ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

バディ・ガイ

2011-02-27 14:49:46 | ブルース
BUDDY GUY / LIVING PROOF

グラミー賞『Best Contemporary Blues Album』部門を受賞したバディ・ガイの「LIVING PROOF」。ブルース&ソウル・レコーズ誌に「バディはブルースを殺す気か」とまで言わせた問題作。

私は近年のバディ・ガイ作品の中では前作「SKIN DEEP」が一番好きです。芳醇なグルーヴを提供するバック・バンドと俺流を貫くバディ・ガイがギリギリのところで調和している傑作だと思います。今作はプロデューサーもバック陣もその前作「SKIN DEEP」をほぼ引き継いでいるので、その路線を踏襲した作品と言えるかもしれません。が、果たしてそうでしょうか?

1曲目「74 Years Young」。枯れた味わいのスライドと、深みのあるバディの歌がいい雰囲気で始まるコクのあるブルース。良い感じだと思いきやブレイクと同時にバディの爆裂ギター・ソロが全てをぶち壊す!ギガギガした音質で闇雲に弾きまくるバディ。初めて聴いた時、そのテンションと言うか異質感に思わず笑ってしまいました。これはさすがにやり過ぎでしょう?と。その強引な早弾きは完全にブルースの世界を逸脱している。確かに前作でもバディが弾き倒す場面は多々ありましたよ。ですがそれはバディらしい“勢い”や“濃”さを感じさせるものでした。しかし今作での弾きっぷりには、何処か無理矢理感を感じさせられる…。これが私の第一印象でした。

バック・メンバーは、プロデューサー兼ドラマーにトム・ハンブリッジ(スーザン・テデスキ・バンドの初期のドラマーだった人。プロデューサーとしてはジョニー・ウィンターの「IM A BLUESMAN」などが有名。)、ギターにデヴィッド・グリッソム(ディクシー・チックス、ジョン・メレン・キャンプ、オールマン・ブラザーズ・バンド等)、キーボードにリース・ワイナンズ(元ダブルトラブル)、この辺は前作から引き続きの参加、ベースはウィリー・ウィークスに変わってマイケル・ローズ。マイケル・ローズってあのザ・プレイヤーズのマイケル・ローズですか?ナッシュヴィルのカントリー界隈でならした名セッション・マンで、近年はあのラリー・カールトン&松本 孝弘 のバックでも知られる人ですね。そしてバック・コーラスにはウェンディ・モートンとベッカ・ブラムレットも参加しています。

2曲目は「Hoochie Coochie Man」を思わせる正統シカゴ・ブルース「Thank Me Someday」。歪みまくったバディのギターと彼らしいヒステリックなヴォーカルが良い案配なエグ味を生み出していますし、ギター・ソロも前半はかなりディープで痺れます。しかしこれが後半から制御不能な荒くれ具合となってしまう。メンフィス・ホーンズが参加したアーバン・ファンキーな「On The Road」も、ふくよかなグルーヴを提供するバックと、気合いの入ったバディの歌声にグイグイ引き込まれますが、耳をつんざくようなギター・ソロに辟易してしまう。ヘヴィなリズムが強力な「Key Don't Fit」や、女性コーラスが格好良いタイトル曲「Living Proof」なんかも同様な印象。

しかし聴き進めるうちに、初めは違和感を感じたこのギターの強引さに寄り切られてくるんです。バディの規格外なエネルギーに感覚が麻痺してくると言うか。徐々に爽快感すら覚えてくる。そしてそんな曲に混じってB.B.キングとの共演曲「Stay Around A Little Longer」があるんです。これがね~、ほっこりした感じで良いんですよ!B.B.とバディが語り合うような曲調にほろっと来ます。思えば、ブルースと言う看板を背負うという意味で、この二人が最後の砦と言っても過言ではないと思うんです。しかもスタジオ録音での二人の共演はこれが初だそうです。今作にバディがB.B.を招いたという事実は結構大きいと思うんですよ。しかもバディはB.B.より10歳程年下ですからね。年齢順を考えれば、B.B.の方が先に逝く可能性が高い訳です。しかし年下と言ってもバディももう74歳です。何か期せるものがあったのではないでしょうか?

1曲目の「74 Years Young」というタイトルからして、そんな気概を感じさせられますよね。全体を通じて異様に高いテンションと、全てを薙ぎ倒すようなギター・ソロ。俺はまだまだ暴れるぞ!みたいなエネルギーに溢れています。バディが若い頃、元々ブルースとはそういう音楽だったのかもしれません。今はスタンダードと化したシカゴ・ブルースですが、あれは異様な怪物達が次々に怪演を繰り広げた歴史だったはずです。今作でブルースをぶち壊す程に暴力的なギター・プレイを聴かせるバディ、これはある種の決意表明であると同時に現ブルース・シーンへの喝なのかもしれません。

アルバム後半に入る頃にはバディの勢いに完全に打ち負かされてしまいます。重いシャッフル「Too Soon」やミドル・テンポの「Let The Door Knob Hit Ya」などもその勢いたるや半端無いです。スロー・ブルース「Guess What」でのゴツゴツとしたギター・プレイも相当ディープ。もちろんこれでもか!と弾きまくる。声もギター・プレイも74歳とはとても思えません。ラストを締めるインスト「Skanky」もカッコイイ!! 最後がインストと言うのも、やはりこのギター!これがバディ・ガイだ!という強烈な主張を感じさせます。凄い!

まあ、とにかく異物感たっぷりの怪作ですよ! それ故に賛否両論あるかもしれませんが、私はかなり好きです!


ちなみに今回『Best Contemporary Blues Album』部門にノミネートされた作品は以下の通りです。あまりブルース部門らしくないですね~。毎年こんな感じなんですから、いっそのことブルース&ソウル部門にすれば良いのに…、と思ったり。


Buddy Guy / Living Proof
Solomon Burke / Nothing's Impossible
Dr. John And The Lower 911 / Tribal
Bettye LaVette / Interpretations: The British Rock Songbook
Kenny Wayne Shepherd Band Featuring Hubert Sumlin, Willie "Big Eyes" Smith, / Live! In Chicago