哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

固有の領土とは?

2010-10-01 22:08:08 | 時事
 領土問題で、よく「固有の領土」という主張があるが、これは何を意味するのだろうか、不思議に思うことがある。よく出てくる話に、古い資料で日本人がその地域や島に住んでいた、とかいう主張がある(それに対して今度は他国がもっと古い資料を持ち出し、自国民がもっと古く支配していたなどと反論してきたりする)が、そもそも国家の輪郭も古くなればなるほどあいまいになるし、古い時期の国家を民族に置きかえても、そもそも民族という括りならば世界的に移動することも多く、民族にとっての「固有の領土」という言い方が果たして正当なのだろうか。

 日本は島国だから民族的に移動は少ないようにみえるが、そもそも日本も決して単一民族ではないし、古い地図では北海道は載っていない。もしかして、北海道はアイヌ民族固有の領土だから、日本固有の領土なのだろうか。


 領土の話はひとえに、現在の実効支配による国境の確定の意味しかありえないのではないだろうか。過去の経緯は「固有」かどうかではなく、単なる現実の実効支配の大義名分や手続的正当性の主張にすぎないのだろう。例えば、北方領土をいくら固有の領土と言ってみても、ソ連(ロシア)が戦争で事実上獲得している以上、「固有」の意味は空虚である。


 まあ、池田晶子さんに言わせれば、国家自体が観念的なものだから、国境だって観念でしかないのだろうが。