ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

眼鏡予報とMOUNTSUGAR@上町SODO

2011-02-19 19:14:54 | SSW
今日はダブルフェイマスの鍵盤奏者でもある藤堂正寛さんの写真展「眼鏡予報」&マウントシュガーのライヴを観に上町SODOに来ています。眼鏡をかけた原田郁子さんの写真が飾られたカフェ店内はかなり良い雰囲気。そろそろマウントシュガーが始まるかな?


帰宅後追記:

今日は有意義な一日でした。世田谷散策と写真展「眼鏡予報」、そしてマウントシュガーのライヴですよ!

実は私、案外な歴史マニアでして、世田谷に行くにあたり、豪徳寺と松陰神社に参るのを楽しみにしていたんです。なぜなら豪徳寺には井伊直弼、松陰神社には吉田松陰、それぞれのお墓があるからです。安政の大獄を行なった大老、それによって斬首になった賢人。幕末好きにとっては感慨深い世田谷なのであります。さらに世田谷城址公園なんかもあったりで、遠い中世に思いを馳せたり。ま、それはここで語るべきことではないので多くは語りませんが、その散策の途中で、写真展「眼鏡予報」を鑑賞するために上町SODOへ寄りました。シンプルな内装にセンスを感じる素敵なカフェでした。ここはダブルフェイマスのパーカッショニスト、細窪洋介さんが手がけるカフェでして、メニューにダブルフェイマス・ブレンドというコーヒーがあったので注文してみました。実は私、コーヒーが苦手なのですが、これは美味しかったです!

壁にはクラムボンの原田郁子さんが眼鏡をかけた写真が並べられている。彼女が良い表情してるんですよ。眺めてるだけで和みます。もちろん眼鏡がポイント。代々木公園で撮影されたという、陽光を感じさせる明るい色調も気持ちよかったですね~。カフェの作る空気と写真の景色が良い感じに調和していました。また、その他沢山の写真がファイルに整理されていて、自由に閲覧出来るようになっていたので、私もじっくり堪能しました。ASA-CHANGさんやいとうせいこうさんの写真も印象的でした。さらに私が前に観たライヴの写真があったりして懐かしかったり。

そして夜はマウントシュガーのライヴ! 上町SODOでの「眼鏡予報」初日を飾るレセプションとのことでしたが、堅苦しい感じはなく、終始和気あいあいとした和やかなムードでしたね。マウントシュガーのライヴも最高でした。なんかカフェの空気に溶け込むような感じで。1曲目は「農家の嫁」。良かったですね~。この曲でのアリサさんのゆったりとしたスイング感は何度聴いても滲みますね。「KETE」や「パレット」、「光が消える前に」も良かった。最近、何故か男性ギタリスト&女性シンガーというデュオを観る機会が多いのですが、それぞれ個性的で、特にギターによる表現の違いが面白い。森さんのギターは、アリサさんの歌声にしっとりと添える感じが良いですよね。これみよがしに前に出ることはなく、ただただ暖かい音色を紡いでる。だからと言って単なるバッキングではなく、アリサさんとの呼吸の通じ合いが音楽を通して感じられる。歌を引き立てると言うより、歌と共にあるギター。この二人の醸す空気が良いんですよ。

ちなみに今回は「眼鏡予報」ということで、アリサさんも珍しく眼鏡をかけていまして、かなり似合っていました。でも視力が良いそうで、眼鏡は苦手なようでした。そしていつもならアリサさんが話題を振ってもほとんど喋らない森さんが、自身の視力についてのエピソードを語ってましたね。MCをする森さん、初めて観たかも。そして終盤は藤堂さんがマンドリンとピアニカで参加してのセッション。アンコールはマイクを外しての「太陽」。アリサさんのエモーショナルな歌声にうっとりでした!

なんか良い時間を過ごさせて頂きましたね~。無料で頂いたキッシュ的なものも美味しかったですし、帰り際にはマウントシュガーのお二人と藤堂さんと少しお話しすることも出来たり、アットホームで楽しいレセプションでした!



眼鏡予報のサイト→http://glasses-o-o-brille.com/

上町SODOのサイト→http://bbp.typepad.jp/blue_beat_project/

キャロライナ・チョコレート・ドロップス

2011-02-19 13:38:02 | カントリー
CAROLINA CHOCOLATE DROPS / GENUINE NEGRO JIG

グラミー賞『Best Traditional Folk Album』部門を受賞したキャロライナ・チョコレート・ドロップスの「GENUINE NEGRO JIG」。現代では非常に珍しいと思われる黒人ストリング・バンドです。メンバーはジャスティン・ロビンソン、ドム・フレモンズ、そして紅一点のリアノン・ギデンスのトリオ編成。カロライナ/アパラチアの伝統音楽を中心に、バンジョーやフィドルの音色が踊る古き良き時代の息吹を甦らせるような演奏を聴かせてくれます。この3人、数年前からタワーレコードなんかで見かけて気にはなってたんです。前々作にあたる「HERITAGE」なんかを試聴して、これ凄いな、とか思いつつも何となく買いそびれてたんですよね~。で、この最新作ですよ!なんとジョー・ヘンリーがプロデュース。これは迷わず買いですよね!

ソロモン・バークの「DON'T GIVE UP ON ME」や、ベティ・ラヴェットの「I'VE GOT OWN HELL TO RAISE」、エイミー・マンの「THE FORGOTTEN ARM」など、その独特なルーツ解釈と陰影に富んだサウンドで名を轟かせたジョー・ヘンリー。近年もランブリン・ジャック・エリオットの「A STRAGER HERE」でブルースを、アラン・トゥーサンの「THE BRIGHT MISSISSIPPI」でニューオーリンズ・ジャズを、さらにアーロン・ネヴィルの「I KNOW I'V BEEN CHANGED」でゴスペルをと、彼独特のルーツ探訪を進めますます鋭意盛んな制作活動を進めています。そしてこのキャロライナ・チョコレート・ドロップスではオールド・タイムな黒人ストリング・バンドですよ!

しかしこのトリオは貴重ですよね。少なくとも日本に輸入されるようなCDをリリースしている黒人ストリング・バンドはこの人達だけでしょうからね。おそらくアメリカ広しと言えど、この形態はほとんど絶滅危惧種のようなものなのではないでしょうか? でもカントリー・ミュージックのルーツとしてアパラチア地方で生まれた黒人ストリング・バンドがあることは間違いないことでしょうし、例えばバンジョーなんかは今ではカントリー/ブルーグラスの楽器として知られますが、元々はアフリカ系アメリカ人によって作られ親しまれた楽器で、そのルーツはアフリカにあるそうですしね。そんな古き良き伝統を甦らせるこの人達、しかも人間国宝的なお爺さんお婆さんではなく、若手3人組と言うのが素晴らしい!

この3人の出会いなどにつきましては中川五郎さんの「グランド・ティーチャーズ」に詳しいですが、それによりますと、3人はインターネットの「ブラック・バンジョー:昔と今(Black Banjo: Then & Now)」というサイトを通じて知り合ったそうです。これだけオールド・タイムの音楽をやっていながら、知り合ったきっかけがネットというのも面白いですよね。そしてこのバンドが結成されたのが05年、バンド名は1930年代に活躍した黒人兄弟バンド、テネシー・チョコレート・ドロップスに敬意を表しつけられたそうです。この辺にもこのバンドの真っすぐな姿勢が伺えますよね。そして06年「SANKOFA STRINGS」でアルバム・デビュー。最新作「GENUINE NEGRO JIG」は通算5作目にあたるそうです。

1曲目「Peace Behind The Bridge」からジャスティンの鄙びたフィドルが良い味わいですね。リアノンが5弦バンジョー、ドムが“bones”、直訳すると“骨”ですね。そんなパーカッションをならしてる。3人の織りなす空気はまさにオールド・タイム! スピード感のある「Trouble In Your Mind」ではドムがネイティブ・インディアン的(よくわかりません、私のイメージです。すいません…)な喉を鳴らす“throat singing”を聴かせる。「Your Baby Ain't Sweet Like Mine」ではドムがジャグを、リアノンがカズーを吹くなど、ジャグ・バンド的な風合いが楽しい。他にも「Cornbread And Butterbeans」や「Cindy Gal」、「Sandy Boys」といったトラディショナルでの、軽やかでノリの良い演奏に惹かれます。

一方でリアノンがフィドルを弾くタイトル曲「Snowden's Jig (Genuine Negro Jig)」のような独特な影のある曲も秀逸。どこか素朴なスピリチュアルを感じさせますね。ドムのギターをバックにリアノンがブルージーに歌う「Why Don't You Do Right? 」はカンサス・ジョー・マッコイのカヴァー。ジャスティンの惹くオートハープの音色が寂し気な情緒を醸す「Kissin' And Cussin' 」はそのジャスティンによるオリジナル曲。リアノンの美しいアカペラ独唱による「Reynadine」はおそらくイギリスの古いバラッド。さらにトム・ウェイツのカヴァー「Trampled Rose」があったり、「Hit 'Em Up Style」ではドムがビートボックスでリズムを演出してる!この曲のリアノンの歌唱も見事!

それにしても面白い3人ですね。一見、ただただ真摯なオールド・タイム探求者のようでありながら、彼等ならではのミクスチャー感と冒険心を持っている。新旧と明暗のバランス感覚により絶妙な立体感を演出させた影にはジョー・ヘンリーの手腕もあるでしょう。今回はグループのプロデュースと言うことで、お馴染みのジョー・ヘンリー・バンド的な面々が参加していないため、彼らしい魔術的なサウンドは聴かれませんが、やはり流石ジョー・ヘンリーと唸らされる作品ですね。


ちなみに、今回『Best Traditional Folk Album』部門にノミネートされていた作品は以下の5作品でした。

Carolina Chocolate Drops / Genuine Negro Jig
Luther Dickinson & The Sons Of Mudboy / Onward And Upward
The John Hartford Stringband / Memories Of John
Maria Muldaur / Maria Muldaur & Her Garden Of Joy
Ricky Skaggs / Ricky Skaggs Solo: Songs My Dad Loved