風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

韓国の教科書問題

2014-01-21 22:03:13 | 日々の生活
 韓国の国内でも歴史認識問題があり、左と右の対立、否、むしろ保守派が左派に押されて(という構図はかつての日本と同じですね)、保守的な教科書採用が見送られる事態が続出しているという報道を見つけ、興味深く思いました。十日程前の産経Webにあったもので、保守派執筆陣による高校歴史教科書を、当初は20校以上が採択を予定していたところ、野党陣営や左翼系学者らがこぞって「歴史歪曲」「親日・親独裁の欠陥右翼教科書」と非難したものだから、1校を除き使用教科書を左派系に変更する事態となっているのだそうです。

(引用) 保守派の教科書は昨年検定に合格した。韓国の近現代に関する記述で、日本の「抑圧と搾取」への抵抗の歴史というこれまでの“暗黒史観”の構図を否定。日本統治下でも韓国人は自己啓発に努め、社会は発展したとする「植民地近代化論」の立場から、歴史の多面性を取り入れた編集方針を特徴としていた。ただ、保守派教科書の歴史認識に左派勢力が反発。独裁者とされていた初代の李承晩元大統領について、共産主義の侵略から自由主義体制を守った民族的指導者と記述したり、朴正煕元大統領による近代化や経済発展などのプラス面を強調したことが問題視された。(引用おわり)

 この最後のくだりを読むと、朴槿恵大統領の苦労がしのばれます。親の七光りと言うよりも、日本の陸軍士官学校を優秀な成績で卒業し、創氏改名によって高木正雄を名乗り、終戦まで関東軍の中尉として活躍し、大統領となってからは日韓基本条約の締結を行い、「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長へと導いた、親日家のお父ちゃん似とちょっとでも評されるのを徹底的に回避せざるを得ないわけです。ある日本の大学の韓国政治専門家が話していたことですが、確かに彼女の本心は親日との噂もあるにはあるが、彼女の自伝をじっくり読んだところ一切それらしいことには触れていないし、彼女は一生本心を明かさないであろうと。なにしろ、韓国では北朝鮮寄りで保守政権を激しく批判する左派勢力が教育現場に浸透しており、韓国紙(朝鮮日報)によると、全国1714の高校で使用される韓国史教科書のうち9割が左派系出版社版なのだそうです。
 そのお父ちゃんは、「福田赳夫が韓国を訪問した際、酒席において日韓の閣僚たちが日本語で会話をしている最中、韓国側のある高官が過去の日本統治時代を批判する旨の発言を始めたところ、彼を宥めたうえでこう語っている」(Wikipedia)そうです。

(引用)日本の朝鮮統治はそう悪かったと思わない。自分は非常に貧しい農村の子供で学校にも行けなかったのに、日本人が来て義務教育を受けさせない親は罰すると命令したので、親は仕方なしに大事な労働力だった自分を学校に行かせてくれた。すると成績がよかったので、日本人の先生が師範学校に行けと勧めてくれた。さらに軍官学校を経て東京の陸軍士官学校に進学し、首席で卒業することができた。卒業式では日本人を含めた卒業生を代表して答辞を読んだ。日本の教育は割りと公平だったと思うし、日本のやった政治も私は感情的に非難するつもりもない、むしろ私は評価している。— 金完燮 日韓「禁断の歴史」p.212 小学館 2003年10月(引用おわり)

 しかし、ああいうお国柄ですから、自国民の発言であっても、信頼されないでしょう。それでは、韓国人でも日本人でもない、第三国の人は、日本の植民地統治をどう見るか。スタンフォード大学フーバー研究所のアメリカ人研究者マーク・ピーティー氏による「植民地―帝国50年の興亡(20世紀の日本)」(1996年 読売新聞社)が、一年ほど前、慈学社出版から復刻出版されましたし、昨年夏には、日系人が含まれるもののアメリカ人研究者ジョージ・アキタ氏とブランドン・パーマー氏による「『日本の朝鮮統治』を検証する 1910-1945」(草思社)という実証研究も出ていますが、手元にありません。古い孫引きになりますが、フランス人地理学者ジャーク・プズー=マサビュオー氏は「新朝鮮事情」(1985年 白水社 文庫クセジュ)で次のように述べています。

(引用)現代の朝鮮人の目に、日本植民地時代の悪い面が、伝統と独立に対する純然たる侵害として非常に大きく映っているのであるが、他面においては、南北朝鮮の国家経済を著しく飛躍させるための基盤はこの時代に築かれたのであり、その成果もまた大きかったといえる。日本は、約40年程の間にきびしいやり方で、自然の脅威にさらされ、大きな工業設備をもたず、貧しかったこの農業国家を科学的な農業と様々な工業、そして活発な貿易を誇る経済の調和のとれた国へと変身させたのである。朝鮮がその独立の際、この経済能力のすべてを自国民の利益のために利用することによって、極東における最も恵まれた国の一つに、そして日本に次いで豊かな国になるであろうことは、すでに明らかだったのではなかろうか。(引用おわり)

 上記については、地理学者らしい視点とともに、地理学者ゆえの限界を指摘し、経済発展の前提条件として、識字能力や価値観・生き甲斐といった精神的要素、広い意味での教育問題に取り組んでいたことに触れられていないことを批判する人もいます。実際、日本が植民地統治する以前の朝鮮は、貴族(両班)の腐敗と民衆への搾取が横行し、恐ろしく不衛生で社会インフラも未整備、流通や貨幣経済が崩壊している悲惨な状況にあったのは、イザベラ・バードというイギリス貴婦人が1894年から1897年にかけて、4度にわたり朝鮮を旅したときの紀行である「朝鮮紀行~英国婦人の見た李朝末期」(講談社学術文庫)に詳しいそうです。
 などと、つらつら書いてきて、そう言えば5年前にも似たようなテーマで別のブログに書いていたことを思い出しました。今とは違って、中国や韓国に対する認識はまだ浅く、客観的に突き放して見ているのが、なんとも懐かしい。

(参考)韓国における歴史認識 http://blog.goo.ne.jp/sydneywind/d/20090326
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