卓球の中国スーパーリーグが、今日、開幕したが、中国側から日本卓球協会に対して日本人選手の参加不可の通達が届いており、参加を予定していた平野美宇と石川佳純は参加出来ず気の毒な話だった。これまでも五輪の1年くらい前から日本人選手の受け入れを制限していたらしいが、今回のように五輪の3年も前から排除(!)するのは初めてということだ。特に昨年のリオ五輪での日本人選手の活躍が目覚ましかったのに加え、そのリオ五輪代表入りを逃した平野美宇が、昨年10月のW杯で史上最年少の16歳で優勝したのをはじめ(残念ながら連覇はならなかったが)、今年4月のアジア選手権でも最年少で中国選手を3連破してアジア制覇を果たした、その急成長ぶりが、中国の警戒感を余計に高めたのかも知れない。狭量に過ぎると思うが、国威発揚を命題とする官僚のお役所仕事なのだろう。
ルールがあってなきが如し「排除」という締め付けと結果としての息苦しさは、どんどん酷くなるばかりのような気がする。
前回ブログで触れた党大会では、習近平政権の前半5年の成果を自画自賛したが、負の側面としてのメディア統制や人権派弁護士に対する言論統制も凄まじかったことは、もとより触れられるよしもない。日本人の中国専門家のある論考を読んでいて、言論統制に関連する法制化を拾い出してみると、断片的には漏れ聞いていたところ、以下の通り立て続けに制定されていたことがあらためて分かり、愕然とする。
2013年11月 党中央国家安全委員会の設立(習近平が同委主席)
2014年11月 反スパイ法
2015年07月 新・国家安全法
2015年12月 反テロ法
2016年04月 外国NGO国内活動管理法
2017年06月 サイバーセキュリティ法
内容によっては、こういうご時勢だからと、仕方ないと思われなくもないものもあるが、中国共産党にとって「テロ」はISのことではなく、だいたい自分たちに都合が悪い新疆ウィグルやチベットの少数民族の抵抗のことを指すし、外国NGO国内活動管理法という、字面から趣旨がよく分かる法律にしても、欧米的な価値観としての自由な言論・出版や、政治制度上の民主的な手続きである選挙などを外国NGOが扇動しかねないことを警戒しているのだろう。例えば、国境なき記者団が2017年度世界報道自由度ランキングで中国を180カ国中176位に位置づけたのも気に食わないことだろう。
問題は、ルールや法令などの恣意的な運用は中国のお家芸であることだ。ある地域だけ厳しく執行されることもあれば、全く運用されていなかったところに突然、振りかざされて執行されることもよくある話だ。毛沢東は公然と「法治」をないがしろにし、「人治」すなわち政治運動という伝家の宝刀を抜いて体制批判者を弾圧したものだったが、習近平が「法に基づく国家統治の全面的な推進」すなわち「法治」を掲げるのは、一見、もっともらしいが、ここで言う「法治」は「中国の特色ある社会主義法治」であって、政治と同じように司法の世界でも「党の指導」が貫徹され、法律の恣意的な解釈と運用によって体制批判者を弾圧するものだ。「法」を身にまとえば、国内の反発を抑えることもできるだろうし、欧米からの批判をかわすことも出来よう。しかし繰り返すが「法」は共産党の「法」であって、軍が国軍ではなく共産党の軍であるのと同じだ。このブログ・タイトルの「中国ファースト」は「中国共産党ファースト」であるのは言わずもがな。ネット社会にあって欧米の道徳・思想が簡単に流通し価値観の多様化が進展する時代だからこそ、逆行するかのような管理社会が、それほど長くもつとは思えない。
拓殖大学の澁谷司教授が、今月はじめの論説の中で、香港誌「争鳴動向」10月合併号の記事を次のように抜粋・紹介されている。私たちは、気に食わない国は潰れる、崩壊する・・・などと、つい期待してしまうが、どうだろうか。
(引用)
今年9月初め、中国共産党中央、中央軍事委員会、中央紀律検査委員会は秘密工作総括報告を作成した。それは、各地方の軍隊や党委員会指導メンバーが学習するために発行されている。
報道によると、全文で3万2500字以上あるという。第1部では、多くのページを割いて、中国共産党の党・政府・軍の機関や各部門組織、或いは指導的な官僚チームが崩壊の危機に瀕している現状を示唆した。
これらの危機的状況は、目下、5つの方面に現れている。
(1)共産党の政治思想、組織、チームは党の潜在的危険を暴いているが、既に危機は臨界点に達している。
(2)共産党の党・政府機関の各部門では、権限と責務、ガバナンス等が、かなりの部分で失われ、リーダーの職責が放棄され、一部は長期的麻痺状態にある。
(3)共産党の党・政府・軍の機関、部門、工作単位では、土砂崩れ的に、大規模に、地区的に、部門的に腐敗堕落が見られる。
(4)共産党の党政府機関・各部門の官僚は各界と緊張関係にあり、甚だしい場合には対立する局面もある。
(5)中国社会の貧富は両極化し、社会矛盾の激化、対立が増大し、それが直接的に政局の安定と発展に影響を及ぼし、動揺させている。
報告での統計によれば、31の省級党委員会のうち、23が不合格である。また、29の党中央部級党委員会中、18が不合格となっている。更に66の国務院省級党委員会の中では、42が不合格である。
それらトップの委員会よりも下位の党委員会は、ショッキングな不合格数となっている。これは中国共産党組織が崩壊の危機に瀕しているという証左である。
現在、中国共産党は危機に陥っている。中南海の高層部が近年来、幾度となく「亡党の危機」を言及してきた。
胡錦濤は、中国共産党第18回全国代表大会(「18大」)の開幕時、「もし我々が腐敗問題を上手に解決できなければ、それが致命的となるだろう。最悪の場合、亡党・亡国へ至る」と述べている。
香港誌「争鳴」が、昨16年11月号に発表した文章には、王岐山が中央紀律検査委員会上、中国共産党体制が既に崩壊の臨界点に達している事実を初めて公に認めた。
その報道によれば、共産党第18期5中全会前夜、中央紀律検査委員会第52回常務委員会で、王岐山は自分が同委員会主任に就任して以来、党内の元幹部が王に対し圧力をかけたり、「配慮」してくれたりした、という内容を公表したのである。
王岐山は、その会議上、党内の腐敗堕落状況、その規模と深度が既に変質し、政権崩壊の臨界点に到達していると明言した。王は、「あなたが認めるか認めないか、受け入れるか受け入れないかではなく、これは厳粛な事実である」と語っている。
また、王岐山は、「これは当然、体制と機構制度上の大問題であると同時に、党内幹部の政治生活上の大問題である」と直言している。
(引用おわり)
ルールがあってなきが如し「排除」という締め付けと結果としての息苦しさは、どんどん酷くなるばかりのような気がする。
前回ブログで触れた党大会では、習近平政権の前半5年の成果を自画自賛したが、負の側面としてのメディア統制や人権派弁護士に対する言論統制も凄まじかったことは、もとより触れられるよしもない。日本人の中国専門家のある論考を読んでいて、言論統制に関連する法制化を拾い出してみると、断片的には漏れ聞いていたところ、以下の通り立て続けに制定されていたことがあらためて分かり、愕然とする。
2013年11月 党中央国家安全委員会の設立(習近平が同委主席)
2014年11月 反スパイ法
2015年07月 新・国家安全法
2015年12月 反テロ法
2016年04月 外国NGO国内活動管理法
2017年06月 サイバーセキュリティ法
内容によっては、こういうご時勢だからと、仕方ないと思われなくもないものもあるが、中国共産党にとって「テロ」はISのことではなく、だいたい自分たちに都合が悪い新疆ウィグルやチベットの少数民族の抵抗のことを指すし、外国NGO国内活動管理法という、字面から趣旨がよく分かる法律にしても、欧米的な価値観としての自由な言論・出版や、政治制度上の民主的な手続きである選挙などを外国NGOが扇動しかねないことを警戒しているのだろう。例えば、国境なき記者団が2017年度世界報道自由度ランキングで中国を180カ国中176位に位置づけたのも気に食わないことだろう。
問題は、ルールや法令などの恣意的な運用は中国のお家芸であることだ。ある地域だけ厳しく執行されることもあれば、全く運用されていなかったところに突然、振りかざされて執行されることもよくある話だ。毛沢東は公然と「法治」をないがしろにし、「人治」すなわち政治運動という伝家の宝刀を抜いて体制批判者を弾圧したものだったが、習近平が「法に基づく国家統治の全面的な推進」すなわち「法治」を掲げるのは、一見、もっともらしいが、ここで言う「法治」は「中国の特色ある社会主義法治」であって、政治と同じように司法の世界でも「党の指導」が貫徹され、法律の恣意的な解釈と運用によって体制批判者を弾圧するものだ。「法」を身にまとえば、国内の反発を抑えることもできるだろうし、欧米からの批判をかわすことも出来よう。しかし繰り返すが「法」は共産党の「法」であって、軍が国軍ではなく共産党の軍であるのと同じだ。このブログ・タイトルの「中国ファースト」は「中国共産党ファースト」であるのは言わずもがな。ネット社会にあって欧米の道徳・思想が簡単に流通し価値観の多様化が進展する時代だからこそ、逆行するかのような管理社会が、それほど長くもつとは思えない。
拓殖大学の澁谷司教授が、今月はじめの論説の中で、香港誌「争鳴動向」10月合併号の記事を次のように抜粋・紹介されている。私たちは、気に食わない国は潰れる、崩壊する・・・などと、つい期待してしまうが、どうだろうか。
(引用)
今年9月初め、中国共産党中央、中央軍事委員会、中央紀律検査委員会は秘密工作総括報告を作成した。それは、各地方の軍隊や党委員会指導メンバーが学習するために発行されている。
報道によると、全文で3万2500字以上あるという。第1部では、多くのページを割いて、中国共産党の党・政府・軍の機関や各部門組織、或いは指導的な官僚チームが崩壊の危機に瀕している現状を示唆した。
これらの危機的状況は、目下、5つの方面に現れている。
(1)共産党の政治思想、組織、チームは党の潜在的危険を暴いているが、既に危機は臨界点に達している。
(2)共産党の党・政府機関の各部門では、権限と責務、ガバナンス等が、かなりの部分で失われ、リーダーの職責が放棄され、一部は長期的麻痺状態にある。
(3)共産党の党・政府・軍の機関、部門、工作単位では、土砂崩れ的に、大規模に、地区的に、部門的に腐敗堕落が見られる。
(4)共産党の党政府機関・各部門の官僚は各界と緊張関係にあり、甚だしい場合には対立する局面もある。
(5)中国社会の貧富は両極化し、社会矛盾の激化、対立が増大し、それが直接的に政局の安定と発展に影響を及ぼし、動揺させている。
報告での統計によれば、31の省級党委員会のうち、23が不合格である。また、29の党中央部級党委員会中、18が不合格となっている。更に66の国務院省級党委員会の中では、42が不合格である。
それらトップの委員会よりも下位の党委員会は、ショッキングな不合格数となっている。これは中国共産党組織が崩壊の危機に瀕しているという証左である。
現在、中国共産党は危機に陥っている。中南海の高層部が近年来、幾度となく「亡党の危機」を言及してきた。
胡錦濤は、中国共産党第18回全国代表大会(「18大」)の開幕時、「もし我々が腐敗問題を上手に解決できなければ、それが致命的となるだろう。最悪の場合、亡党・亡国へ至る」と述べている。
香港誌「争鳴」が、昨16年11月号に発表した文章には、王岐山が中央紀律検査委員会上、中国共産党体制が既に崩壊の臨界点に達している事実を初めて公に認めた。
その報道によれば、共産党第18期5中全会前夜、中央紀律検査委員会第52回常務委員会で、王岐山は自分が同委員会主任に就任して以来、党内の元幹部が王に対し圧力をかけたり、「配慮」してくれたりした、という内容を公表したのである。
王岐山は、その会議上、党内の腐敗堕落状況、その規模と深度が既に変質し、政権崩壊の臨界点に到達していると明言した。王は、「あなたが認めるか認めないか、受け入れるか受け入れないかではなく、これは厳粛な事実である」と語っている。
また、王岐山は、「これは当然、体制と機構制度上の大問題であると同時に、党内幹部の政治生活上の大問題である」と直言している。
(引用おわり)