スジャータとジョンレノンとパールハーバー

 29歳で女房子供と王子という立場を捨てて、生老病死が代表する人間の「苦」からの開放を求めたお釈迦さまは、山にこもって難行苦行すること6年間。

 しかし、いくら体を痛めつける苦行をしたからとて、自分の内面の開放や、自分と宇宙との関わりから得られる広大無辺な心境の獲得はできないと山を下りる。

 近くにあった川で6年間の苦行の汗と垢を落して岸辺に立った姿は、悟りは開いていなくとも、気高く、そして尊かった。その姿に近所の村の女の子スジャータがヤギの乳でつくったお粥をお釈迦さまに供養(もてなし)をする。

 スジャータのくれた乳粥で体力を回復したお釈迦さまは、木の下の石の上に草を敷くと「これで悟りが開けなければこの座から立つことはすまい」と誓って、端然と座(ざ)す。

 座すこと7日間。ついに八日目の朝、明けの明星のきらめく時、豁然と悟りを開いた。---12月8日、未明のことだった。

「世の中のことはすべて、縁と縁が作用して結果が生じる。その結果は次の縁となり刻一刻と変化して止まない。大宇宙の中には、この諸行無常の大原則から逃れられるものとてなく、その変化に対応し、あるいは無視して、心安らかでいることは、神仏に頼らずとも、誰にでもできることなのだ」--それを釈迦は自ら示したことになる。

 お釈迦さまの苦悩の幕はここに降ろされた。そして、ここから仏教の幕が開いた。仏教では、今日12月8日を成道会(じょうどうえ)と言う。

 先ほど、読経の会の方々とお経とご詠歌を唱えて、お釈迦さまの成道を祝い、そして私たちもまた、釈迦の弟子の末裔としての思いを新たにした。

 12月8日は、ジョンレノンが凶弾に倒れた日、日本が真珠湾を攻撃した日としても有名だが、きっと誰かの誕生日でもあり、誰かの命日でもある。どんな記念日にとして位置づけ、どう自分の人生に活かしていくかは、私たちの心次第である。
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