帰りの電車。
一車両しかない電車は、ほとんど席が埋まっていた。
ふとみると向かい合わせの席が1つが空いていた。
3人のかわいいJK達に躊躇することなくおばちゃんは声をかけた。
「空いてます?」
私の正面は、三戸なつめちゃんみたいな丸顔の女の子。
・・・かわいいなぁ・・・おばちゃんは若い子をみると心の中でそう思って見てる。
暖房のきいた車内でついウトウト・・・。
ふと気がつくと、なつめちゃんの右目の下に光るものが・・・。
・・・涙?
はらりとこぼれたのは涙だった。
なつめちゃんは、桜の模様の赤いブックカバーがかかった文庫本を読んでいた。
見てはいけないと思いながら鏡の様に映るガラス窓に目をやった。
こぼれ落ちる涙をなつめちゃんは指でふく。
・・・なんの小説読んでるんだろ・・・。
・・・どんなことでなつめちゃんは心を動かされたんだろ・・・。
遥か彼方のJKだったころの私は、本を読んで涙していたのだろうか・・・。
忘れちまった遠い過去。
きっと根っからのひねくれ者の私だから、裏の裏を読んでたりしていたのかもしれない。
そんなことも記憶のない遠い昔。
忘れてしまった過去だから いっそキレイな記憶に書き換えてしまおうか。