風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

コロナ禍⑬聖徳太子以来初

2020-04-10 00:56:23 | 時事放談
 コロナ禍にこだわり過ぎると気が滅入って精神衛生上よろしくないので、大概にしたいと思うが(苦笑)、ようやくと言うべきか、一昨日、「緊急事態宣言」が発出され、強制力がないなりに法的裏付けが出来たという意味では、言わば一種のエポックでもあって、備忘録的に書いておこうと思う。
 タイトルの意味するところは、大阪の四天王寺が「宣言」を受けて明日からの閉鎖を決めたのは前代未聞、すなわち聖徳太子が創建した593年以来初めてのことで、実に1427年間なかったというので、Twitterトレンドにランク・インしたらしい。まあ、病気の原因が分からない時代は対策のとりようがなかったので、「宣言」が出ること自体が1427年もの長い年月の中では比較的最近の事象と言うべきだろう。
 この「宣言」は随分な難産で、痺れを切らした地方の首長や東京都医師会から突き上げもどきがあり、私権の制限には慎重なはずの野党や左派メディアからも遅さを批判され急かされるほどの異常(?)事態となったが、特措法という法的根拠に基づき不要不急の外出の自粛要請や、学校や映画館などの使用停止や制限の要請・指示などが行えるだけに、ただ「宣言」すればよいというわけではなく、補償措置として、ちゃんとした経済対策を練り上げる時間が必要だったと首相周辺が漏らしたのも、よく分かる。108兆円という、予想を上回る事業規模の緊急経済対策(その実効性はいざ知らず)を発表してからの「宣言」となった。毎日新聞が8日に実施した緊急世論調査によると、「宣言」発令を「評価する」との回答が72%(「評価しない」は20%)、発令時期は「遅すぎる」との回答が70%(「妥当だ」は22%)と、意図したわけではないだろうが機は十分に熟していたことが読み取れる。
 海外の主要メディアからは、厳しい見方が出た。欧米諸国の非常事態宣言などと比べて「大胆な措置を取るのが遅い」「強制力も罰則もない」と言うが、そのユルイはずの日本がこれまでぎりぎり「持ちこたえて来た」ことへの当惑、と言うより、やっかみとでも言うべきものが多分に含まれるように思われる。CNNは、集中治療室(ICU)のベッド数や検査数の少なさのほか、人工呼吸器の不足で医療崩壊への懸念が広がっていると報じたのは、まさにそのための「宣言」だったのだが、厚生労働省が本日正午に発表したデータによると、入院治療を要する者等3998人の内、人工呼吸器又は集中治療室に入院している者109人で意外に少ない(ほかに症状の程度確認中356人という位置づけがいまひとつ不明だが)。ほかの内訳は軽~中等症2227人、入院待機中43人、症状有無確認中1263人となっている。
 「持ちこたえて来た」証拠として、感染率や致死率では、感染数が国の方針によって異なるので適切とは言えず、死亡率(全人口に占める死亡者数)で比較するのがよいのだろう。あちらこちらで見かけるデータではあるが、厚生労働省が本日正午に発表したデータを拾って自ら計算してみたところ、人口百万人当たりの死亡者数は以下の通りとなる。

   スペイン    314人
   イタリア    298人
   ベルギー    195人
   フランス    167人
   オランダ    132人
   イギリス    107人
   スイス      82人
   スウェーデン   69人
   アメリカ     45人
   ポルトガル    37人
   デンマーク    36人
   オーストリア   31人
   ドイツ      29人
   ノルウェー    13人
   カナダ      12人
   フィンランド    6.2人
   韓国        4.0人
   豪州        1.8人
   シンガポール    1.1人
   日本        0.7人
   台湾        0.2人

 日本は桁が違うのである。欧米の人や日本の左派メディアがこれを見れば、日本は何か誤魔化しているんじゃないかと疑いたくなる気持ちはよ~く分かるが、諸外国から優等生と呼ばれる台湾と並び「持ちこたえて来た」状況にあるのは明白であろう。数字に信用が置けそうにない国を外した結果、一部で医療崩壊が起こるなど大混乱に陥っている欧米との比較が中心になってしまうのは、意図したわけではない。通常の肺炎で亡くなった方の中に新型コロナに感染した方が隠れているのではないかという議論があるのは承知しているが、国別比較を見る場合には、他国も似たような(端的に、それどころではない)状況と想像されるので捨象できるだろう。因みに、「宣言」が発出された対象地域の東京都は突出しているが、それでも倍の1.3人、大阪や神奈川は全国平均並みの0.7人である。本来、国毎の個別事情を考えて、「医療供給上限を超過した(していない)数」などを考えるのが妥当なのだろうと思うが、絶対数も一つの参考指標となるのは言うまでもない。
 それにしても日本をはじめアジアの国々がこれまでのところは「持ちこたえて来た」ように見えるのは、何か理由があるはずだ。専門家会議が指摘するように、国の医療体制(社会保障制度を含む)や国民の行動(公衆衛生・健康に対する意識と実践、さらに健康状態(持病の有無)そのもの、同調圧力や規律ある行動の傾向)が影響するのは間違いない。これらの前提として、貧富の差や貧困率との相関もありそうだ。さらに、私のような素人が期待することが2つ話題になっている。
 一つはBCGワクチンの有効性で、新型コロナ肺炎の死亡率とBCG接種政策との間には明らかな相関があり、オーストラリアなどで臨床試験が始まっているほどだ。BCGワクチンは結核菌に対する「獲得免疫」(病原菌に晒されて得られるもの)だけでなく、「自然免疫」(生まれたときから持つもの)も高める可能性が指摘されており、BCGワクチンが新型コロナウイルスを直接的に防ぐわけではなく、免疫系を高めることで抵抗力の向上と感染の軽減に繋がる可能性があると言う人もいる。
 もう一つは紫外線の有効性で、例えば日本の4月の紫外線はまだ弱く、ウイルスを死滅させるには日光を1時間以上当てなければならないが、6月には紫外線量が飛躍的に増え、実験室で使う紫外線と似た効果が期待できると言われる。偶々ではあるが死亡率の主な比較対象となった西欧諸国は、相対的に紫外線が弱いのは事実だ。そのため、日本の場合、5月末から6月頭には本格的に終息し始めるのではないかと(今は大っぴらに楽観的なことを言える状況にはないので、控えめに)主張する専門家もいる。
 ・・・なんて期待せずに、平均的な潜伏期間14日を考えれば今後二週間の結果は予断を許さないが、二週間後以降に向けて、今は我慢のときだ。海外の主要メディアの期待を裏切るためにも・・・

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