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ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ダーティ・ダズン・ブラス・バンド

2010-02-22 14:41:45 | ソウル、ファンク
DIRTY DOZEN BRASS BAND / MY FEET CAN'T FAIL ME NOW

待ってました! ダーティ・ダズン・ブラス・バンドの歴史的1stアルバム「MY FEET CAN'T FAIL ME NOW」。84年の作品。常日頃ニューオーリンズ!ニューオーリンズ!と騒いでいる私ですが、このアルバムは持ってなかったんですよね~。ず~っと聴きたいと思っていたのですけど、永らく廃盤状態だったそうです。バッファローさん、よくぞリイシューしてくれました!


ダーティ・ダズン・ブラス・バンド(以下DDBB)と言えば、もちろんニューオーリンズを代表するブラス・バンドな訳です。それまでのトラディショナルなスタイルにファンク・ビートを取り入れたスタイル、もしくはミーターズのセカンド・ライン・ファンクをブラス・バンド流に再現したようなグルーヴ、とでも言いましょうか? とにかくデビュー当時のDDBBの演奏は衝撃的な程に斬新だったようです。ただ、今ではDDBBのスタイルこそがニューオーリンズ・ブラス・バンド、というイメージになってしまっているので、彼らの“革新性”は分かりづらいところですけどね。

結成は意外に古く、77年頃だそうです。ニューオーリンズの重鎮であるバンジョー奏者のダニー・パーカーが、故郷の伝統であるブラス・バンドの現況に不満を抱き、その復興のため若者達を教会に集めて演奏させたのがことの始まりだとか。そこからいくつものブラス・バンドが巣立ち、その中の一つがDDBBになったそうです。そこからアルバム・デビューまで数年かかっていますが、その数年のライヴ活動により、この1st作で聴けるバンド一体で押し寄せる驚異的なグルーヴを培い、そして革新性に磨きをかけたのでしょう。

メンバーには、現在も中心メンバーとして活躍するグレゴリー・デイヴィス(トランペット)、エフレム・タウンズ(トランペット)、ケヴィン・ハリス(テナー・サックス)、ロジャー・ルイス(バリトン・サックス)が居ます。スーザフォンはもちろんカーク・ジョセフです。とにかく彼が本来エレキ・ベースの担うべきファンク・グルーヴをスーザフォンでブイブイと吹きまくるからこそ、DDBBの“革新性”が実現したのです。

今ではブラス・バンドのクラシックと言っても良い1曲目「Blackbird Special」からスーザフォンの低音に腰を持っていかれます。ゴツゴツと跳ねながらもスピード感たっぷりに地を這うベース・ライン! 格好良すぎです!! ジェネル・マーシャルのスネア・ドラムに、ベニー・ジョーンズのバス・ドラム、いわゆるドラム・セットではない典型的なパレード仕様の編成が産み出すブラス・バンドならではのビートのうねり。そこに怒濤のごとくホーン・リフが切り込んでくる。堪りませんね。

2曲目もオリジナル曲「Do It Fluid」。これも強烈。「Blackbird Special」もそうなんですが、とにかくノリが混沌としている。洗練されたジャズやフュージョンなんかでは絶対にありえ無い、まさに鍋がグラグラと煮立つようなガンボなノリ。それを実現させてるのはやはり絶妙な“ズレ”なんでしょうね。ミーターズはその“ズレ”と“隙間”で濃密なファンク空間を現出させましたが、DDBBには“隙間”はありません。リズム系の鳴りものと多彩なホーンが次から次へと押し寄せてくる。その押し寄せる波の重なり合いからファンクな汁がドロドロと溢れ出てくるのです。まあ、とにかく凄いですよ!

で、面白いのは、カヴァー曲。いかにもニューオーリンズな楽曲を揃えてきそうなものですが、以外にもチャーリー・パーカー、セロニアス・モンク、デューク・エリントンなんかを取り上げている。この辺りに、DDBBの先鋭的な体質が伺えますね。完全にニューオーリンズ・スタイルになっているモンクの「Blue Monk」や、エリントンの「Caravan」は特に出色の出来。さらにトラディショナルなフォーク・ソング「Li'l Liza Jane」はブラス・バンドの、いやニューオーリンズ音楽の楽しさと幸福感に溢れた逸品!

そしてタイトル曲の「My Feet Can't Fail Me Now」。これなんかはもうニューオーリンズ・クラシックと言っても良い曲ですよね。私もカヴァーなど色々なところでこの曲を聴きましたけど、やっとオリジナルが聴けました。感無量です。格好良いです! この曲に限った話ではないですが、ヴォーカルや粋なかけ声からストリートの雑踏のような雰囲気が感じられて良いんですよね。

現在のDDBBは、スネアとバスドラのコンビから通常のドラムセットへと代わり、ギタリストやキーボーディストを入れたり、ヒップ・ホップに近づいたりと、さらに伝統的なブラス・バンドのスタイルに拘らない活動を続けています。でもそれはこのファースト・アルバムが出た頃、いや結成された77年の頃と、変わらない姿勢なのかも知れませんね。