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ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

ボビー・チャールズを偲ぶ

2010-02-20 15:07:01 | ルーツ・ロック
BOBBY CHARLES / BOBBY CHARLES

ウッドストック派の名ボーカリストとして知られるボビー・チャールズが、2010年1月14日に亡くなられました。糖尿病や腎臓がんを患っていたそうです。彼がベアズヴィルから72年に発表したアルバム「BOBBY CHARLES」(上写真)はウッドストック・サウンドを代表する名盤ですよね。

プロデューサーはボビー・チャールズ自身とリック・ダンコにジョン・サイモン。バックにはエイモス・ギャレットを含むハングリー・チャックの面々、ドクター・ジョン、ジェフ・マルダー、そしてロビー・ロバートソンを除くザ・バンドのメンバー達など、ウッドストック縁のアーティストがこぞって参加しています。ゆったりとした時間の流れを感じさせる暖かなサウンド、その隙間から土っぽくもファンキーに漂う芳醇なルーツの香りを滲ませる、これぞウッドストック! って感じですよね。それはまるでこの頃のウッドストックがもっていた不思議なコミューン的空気感を凝縮したような魅力。そしてボビー・チャールズの歌声! 緩さと荒さがない交ぜになった人懐っこいサザン・フィーリング、そして何処か感傷的な味わい。まさにこのサウンドにこの歌あり!なのです。

曲目は全てボビー・チャールズの作曲もしくは共作によるオリジナル曲。名盤を予感させる印象的なイントロから絶妙なファンキー感覚で幕を開ける「Street People」。そして美しいピアノに絡むように揺れるエイモス・ギャレットのギターと柔らかくもソウルフルなボビーの歌声が素晴らし過ぎるスロー・ナンバー「I Must Be In A Good Place Now」。アコギとホーン隊の絡みがやたら格好良い「He's Got The Whiskey」。ベン・キースによるスティール・ギターにエイモスのエレキ・ギターが重なる美しさ、そしてその上で優しく歌うボビーの声にうっとりな「Let Yourself Go」。ガース・ハドソンのアコーディオンの音色が堪らない「Tennessee Blues」。さらに極めつけは大名曲「Small Town Talk」。良い曲ですよね~。出だしの口笛が堪りませんよね~。このオルガンはドクター・ジョンでしょうか? シンプルなアレンジから何とも言えない旨味が染み出るようです。まさにウッドストックを代表する1曲。


しかしこのボビー・チャールズ、確かに“ウッドストック派の顔”の一人であることは間違いありませんが、この頃ウッドストックに滞在したのはわずか2年程だったとか。ベアズヴィルからも本作品1枚しか発表していません。実はこの人の本質はルイジアナにあるのです。

1938年、ルイジアナに生まれたボビー・チャールズ。デビューは55年、以外にもチェス・レコードからでした。あのシカゴ・ブルースやチャック・ベリーのチェスです。50年代、ファッツ・ドミノを先頭に勢いを増すニューオーリンズ勢の獲得にあのチェスも名乗りを挙げたのです。シュガー・ボーイ・クロフォード、ポール・ゲイトン、クラレンス・ヘンリーをはじめ、アート・ネヴィルのホーケッツや、クリフトン・シェニエ、エディ・ボ、アール・キングなどもチェスに録音を残しているようです。そんななかボビー・チャールズはチェスにおける初の白人アーティストとして登場します。と言うより、ニューオーリンズとシカゴ間による電話オーディションを決行したチェス総帥レナード・チェスは、ボビーのことを黒人シンガーと思い込んで契約したとか。


VA / CHESS NEW ORLEANS
写真のアルバムはそんなチェスにおけるニューオーリンズ勢を集めたコンピ盤。確かに自作のニューオーリンズR&Bを溌剌と歌う若きボビー・チャールスの歌声はかなり黒人っぽいですね。柔らかいんですけどキレがある。そのスモーキーな質感はウッドストック時代とはまた違う瑞々しさに溢れていていますね。しかしチェスには3年在籍しシングルを7枚残したものの、大きなヒットにはならなかったそうです。その後もインペリアルなどからシングルを発表するもヒットには繋がらず…。しかし彼はソングライターとしては成功します。ここに収められたクラレンス・ヘンリーのヒット曲「(I Don't Know Why) But I Do」はボビーとポール・ゲイトンの共作。さらにチェスではありませんがファッツ・ドミノの「Walking To New Orleans」もボビーの手による名曲。そして伝説の電話オーディションで歌った「See You Later Alligator」はビル・ヘイリーがカヴァーして大ヒットしました。


BOBBY CHARLES / WALKING TO NEW ORLEANS
60年代半ばにはジュウェル/ポーラに録音を残します。この時代の作品を集めたものが写真のアルバム「WALKING TO NEW ORLEANS」。まだまだR&Bな味わいですが、チェス時代に比べるとかなり緩くなっています。聴き所はやはり「See You Later Alligator」と「Walking To New Orleans」のセルフ・カヴァーですかね。他には声の奥から笑みが見えるような「Everybody Laughing」、ファンキーな「Preacher's Daughter」、ルイジアナらしい円やかさが和む「Worrying Over You」、ゆったりリズムとまったりメロディーが染みる「The Jealous Kind」などなど。さらにレッド・ベリーやジミー・マクラクリン、ファッツ・ウォーラー、ドン・ギブソンなどのカヴァーも秀逸。しかしやはりヒットには恵まれなかったようですね。って言うかヒットするにはさすがに緩過ぎるでしょう…。私は好きですけど。

その後、紆余曲折を経て、ボビーはニューヨークへ移住、さらにウッドストックへ流れ着きます。なぜボビーはウッドストックにやってきたのか?その辺はよく分かりませんが、これも運命と言うか、何かの引力が働いたのでしょうね。そしてアルバート・グロスマンのベアズヴィル・レコードと契約し、名盤「BOBBY CHARLES」が誕生する訳です。そして彼の歌声がウッドストックにルイジアナ/ニューオーリンズの香りを運んだのです。ちなみにザ・バンドのホーン・アレンジをアラン・トゥーサンが施したことは有名ですが、彼らにトゥーサンを紹介したのもボビー・チャールズだという噂。

しかしこのアルバム発表直後にボビーはグロスマンと喧嘩別れしてしまったそうです。これも運命のいたずらか? そしてまたボビーはマイ・ペースな人生を歩むのでした。 つづく。