風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ブルー・サファイア

2010-11-21 16:35:17 | 時事放談
 先週、英国王室のウィリアム王子の婚約発表がありました。父チャールズ皇太子の私生活の奔放ぶりから、次期国王に相応しいとされる王子(Wikipediaによるとイングランド国教会にはその首長たる国王が離婚経験者と結婚する事を認めない規定があるそうで、現にエドワード8世は離婚歴のあるシンプソン夫人と結婚するために退位して弟のジョージ6世(現エリザベス女王の父)に王位を譲りましたが、さてどうなることやら)の婚約発表には、景気回復が鈍い英国において久々の朗報となり、祝賀気分の盛り上がりが期待されるようです。一般人が英国王室に嫁ぐのは数世紀ぶりだということも話題だろうと察せられますが、私には、王子が贈った婚約指輪が、父が母・ダイアナ元妃に贈った形見の品だったというのが驚きで、ちょっと調べてみました。
 父のチャールズ皇太子がダイアナ元妃にプロポーズした時には、いずれ王妃となる立場には重圧感が伴うことも熟慮してもらうためと称して婚約指輪を用意していなかったそうで、承諾後に、王室御用達宝石店Garrardに提示させたものの中から、彼女自身が選んだのがこの18カラットのブルー・サファイアだったそうです。当時、ロイヤル・ファミリーの婚約指輪だというのに特注品ではなく、2万8千ポンド出せば誰でも購入できるカタログ品だったことが判明して、ロイヤル・ファミリーだけでなく世間でもちょっとした物議(a bit of a stir)を醸したそうですが、ダイアナ元妃の好みだということが、そうした懸念を抑え、ブルー・サファイアは結婚を控えたカップルたちの誓いのシンボルに祭り上げられて行ったのだそうです。
 ブルー自体はロイヤル・ファミリーの色でもあり、戴冠式に使われる王室第一級公式王冠「インペリアル・ステート・クラウン」で2石のサファイアが使用されているのをはじめとして、王室で長く愛されてきました。またサファイアは、コランダムのうち宝石としての価値があり、かつ色が赤でないもの(赤いものはルビー)と言うように、不純物として含まれるクロムの量に応じて、ブルーだけでなくピンクから黄色や茶色や灰色まで、豊富なバリエーションがあり、持ち主の心次第で色が変わってしまうなどとも言われ、皇帝ナポレオンは、妻の心変わりを心配して浮気封じのお守りとしてプレゼントしたと言われますし、他の王や君主も、危害やねたみから守るために愛用したと言われます。ダイアナ王妃がそんな故事を知っていたのかどうか定かではありませんが、その後のダイアナ王妃の運命と重なって、なんだか痛ましくもあり象徴的でもあります。
 報道によると王子は「母がこの喜びを見逃さないように」(He told reporters he had made the decision to use his mother's ring to make sure she "didn't miss out on the excitement" of the wedding.)と亡き母に思いを馳せ、婚儀の全てを母にも身近に感じてもらうための自分なりのやり方だ(This was my way of keeping her close to it all.)と語ったそうですが、10歳で別居し15歳で母親を失った王子のいじらしい思いが伝わってきます。イギリスのSky Newsの記事コメントを読んでいると、王子の髪が薄くなったなあとか、お嫁さんは別嬪だねえ、などと茶化した書き込みに混ざって、どうして新品を贈らずにダイアナ元妃の形見の品を贈ったのかと疑問視し、ダイアナ元妃の不幸を重ね合わせて心配する声がある一方、一種の偽装とも見なされる父の婚約指輪は、今度こそ新婦への愛と母への愛に包まれて、幸せを祈るといったハナムケの言葉もあって、賛否両論に割れています。私としては、当初は疑問に思ったものの、関連記事を読むにつれ、多少髪が薄くなっても爽やかな王子が、敢えて皇太子妃と王子妃を対置するのではなく、(義)母から子を強調することによって、否応なしに新妻がダイアナ元妃と比較されるであろうことを避けようとする心遣いと、敢えて形見の品を贈って母の運命を避けることなく直視し、新しい生活に立ち向かう覚悟を示しているようで、微笑ましく思うようになりました。
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