風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

サッカーW杯での中・韓

2018-07-09 22:06:52 | 日々の生活
 「日本最大の中国情報サイト」と銘打つRecord Chinaでは、時々、中・韓の反応を見るのが面白い。W杯の関連記事を(ちょっと長くなるが)拾ってみた。
 先ずはグループリーグ最終戦となる日本対ポーランド戦で、日本が試合終盤にボール回しで時間稼ぎをしたことには、意外にも非難一方とならず、賛否両論が巻き起ったようだ。中国・国営新華社通信は「フェアプレーポイントで同組のセネガルを上回り決勝トーナメント進出を決めたのに、フェアプレーとは程遠く皮肉だ」「率直に言って恥ずかしい10分間になった」と酷評したが、人民日報は「アジアで唯一、決勝トーナメント進出」と(好意的に?あるいは淡々と?)伝えたらしい。中国のネット・ユーザーの間では意見が割れ、「試合の80分までは日本を応援していたが、残り10分はセネガルを応援した」「最後の10分で、それまでの260分の日本のイメージが崩壊した」「ひどい試合だ!サッカーに対する侮辱!ファンに対する侮辱!」という声があがった一方、「日本には時間稼ぎをする権利があるが、観客もブーイングする権利がある」「これはせいぜい観客に魅せるサッカーに背いたということで、スポーツマンシップとは全く関係ない」とする冷静な意見や、「仕方ない。これも勝ち上がるための戦術」「もし中国が日本の立場ならみんな喜ぶと思う」「日本にもリスクはあった。それぞれに利害がある」「ポーランドもボールを奪いに行かなかったし、下手に相手を刺激して2点目を奪われたらどうする? もし中国が同じ状況なら批判するか?」と、日本の作戦に理解を示す声もあがったらしい。他方、韓国のメディアはサッカーにおける優越意識が強く、感情的な反発が強かったようで、中央日報は「これがサムライ精神か」「日本、くすんだフェアプレーで決勝トーナメント進出」「ベスト16落ちでも拍手を受けた韓国、ベスト16行きでもヤジ飛ばされた日本」などの見出しを掲げたほか、ニューシスは「散歩した日本は16強に進出、死力を尽くした韓国は脱落」、デイリースポーツ韓国は「恥ずかしいサムライサッカー、名ばかりの16強進出」、SPOTVNEWSは「批判浴びる日本、他力本願で16強」など、軒並み手厳しい。ところが韓国のネット・ユーザーからは賛否両論の声が寄せられたのは意外だ。「アジアの恥」「醜いを越えて汚い」「決勝トーナメント進出が全く羨ましくない」「酷い内容だけど、同じ状況なら韓国も同じことをしていただろう」「日本を応援しよう。醜く嫉妬するのではなく…」「決勝トーナメントに進出したのは日本の実力」「結局は生き残った者が強者。日本の批判より韓国の心配をした方がいい」といった塩梅で、政治ではなく、スポーツ故の公正さ、と言えようか。
 なお、韓国は決勝トーナメント進出を逃したものの、FIFAランク1位の強豪ドイツに2-0で勝利する大金星を挙げた。しかし帰国した韓国代表選手に対し、空港で生卵が投げつけられた騒動が、中国でも注目を集めたらしい。「韓国はいつもこうだ」「これは確かにやりすぎ」「(ドイツに勝ったのは)十分スゴいと思うけど、それでも卵投げられるの? じゃあ、中国代表は一体どんなモノを投げられるだろう?」「選手がかわいそう。疲れて帰ってきて、卵を投げられるなんて」「韓国人は本当に満足するということを知らない」・・・中国と韓国の微妙な関係を思わせて微笑ましい。
 続いて、決勝トーナメントで日本代表が善戦したことは、グループリーグ勝ち残りの後味の悪さがあったが故に、驚きとともに好意的に受け止められたようだ。中国・中央テレビのスポーツチャンネル(CCTV5)は「おめでとうベルギー、そして日本にも拍手を!」「日本は負けはしたが栄誉を手にした。尊敬、そして反省させられる」と称賛し、スポーツメディア・新浪体育は微博で「試合後、歴史をつくることができなかった日本の選手たちは、みんな肩を落としてピッチに横たわっていた。この試合で、素晴らしいサッカーを見せた彼らは、ベルギー選手のリスペクトも勝ち取った」とし、デ・ブライネ、ルカク、コンパニ、アザールといったスター選手が日本選手の元に慰めに来たことを動画付きで紹介し、「日本は負けはしたが、栄誉を勝ち取った」と伝えたらしい。中国のネット・ユーザーからも、「試合を見る前は日本に敗退してほしかったけど、試合を見たら勝ち上がってほしいと思った」「これほどまでに日本人をリスペクトし、日本人のために心を痛めたのは初めて」「最後には力尽きたけど、今日の日本の戦いぶりは素晴らしかった!」「これぞスポーツマンシップ。偉大な試合だ」「試合には負けたが尊敬を勝ち取った。この試合に敗者はいないよ」「日本サッカーの発展の速さに感嘆する」「日本代表は確かに尊敬に値する。コンビネーションと技術は欧州のトップクラスに匹敵する。最終的にフィジカルで負けた。アジアの光と呼ぶにふさわしい」「日本にはアジアを代表して、より遠くまで行ってほしいと心から思う」「本当に震撼させられる。2点をリードして、さらにチャンスをうかがった。その上、プレーは非常にフェアだった」「日本には本当に尊敬させられるよ。ファウルは少ないし、コンビネーションも素晴らしいし、攻守の切り替えも早いし、フィジカルでは劣勢だけど、その他のあらゆる面を極限まで高めている」「日本はとてもとてもリスペクトに値するチーム。もし、各国がこんなプレーができたら、アジアはもっと世界から注目されるだろう」「日本はこの試合に負けたかもしれないが、この先の黄金の10年を勝ち取ったんだ。もっと多くの子どもたちがサッカーをし、世界の5大リーグのクラブはもっと多くの日本選手を獲得するだろう。日本サッカーは、他のアジアの国とさらに大きな差をつける」「この気持をどう表現すればいいか!熱い涙がこみ上げてくる!日本が今大会で見せてくれたパフォーマンスに感謝!諦めなかったベルギーにも感謝!今晩、これほどまでに素晴らしく感動的な試合を見せてくれた両チームに感謝!泣くな日本代表!君たちは優秀だ」「日本が大逆転された後、日本のネットユーザーは決して選手を責めず、(コメント欄は)賛美する言葉であふれた。そして、審判への賛辞も忘れなかった。期待されていない中でのグループリーグ(GL)突破、決勝トーナメントでの初ゴール、連続20試合退場なしのW杯記録、もう十分うらやましい(泣)」など、面映ゆいばかりだが、褒められたことよりも、言論統制が厳しい管理社会などとステレオタイプに捉えがちな中国の多様でしっかりした意見に正直なところ驚かされるのは、やはりスポーツの素晴らしさ故であろうか。
 また微博で日本情報を伝えるアカウントは、日本のネット・ユーザーのコメントを紹介したという。「いい夢見させて頂きました」「実力差を考えたらやり切ったと思う。素晴らしかった」「胸を張って帰ってきて欲しい」「素晴らしい試合を有難う」「これほど悔し涙が流れた試合があっただろうか。そして、公正なジャッジをしてくれたセネガル審判団に感謝」「ベスト16にも行けると思わなかったし、よく頑張ったと思う。お疲れさま」などといった声が並んだのに対し、中国のネット・ユーザーからは、「心が温まる(泣)」「『いい夢見させていただきました』って泣ける」「日本のコメント欄がうらやましい」「選手に生卵投げた韓国のサポーターに比べてずっと素晴らしい」「こういうサポーターがいたら、選手は頑張りがいがあるよね」といったコメントが寄せられたという。
 さらに、中国の大手サッカーメディアの●球帝(●はりっしんべんに董)が、ロシアW杯の大会運営に関わっているFIFAゼネラルコーディネーターのPriscilla Janssensさんがツイッターで、日本代表チームが立ち去った後のきれいなロッカールームの画像を投稿し、「これが、ベルギーに敗れた後の日本代表チームの更衣室だ。彼らはスタジアムでファンに感謝の挨拶をし、更衣室やベンチの全てをきれいにし、メディア対応をして、さらにロシア語で『スパシーバ(ありがとう)』と書かれたメモを残した。すべてのチームの手本となるものだ。一緒に仕事ができてとても光栄に思う」とコメントしたのを、報じた。この日本代表の試合後の対応について、中国のネット・ユーザーからは「日本は試合には敗れたが、世界中の尊敬を勝ち得た」「日本人のこうした細かな素養は世代から世代へと受け継がれてきたもの。本当に感服する」「日本が強大であるのには理由がある」「恐ろしさすら覚える」などの声があがったという。同じ件で、環球時報が掲載した評論記事もなかなか興味深い。「近年、日中両国市民の接触が多くなったことで、中国社会は広く日本公民のマナーや道徳意識を認識するようになり、多くの人がポジティブな見方をするようになるとともに、自らを反省するようにもなった。しかし一方で、単に称賛するだけでなく『日中間の対立により常に日本を批判する人に対するそしり』や『日本人による小さな善行で、その歴史問題をあいまいにすることはできない』などといった議論も巻き起こしている」とし、その上で、「中国社会内部ではここ数年、ある程度の価値観の分裂が生じており、外部世界で起こる本来はシンプルであるはずのさまざまな現象を複雑化して論争を巻き起こすケースがますます多くなっている」と指摘、「日本代表や日本サポーターによる試合後の素晴らしい行動は、何の論争を呼ぶものでもない。しかし中国のネット上ではすぐに論争が白熱化する。これは中国が発展する上での一つの段階なのかもしれない。われわれが前進することにより、こういった論争は少なくなるだろう。他人が良いことをした時には、そのことについて称賛すべきだ。たとえ何か思うところがあったとしても、とかく話をこじらせたり、敏感なものにすべきではないのである」と論じたという。
 最後に、安倍首相のサッカー日本代表への感謝ツイートに対する日本人のツッコミが中国で話題になったらしい。安倍首相が「最後まで全力を尽くし、たくさんの感動を与えてくれたサッカー日本代表の皆さんに、心から感謝します。毎日がわくわくで、夢のような2週間をありがとう!」とツイートしたのに対し、「絶対見てなかっただろ」とツッコミがあったことについて、微博では、「爆笑した」「これは神ツッコミ」「首相にこんなコメントして大丈夫?」「コメント主は大胆だな」などの反応が寄せられたという。同じく安倍首相が、日本代表がコロンビア代表に2-1で勝利した際に、「やったー!チームプレーの大勝利。感動をありがとう!」とツイートしたのに対し、中国のネットユーザーからは「安倍首相はかわいい人だな」「こういうツイートは好感が持てる」「一国の指導者はこうあるべき」「わが国の指導者は国内を『散歩』するだけ」などの声も挙がったらしい。
 いやはや、国家レベルのいがみ合いや物々しさ、メディアの色眼鏡を外すと、概してまあ褒められたからではあるにしても、とりわけ中国の庶民感覚の実に多様でしっかりとしていて生き生きとしているのが、今さらながらとても好ましく思えたのだった。
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