにはならないんですかね?どうなんでしょう?ま、どちらにしても嬉しいですよね~!

元々この曲はスタンリー・クラークが在籍したチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーが75年に発表したアルバム「NO MYSTERY」のタイトル曲。ちなみにその「NO MYSTERY」は当時のグラミー賞で『Best Jazz Performance By A Group』部門を受賞しています。その時から35年が経ってるんですね~。でも上原ひろみはチック・コリアとも縁が深いことを考えれば面白い選曲ですよね。ちなみにリターン・トゥ・フォーエヴァー時代にドラムを叩いていたレニー・ホワイトは、こちらではプロデューサーを務めています。

演奏はスタンリー・クラーク(b)、ルスラン(syn)、ロナルド・ブルナーJR(ds)というスタンリー・クラーク・バンドが核。そこにゲストのチャールズ・アルトゥラ(g)と上原ひろみ(p)が加わる感じ。特に上原ひろみはスタンリーと並ぶこの曲の顔といった感じにフューチャーされています。途中ちょっぴりレゲエっぽくなって、そこから上原ひろみのソロが始まる辺りが良いんですよね~。さらにスタンリーの強力なソロに繋がって、畳み掛けるようなエンディングへ突入みたいな。

この曲は昨年スタンリー・クラークが上原ひろみとレニー・ホワイトのトリオで来日した際にも演っていましたね。スタジオ録音だと所謂フュージョン的なサウンドなわけですが、この時のライヴはシンプルなアコースティック編成だったので、より私好みだったんですよね~。しかもこの曲はホーン隊を加えてステージ終盤に登場し、しかも上原ひろみのソロは熱いラテン調になるという、アレには痺れましたね~。


ちなみにこの曲意外でも上原ひろみが大活躍するスタンリー・クラークのアルバム「THE STANLEY CLARKE BAND」は『Best Contemporary Jazz Album』部門にノミネートされています。

グラミー・ノミネート:ニール・ヤング

2011-02-11 22:45:49 | ルーツ・ロック
NEIL YOUNG / LE NOISE

さて、もうすぐグラミー賞ですね。例年通り「ルーツな日記」的注目作品をバンバン紹介したいところですが、のんびりしているうちに、もう時間が…、みたいな。多分2~3枚しか紹介出来無いでしょうけど、とりあえず張り切ってまいりましょう!

という訳で、今回は『Best Rock Album』部門です。気になるノミネート作品は以下の通り。

Jeff Beck / Emotion & Commotion
Muse / The Resistanc
Pearl Jam / Backspacer
Tom Petty And The Heartbreakers / Mojo
Neil Young / Le Noise

見事に新旧並んだ感じですね。個人的にはジェフ・ベック、トム・ペティ、ニール・ヤングというベテラン勢に頑張ってもらいたいところ。で、今回の注目はニール・ヤングな訳です。最新作「LE NOISE」は弾き語りをメインにした作品。しかもほとんどの曲がエレキによるもの。1曲目「Walk With Me」の出だし、バーン!!というギターの轟音に痺れます。これはやっぱり空間が振動するような爆音で聴きたい。

プロデューサーはダニエル・ラノワ。U2で有名な方ですが、私にとっては何と言ってもネヴィル・ブラザーズの「YELLOW MOON」。そしてボブ・ディランの「OH MERCY」とか、ロビー・ロバートソンの「ROBBIE ROBERTSON」とか、エミルー・ハリスの「WRECKING BALL」など。どれも奥行きのある情緒豊かなサウンドが特徴で、“ラノワの音”を感じさせる作品ですね。しかしこの「LE NOISE」はそれらの作品とはちょっと趣が違います。ラノワ的な幻想感を帯びたルーツ解釈は影を潜め、ロック的な爽快感すら感じさせる。爆音ギターの音色がスカッとしているというか、抜けが良いんですよね。しかしその奥で歪み以外の音響系エフェクトが空間に溶け込んでいる辺りはやはりラノワ的。しかも聴き進めていく内に、その歪んだ爆音がディープに響いてくる。ドラムのビートがないことがかえって濃密な音空間を作りあげている感じ。これは聴けば聴く程、効いてくる作品。

いかにもニールらしいメロディを持つ「Sign Of Love」とか、「Angry World」や「Hitchhiker」辺りのロック的な曲が良いですよね~。爆音ギターにねっとりと絡むニールの歌声は相変わらず繊細なのか豪快なのかよくわからない感じで、それがまた独特な世界観を生んでるんですよね。その一方で「Love & War」や「Peaceful Valley Boulevard」という2曲のアコースティック曲も印象的。まるで深く沈むようなこの2曲が、轟音と轟音の隙間に横たわる深い“しじま”を感じさせてくれるようで秀逸です。

ロックの象徴でもある爆音。そしてその爆音が生み出す光と影。ある意味、究極のロック・アルバムでありながら、ロックの範疇を完全に飛び越えたアートのようにも聴こえる作品。たかが爆音なれど、それをこれだけディープに聴かせるダニエル・ラノワの手腕もさることながら、改めてニール・ヤングというアーティストの規格外な凄みを感じさせられました。

ちなみにニール・ヤングは今回、「Angry World」で『Best Solo Rock Vocal Performance』部門と『Best Rock Song』部門にもノミネートされています。

G.LOVE@新宿タワーレコード

2011-02-09 20:27:57 | ジャムバンド/オーガニック
今日はG.LOVEのインストア・ライヴを観に新宿タワーレコードに来ています。入場券が無いと前方スペースへは入れないのかと思ってたのですが、案外余裕で入れてラッキーでした。先程リハーサルもちょろっと観ましたが、超格好良かったです。やっぱり生は良いですね。もうすぐ始まるかな?




帰宅後追記:

G.LOVE、格好良かったですね~。インストアなので1人で首からハープのホルダー下げてのアコギ弾き語り。3月にリリースされる新作からの曲が中心だったようですね。「Milk and Sugar」はラグタイムっぽいノリ、「You've Got To Die」はフォーキーというかトラッドのような香りすら漂わし、かなり土っぽい感じで良かったですね。続く「Heaven」はブルージーでありながら、コード進行が洒落ててジャズっぽかったりするところが秀逸。そして新作のタイトル曲「Fixin' To Die」はデルタ・ブルースのブッカ・ホワイトですが、ボブ・ディランのカヴァーも有名ですね。G.LOVEもこの曲を演る前にボブ・ディランがどうの…と喋っていたような気がするので、やっぱり意識してるんですかね? この曲もブルージーでしたし、ダミ声で歌うG.LOVEに痺れました。新作以外では人気曲の「Rainbow」。やっぱり新曲と並ぶとあまりにもポップでしたが、終盤にスピード・アップして、荒々しくもフォーキーなハープを吹きまくる感じはやはりボブ・ディラン的で格好良かったです!そしてアンコールは「Baby's Got Sauce」。ノリノリな感じで。最後は前方のお客さん達と握手して終了。

それにしても思いのほかゴツゴツとしたと言うか、ざらついた感じの弾き語りで、ルーツやブルースが好きな人間としては、オー!って感じでしたね。もちろんG.LOVEらしいポップでヒップな感性にも溢れている。これは新作が楽しみになりました!


ちなみにセットリスト↓


曲名の横にそれにちなんだイラストが書いてあったりしてちょっと可愛い感じ。(G.LOVEからこのセット・リストを受け取った女性の方が写真を撮らせてくれました。 ありがとうございました!)


最近観たライヴ

2011-02-08 14:26:49 | フェス、イベント
MOUNT SUGAR / ハルノワ

このところ、ベスト・アルバム企画を書いていたこともあり、この数日に観たライヴの記録を怠っていたので、ここにちょろっと纏めておきます。

1月24日 MOUNT SUGAR、安部たかのり @中野 オルタナティヴスペースRAFT
これはRAFTが企画する「月曜日の音楽」というイベント。私のお目当てはもちろんマウントシュガーでしたが、初めて見る安部たかのりさんも、個性的且つユニークなフォーク・シンガーで、なかなか楽しめました。そしてマウントシュガー! 久しぶりに最前列かぶりつきで約1時間、たっぷり堪能させて頂きました。「愛しい人よそのままで」で始まり、「黄昏」「農家の嫁」「野生」など同じみの曲、さらに「ハルノワ」から「影送り」なんていう珍しい曲まで演ってくれました。バック・バンド無しの、森さんとアリサさん二人だけのセット。二人ならではの呼吸と間、そしてアリサさんの気怠くも優しい歌声。彼女独特のスウィング感と感情表現にうっとりでした。終盤はアンプを切り、マイクも持たずに「太陽」。そしてアンコールはユーミンの「ハロー・マイ・フレンド」。滲みましたね~。 なんかRAFTというスペースの飾らない雰囲気もあってか、いつも以上に素のマウントシュガーを感じられた気がしました。それとアリサさんの歌って、聴けば聴く程ディープに響いてきて、どんどんハマってしまう感じで、なんか参るな~。



1月29日 Bill Frisell @タワーレコード渋谷店
ジャズ・ギタリスト、ビル・フリゼールのインストア・ライヴ。今回はロン・カーター(b)とジョーイ・バロン(ds)とのトリオ公演のための来日でしたが、このインストアではエレキ・ギターを1本持ってソロで登場。ジャズ・ギタリストとは言え、ロック、前衛、映画音楽など、あらゆるジャンルでその手腕を発揮しつつ、カントリー・テイストにも秀で、ルーツ系の作品にも至る所で名を見つけることが出来る奇才ですからね、この日も3曲だけでしたが、繊細且つフリーキーなギター・プレイをじっくり味わせてくれました。やっぱり、ジャズだったり、ルーツだったりの解釈と言うか、咀嚼感が素晴らしいですよね。複雑な運指を淡々と紡ぎながら独特の世界を作りあげていく。そして曲が終わる瞬間に、何故か店舗の警報音がピーピー鳴り始めると、それに合わせてギターの高音をピーピー鳴らしたりというお茶目な一面も見せてくれたり。でもやっぱりたった3曲は短過ぎる。ま、インストア・イベントですから贅沢は言えませんね。


1月29日 CaSSETTE CON-LOS @タワーレコード渋谷店
2月05日 CaSSETTE CON-LOS @タワーレコード新宿店
で、ビル・フリゼールのインストア・ライヴが終わったあと、店内が混雑していたので、一旦外に出て街をぶらぶらしてたんです。そしてもう一度タワレコへ戻ったら、なんとカセットコンロスがインストア・ライヴをやっているじゃないですか! これは迂闊でした。ビル・フリーゼルに気を取られてか、この日カセットコンロスのインストアがあることをまったく知りませんでした…。マウントシュガーのバックで頻繁にパーカッションを叩いているフケさんがドラマーとして在籍するバンドなので、一度観てみたいと思っていたんですよね~。で、私が行った時にはすでに最後の曲が終わりかけていまして、しかし幸いにもアンコールがあったので、まあ、ちょっと得した気分でしたが…。そしてその1週間後、今度はタワレコ新宿店でインストア・ライヴ。これはしっかり最初から観てきました。日本語詩によるカリプソ・バンドですが、やっぱり生で聴くと良いですね~。インストアとは言え、このリズムは強烈です。フケさんもインストア仕様の簡素なドラム・セットでしたが、落ち着いたマウントシュガーとは違う、ノリノリな感じで良かったです。パーカッショニストの辻コウスケさんとのコンビも最高でしたしね。そしてヴォーカルのワダマコトさん、なんか妙な味があって良いですね。今度は本気ライヴが観てみたいです。


2月05日 MaNHATTAN @タワーレコード新宿店
すいません、まったく知らないバンドでしたが、タワレコでうだうだしてましたらインストア・ライヴが始まりました。3ピースのインストバンドで、現代的な先鋭と洗練を持ったグルーヴは流石に今時のクルーネスを感じますが、その一方でソウル・ジャズやジャズ・ファンクっぽさもあって、なかなか良かったです。てっきり新人さんの若いバンドかと思いきや、ドラムスは赤犬の濱本大輔さん、キーボードは元The Miceteethの藤井学さんと次松大助さんらしい。ちょっと意外。



*写真はマウントシュガーの「ハルノワ」。私がマウントシュガーを知った頃にはもう手に入らなくなっていた幻のアルバムだったのですが、最近またライヴ会場で売られていたので即買いしたもの。今から5年程前の作品ですね。「太陽」や「ストロベ」、「Sweet Home」などライヴでも同じみの曲が入っている一方で、「ホタル」や「オレンジ」で聴かせるダブ、レゲエなテイストが逆に新鮮。

そそるライヴ 2月編

2011-02-07 14:56:29 | そそるライヴ
関東近辺にて2月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。既に終わっているものも含まれていたりですいません…。

2/03(木)Chaka Khan @ビルボードライヴ東京
2/05(土)カセットコンロス @タワーレコード新宿店(インストア・イベント)観覧フリー
2/09(水)G.LOVE  @タワーレコード新宿店(インストア・イベント)
2/09(水)Angie Stone @ビルボードライヴ東京
2/11(金)moe. @赤坂BLITZ
2/11(金)アースガーデン“冬” EARTH@HOME2011 @浅草 都立産業貿易センター台東館
2/12(土)アースガーデン“冬” EARTH@HOME2011 @浅草 都立産業貿易センター台東館
2/12(土)MOUNT SUGAR @下北沢 BIG MOUTH
2/13(日)コトリンゴ  @タワーレコード新宿店(インストア・イベント)観覧フリー
2/14(月)笑福亭鶴瓶×上原ひろみ @恵比寿ザ・ガーデンホール
2/14(月)HALIE LOREN  @丸の内コットンクラブ
2/16(水)ESPERANZA SPALDING  @ブルーノート東京
2/18(金)Fried Pride  @タワーレコード新宿店(インストア・イベント)観覧フリー
2/18(金)SHANTI  @diskunion JazzTOKYO(インストア・イベント)
2/20(日)SHANTI  @タワーレコード渋谷店(インストア・イベント)観覧フリー
2/21(月)Macy Gray @ビルボードライヴ東京
2/23(水)Roy Ayers and Pete Rock @ビルボードライヴ東京
2/24(木)Kool & The Gang @ビルボードライヴ東京
2/24(木)Nas / Damian “Jr Gong” Marley @東京 ZEPP TOKYO
2/25(金)The Slip, The Barr Brothers @恵比寿LIQUID ROOM
2/27(日)SPEEDOMETER featuring BILLY WOOTEN  @ブルーノート東京



*お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!

2010年 ベストアルバム第1位!!

2011-02-06 14:01:58 | 2010年総括
GALACTIC / YA-KA-MAY

2010年「ルーツな日記」的ベスト・アルバム、栄えある第1位は、ギャラクティックの「YA-KA-MAY」で~す!!!! これはホント見事なアルバムですね。まさに新世代ニューオーリンズ・ファンクの一つの到達点であり、新しい日の出とも言える傑作ですよ!!

前作「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」でヒップ・ホップに大接近したギャラクティック。そして今作ではアラン・トゥーサン、アーマ・トーマス、ジョン・ブッテ、リバース・ブラス・バンド、トロンボーン・ショーティなど、ニューオーリンズのビッグ・ネーム達をゲストに招き、原点回帰したような印象を受けがちですが、いやいや、これは「LATE FOR THE FUTURE」~「RUCKUS」~「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」と続いた冒険の延長上にある作品と言って間違いないでしょう。リズムのファットさやミックス感覚は相変わらずヒップ・ホップ的ですし、変幻自在のフリーキーさはジャズ・ファンクやジャム・バンドの土壌を感じさせる。もちろん、今作がこれまでのアルバムに無い程ニューオーリンズ臭に溢れているのも事実ですし、正直、それが何より嬉しかったりもするのですが、それがあくまでもギャラクティック流の新しいニューオーリンズ・ファンクとして表現されているところが見事なんです!

これだけ個性的なシンガー及びプレイヤーをフューチャーしながら、ギャラクティックのファンクネスはまったくぶれてないですからね! まさにレジェンド達をギャラクティックの土俵に上げた感じ。こんな芸当が出来るのはギャラクティックを置いて他に無いですよ。まさにレジェンド達の声をも一つの具材としてグツグツと煮立てたガンボな状態。そしてそのガンボ感をさらにディープにしているのがラッパー達の存在。今作ではニューオーリンズのラッパー達が参加しているのですが、前作「FROM THE CORNER TO THE BLOCK」に参加したチャリ・ツナやギフト・オブ・ ギャブ とはまた違う、弾けるような猥雑さがあって良いんですよ! 残念ながらヒップ・ホップに疎い私には知る由もない方達なのですが、同じラッパーでもニューオーリンズはまた一味違うなと感じさせる。

つい先日、bmr誌をパラパラめくっていましたら、今、ヒップ・ホップ界ではニューオーリンズ産の「シッシー・バウンス」という音楽が注目されているらしいのです。その名の通りシッシー達によるバウンスな訳で、いわゆるゲイ文化の中から誕生したムーヴメントのようです。私なんかは日頃から「ニューオーリンズ音楽が大好きです!」なんて言っていますが、それは随分と偏ったものであり、R&B、ファンク、ブルース、ジャズ、ザディコなどを聴いて、ニューオーリンズを分かったような顔をしていましたが、かの地のストリートには、こんなシーンもあるんだな、と目から鱗でしたね。日本にいる限り、ヒップ・ホップに興味が無い限り、こういう情報ってなかなか耳に入ってこないじゃないですか。で、この記事を読んで、もしや?と思って調べてみましたら、やはりそうでした。この「YA-KA-MAY」に参加した BIG FREEDIA、KATEY RED、SISSY NOBBYなんかはみんなこのシーンのラッパー達。って言うかシッシー・バウンスの中心的人物達なのです!!

やっぱりギャラクティックと言うバンドは、ストリートに根ざしたバンドなんだと言うことを思い知らされましたね。と同時に、アラン・トゥーサンやアーマ・トーマスなどのレジェンド達と、シッシー・バウンスの猛者達を、共演こそ無いもののギャラクティックという同じ鍋の中に入れてしまう豪快さ。堪りませんね。しかも鍋の中でしっかりと反応し合ってますからね。それがこのアルバムの凄いところ。「YA-KA-MAY」は古きニューオーリンズも現在のニューオーリンズも、そしてメインストリームもアンダーグランドも全てをガンボにしたアルバムなのです。しかもそれが新しいニューオーリンズ・ファンクとして結実している奇跡。それはこれまでにギャラクティックが果敢に挑んできたチャレンジ精神の賜物ですし、様々なエッセンスが上積みされた成果とも言えるでしょう。なにより名手スタントン・ムーアを中心にした柔軟且つ強靭なファンク振りが素晴らしい!

それにしてもギャラクティックというバンドは面白いバンドですよね。セリル・ デクロウ(vo)が脱退した後は、インスト・バンドとして活躍していくのかと思いきや、ゲストを招いて、より自由度の高い活動振りを見せる。この「YA-KA-MAY」もその自由度が成せる可能性を最大限に引き出した作品ですよね。そしてこのアルバムを引っさげての来日公演も素晴らしかった! ゲストにネヴィル・ブラザーズのシリル・ネヴィル、そしてリバース・ブラス・バンドのコーリー・ヘンリーを連れてきましたからね。もちろん彼等をフューチャーしたニューオーリンズ色を全面に出したステージでありながら、やはりギャラクティック・ファンクは唯一無比の格好良さでしたよ! (ちなみに写真はその来日時サインを頂いたもの。)

何はともあれこの「YA-KA-MAY」、ギャラクティックという最大限の自由度を誇るこのバンドの特異性が成し得た大傑作です。ニューオーリンズ・ファンクに限って言えば、トロンボーン・ショーティの「BACKATOWN」の方が注目度が高いようですし、今後の影響力も大きいかもしれませんが、あのアルバムだってプロデューサーはギャラクティックのベン・エルマンですからね。ま、そんなことも含めて、今後のニューオーリンズはますます楽しみですね!

ちなみに、「YA-KA-MAY」については、彼等の来日直前にもレビューしているので、興味がある方はそちらもぜひ!→ ギャラクティック「YA-KA-MAY」