風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

再びフランスでは

2017-06-12 23:11:38 | 時事放談
 昨日、フランス国民議会(下院、定数577)選挙の第一回投票が行われ、マクロン大統領の新党「共和国前進」陣営が最終的に全体の7割以上に相当する415~455議席を獲得して大勝する勢いだと伝えられている。これもまた「想定外」だと言っては失礼かと思っていたら、フランスの主要メディアも「政治的魔術」「百年に一度の政界地殻変動」と報じたというから、まったく近頃の選挙は予測不可能な状況が続くものだ。
 G7サミットで無難にデビューし、閣僚人事でも「30代を3人起用する一方で、社会党の重鎮ルドリアン外相、中道政党の党首のバイル法相など重要閣僚に手練れを配置。既成政治を『壊す』だけではない姿勢は、有権者を安心」(産経)させるなど手堅い手腕を発揮し、現在、支持率60%を誇るマクロン大統領は、なかなかシタタカに選挙戦術を練ったようだ。再び産経(電子版)から抜粋すると、「共和国前進」の公認候補は、「一般公募で1万9千人から選抜」され、「元パイロット、女性闘牛士、数学者など顔ぶれは様々」で、「平均年齢は46歳」(対する現職平均60歳)、「女性が半数を占め」、「議員経験のない市民が半数を占める」という新鮮さが、既成政党に不満を持つ有権者に受けたというが、実際、フランスでも日本と同様、「党公認は現職優先。若手は地方議員や秘書として出馬の機会を待つしかない」ところ、マクロン大統領は「若手に救いの手を差し伸べ」、他方、「大政党で出世の順番待ちをしていた若手が新党結成に飛びついた」結果、ルモンド紙によると、「政治経験が皆無なのは候補者の3割程度」だったという。天晴れ、と思う。
 G7と言えば、トランプ大統領の対応がよほど腹に据えかねたのだろう、メルケル首相は28日、「欧州が他国を完全に頼れる時代は幾分過ぎた。欧州人は運命を自身の手に委ねなければならない」と発言し、「他国=アメリカ」を意味するのは明らかだったことから、とりわけアメリカのメディアや外交専門家の間で物議を醸した。そもそもトランプ大統領が25日に、欧州連合のトゥスク大統領とユンケル欧州委員長とブリュッセルで会談した際、貿易問題に関連して「ドイツは悪い、とても悪い」と批判したことへの意趣返しの側面もあり(因みに、大人げないトランプ大統領は30日、ツイッターで「アメリカにとり非常に悪い」などと再びドイツの対米黒字などを批判し、泥仕合を演じた)、また、9月のドイツ連邦議会(下院)選挙を見据えた戦術の一環との見方もあった。こうして見ると、メルケル首相の先の発言は、フランス国民へのメッセージにもなり、マクロン大統領への強烈な援護射撃にもなったことは間違いない。
 それにしてもトランプ大統領は単にお騒がせなだけではなく、入社以来5年の駐在を含めて10年以上も米国ビジネスに携わって偉大なるアメリカと仰ぎ見て来た私にとって、僭越ながら、不見識を撒き散らす大統領を選んだアメリカ国民になり代わり、私自身が恥ずかしく思うほどだ。この混乱は、一体、いつまで続くのか(溜息)と、フランス国民もきっと他人事ながらも呆れているに違いない。
コメント
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