おしょうさん と つばめ (下)
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今日の朝日カルチャーセンター(新宿)での『「気にしない」心のトレーニング』の講座の依頼を受けたのは今年の一月。『気にしない練習』発売から一か月たっていない、2刷(6月16日現在、おかげさまで15刷)が決まった後だったから、担当者のIさんは先見の明があったのだろう。120分の長丁場。楽しくやろうと思う。--ということで、昨日の続きです。
おしょうさん と つばめ(下)
おしょうさんの手の中で、つばめはもう息がたえていたのであります。つばめのかわいい体温が次第に失われていくにつれて、おしょうさんの心には冷たい雲がひろがってきました。しっかりむすんだつばめの口にくわえられた 一本のわらしべを見つめるおしょうさんの目に、ぼたんの赤い色がうつり、やがて、玉になって、つばめの羽毛をぬらしました。
向こう側へ抜けられるものと思って、いきおいよく飛んできたつばめは、思いがけぬガラスに頭を強く打って落ちたのでありました。
ぼたんの花の下に、つばめのなきがらをうずめて、おしょうさんは、そっと手を合わせて
「ガラスには、紙をはろう」
と心にきめたのでありました。
五月の風に、ぼたんの大き葉が、しきりに光を散らすと、咲き過ぎた花がハラハラとくずれました。
おしょうさんは、ゆれるぼたんの葉からとびたつ、光の鳥のまぼろしを見ながら、自分の心を磨くようだと思った事が、つばめという一個の生命を失わせる結果になった事について、叉考えるのでありました。
昭和28年4月24日 少年文学研究会発行(江戸川区立小岩小学校内)より転載
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