風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

社会的責任・続

2013-11-05 23:24:34 | ビジネスパーソンとして
 前回のブログでは、阪急阪神ホテルズの食材「誤表示」問題に関連して、初動のお粗末さについて書きました。現代の企業経営においては、コンプライアンスに対する感度を高く保持しなければ、ブランド・イメージに甚大な影響を及ぼしかねません。同社の場合も、折角、自主的に調査した結果を公表するという見上げた行為であったにも係らず、社長の態度が非を認める率直さに欠け、往生際が悪いと見えたために、却って世間の反感を買ってしまったものと思われます。
 さて、食材「偽装」表示の問題は、予想外の拡がりを見せています。産経新聞のネット・ニュースは、当初、「阪急阪神食材誤表示」と小見出しがついていたものが、23日には「阪急阪神食材偽装」に変わり、26日からはとうとう特定企業名を冠さずに単に「食材偽装表示」とタイトルされるようになりました。帝国ホテルでは、非加熱加工のストレートジュースをフレッシュジュースとして提供していたことが明らかにされましたし、近鉄系ホテルでも、一部メニューに牛脂注入肉を「ステーキ」と表記したり、解凍魚を使っていたのに「鮮魚」と表記したりしていたことが明らかにされました。今日のニュースでは、とうとう老舗百貨店の高島屋でも、レストランなどの店内テナントで、メニュー表示や商品名と異なる食材を使っているケースがあったことが明らかにされました。
 貧すれば鈍する、ということを思わざるを得ません。
 たとえばホテルは、今や老舗旅館や高級外資からビジネス・ホテルまで入り乱れ、長引くデフレ不況の中で、客足が鈍って価格引き下げの圧力に晒されていることでしょうし、レストランも、高級店からファーストフードまで様々な業態の熾烈な競争環境にあって、恐らくデフレ日本でも最も価格競争が激しく、食材はグローバル調達が当たり前で、製造現場では1円否1銭のコスト・カットにも汲々としていることでしょう。そのあたりを背景にしているであろうことは容易に想像されるところです。勿論、私だって性善説を信じたいですが、全てが善だと信じるほどナイーブではありませんし、人間はそもそもそれほど強くありません。一人きりで判断するときには善であっても、集団となれば別の心理が働くことは往々にして目にするところです。それにしても、どいつもこいつも・・・との思いを禁じ得ません。中には10年近く前から行われていたものもあるようで、それによって、安全な食を正当に届ける努力を続ける正直者が淘汰されて馬鹿を見る、所謂「悪貨が良貨を駆逐する」ようなことがあったとすれば、浮かばれませんし、消費者としても、騙されることはもとより、こうした不正がまかり通る社会は許せません。企業は生き物です。環境も変われば、会社を担うマネジメントも従業員も変わる。だからこそ創業者の思いや、コンプライアンス意識は、繰り返し思い出させないことには、風化してしまいがちです。中国のように健康に害を及ぼすものではないとは言え、消費者のブランド信仰に付け込むという意味では日本らしい、悪質なものでした。
 以前、このブログで、日本人の「正直さ」「清潔さ」を褒めたばかりでした。日本人の商売の基本は、顧客との関係性を軸に「信用」に重きを置くものだったはずです。裏切られた私たち消費者の思いは、やり場のないものです。横並びという決して誇れる性向ではないにせよ、それなりに伝統も実績もある企業が連座する姿は、辛うじて自浄作用が働いている証拠でもあります。これを奇禍として原点回帰し、再生を期して欲しいと思います。とても他人事には思えませんから・・・
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