もも一代記

信州は須坂市の先輩から桃が送られてきた。
「お前さんは、変わったものが好きだねぇ」と言いつつ、この時期、固い桃を送ってくださる。

東京ではまず食べられない、皮ごとかじると「バキッ」と音がして食べられるくらいの桃が、私は好きなのだ。
送ってくださった桃でも、私にしてみれば、柔らかい。

お礼状のついでに新刊本を送ったら、電話があった。
「図々しい話ですが、もっと固いのをお願いできませんか」と言った。

「何だァ?あれでも駄目なら、少し味がでてきたくらいの桃になるぞ」
「だから、それが食べたいんですよ」
「ほんと、変わってるな」
「変わっているとか、いないとかの話じゃなくて、とにかく頼みます」
---これから出荷時期を迎えるのがあるから送ってくれるそうだ。わはははは。
ありがてぇ。

先輩との話の中で、バキッとかじると、種が綺麗に残るやつがいいと言ったら、
「ああ、種離れがいいやつね」と仰る。
「タネバナレ」とは初めて聞く言葉だった。辞書をひいても出てこない。
でも、桃の缶詰が世に出回るようにったのは、タネバナレがいい品種ができたおかげなのだそうで、
それまでは、桃の缶詰は高級品だったそうだ。

ちなみに「ばなれ」で終わる日本語は、大辞林によると、
浮世離れ、親離れ、金離れ、現実離れ、子離れ、素人離れ、巣離れ、世間離れ、俗離れ、乳離れなどたくさんあるが、調べた中でおもしろいと思ったのは「水離れ」。
[①わかしはじめた水があたためられて、ぬるま湯の状態になること。②水中から出すこと]とある。

毎日ポット二本にお湯を沸かすお寺なれば、明日の朝は家内に言ってみようと思う。
「どうでぇ、ヤカンの水は、そろそろ水離れしたかい?」
きっと不思議な顔をすることだろう。ぐはははは。
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