ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

岡崎で聞いた話_4

2011-11-18 09:42:41 | 信・どんど晴れ
男は、淡雪の話を聞いて、ワイングラスを置いた。
「うーむ。その加計呂麻島とかいう島に歸った女性は、今元気なんでありんしょうか。」
肩をすくめながら、ワイングラスのとなりの水を飲んだ。
「まあ、元気だと思いますよ。」
淡雪は笑いながら答えた。
「だといいんですけれども・・。」
数十分後、
レジの所に來た男は。
「また、此處によろうと思います。」
と言って妻とともに店を跡にした。
去っていく男を見て淡雪は怪訝そうな顔をした。
「もしかしたら、社長の周りを調べている刑事かな。」
口には出さなかった物の、そういう表情であった。
おわり
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡崎で聞いた話_3

2011-11-18 09:41:55 | 信・どんど晴れ
「それにしても、生きて歸らないときには、水杯を交わすと言うが、それからすると
関東に帰れる可能性があるのかな。」
彼女はワイングラスにつがれた日本酒を飲みました。
「どうかな。」
私と久留実は顔を見合わせて笑いました。
あのときの彼女の顏。
彼女の出身のシマで作られるお酢をそのまま口に放り込んだような顏が印象的でした。
「私は、本能的に歸ることができるならば、心がどきどきしない。でも不安でいっぱいだ。
父親の静止以前にだ。」
彼女はがたがた震えているようでした。
「佳奈ちゃん、寒いのかな。もう4月になろうとしているのに。」
暗い顔をしながら、久留実が彼女を見ました。
「問題ばかりだ。」
普通であるならば松本佳奈という女は、モーマンタイとか、大丈夫だ問題ないというセリフを
真顔で粋がって言う人なのですが、がたがた震えた彼女を見ていると、私も久留実も
何か起こりそうな氣がして成りませんでした。
「もし、帰省した先で何か起こるならば、そこで考えてもいいよ。」
私は、そういう風に答えました。
ご飯を食べ終わった跡、佳奈に、お弁当を持たせて最寄りの釜利谷驛まで高槻久留実と一緒に
送りに行きました。
ご飯を食べている時の不安な顏は多少和らいだのですが、
まだ表情が硬い。私と久留実は思いました。
「さて、あのシマの事だ。何もすることがないだろう。」
松本佳奈はそう捨て台詞を残して、羽田行きのホームに消えていきました。
私と久留実は苦笑して、自宅まで帰って行きました。
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡崎で聞いた話_2

2011-11-18 09:41:11 | 信・どんど晴れ
当時私は、ほかの大学に通う女子学生と部屋をShareしていました。
私の他は、石川県出身の経済学部に通う学生、もう一人は文学部の加計呂麻島とかいう
沖繩の近くの島出身の女性だした。
彼女たちとけんかもしたことがあります。それでも楽しかったです。
その中の、加計呂麻島出身の子がね、父親が倒れたという電話を受けて、荷物をまとめて
歸る羽目になってしまったのです。
「まじかよ。」
彼女の狼狽ぶりは、私も石川県出身の女の子にも伝わるぐらいでしてね。
当時、彼女はのぞみである關東での就職をしたいと感じてはイタノですが、
ただ行き当たりばったりで、就職を考えていました。
「私は、島なんて帰らんぞ。」
そんな言葉を
1年のころから、耳にたこができるぐらい彼女はくり返していました。
それなのに、父親が倒れたからって嫌で仕方がなかった島に歸ることになったのは
實に痛恨の極み。
「あんな島に何があるんだ。却而あそこでか。鹿兒嶋の本土でも沖繩で就職しろとでも
言うのだろうか。」
まるで赤鬼のような顏だ。
石川県出身の女性はそう考えたようです。
「赤鬼か。何とでも行ってくれ。關東でやってきたことが無駄になるような氣がしてね。」
彼女の怒りは収まらなかった。
そんなわけで、三人でお別れパーティーを開こうかと思いました。
料理に自身のある私が腕をふるい、他の二人が手伝いをする
という形でしょうか。
Wineの代わりにだしたものがこの日本酒なのです。
加計呂麻島の彼女はその日本酒を口にしてこうモラしました。
「よく、死出の旅路には水杯を交わすと言うが、この日本酒はなんだなあ。私には贅沢すぎる。
こんな美酒だなんて・・・。おそらくは関東に歸れなんだな。」
とwineglassを座卓においてしみじみとした感じでした。
「佳奈ちゃん、急度関東に帰れるんじゃないかな?!」
石川県出身の女の子が思い詰めたような顏の加計呂麻おなごをみて、笑顔を作ろうとしました。
「そんな莫迦を言うな。」
加計呂麻おなごは、深刻な顔がますます深刻な顔になりました。
「久留実、そいつに言わせておけばいいのよ。就職も全部失敗で関東で中途半端なことしか
できない人間に慰めの言葉をかけてやることはない。」
私は石川県出身の女性をにらみました。
其れを見て、加計呂麻おなごは
「淡雪の言ったとおり。中途半端な人間は関東に必要がないということで。」
と淡淡と言葉を語りました。
普通であるならば、攻撃したり毒舌をはく人間には突っかかっていく人間にしては
意外な反応でした。
と、いいつつ、彼女は皿のエスカルゴを手にとって食べ始めました。
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡崎で聞いた話_1

2011-11-18 09:40:18 | 信・どんど晴れ
此處は、岡崎。
愛知県にあるある程度大きな街であるここに、転勤で来て以来住んでいる女性が居た。
横手淡雪である。
現在は勤めていた会社を退社し、無国籍料理屋を営んでいる。
彼女の経営している店は、淡雪の腕もいいせいか、結構繁盛している。
ドアが開き、電子チャイムの音がする。
「予約の、森崎です。」
先に男性が入ってきて次に女性が入ってくる。
「じゃあ、このお任せメニューでよろしいでしょうか?」
女性がメニューをさした。
「分かりました。Wineは何にします。意外と日本酒をWineの代わりにする方も居るので。」
淡雪の指示に対して、男性が、
「そうだね。この日本酒にしようかな。」
とドリンクメニューのある日本酒を指した。
「これですね。高知県産でオーナーの私のオススメなんです。」
淡雪はにこりとした。
「高知県産なんですか。オーナーの出身地って秋田じゃないですか?!」
男性は目を白黒した。
「ええ。でもこの日本酒は結構因縁があるんですよ。」
聞き酒師とソムリエの資格を持っている淡雪はある物語を話し始めた。
「私が学生時代、神奈川縣に住んでいた時代に起こった話です・・・。」
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由に生きよ_Epilogue

2011-11-08 17:39:09 | 信・どんど晴れ
「いつも思います。貴殿が自らの手を汚して、大女将の考えていることを打ち砕いて
私を後継者にしたいという事を。朝倉が食中毒の張本人という事も
彼女を遠ざけるための考えてですか。たぶん、彼女は加賀美屋と徳之島を憎み続けるかもしれません。」
私、松本佳奈は複雑な顏をして、女将である加賀美環を見た。
「その代わり、朝倉夏美は横浜において幸福をつかんだわ。」
女将は冷たく口を開いた。
「今になって思うのですが、此處にいることは私の宿命だと。朝倉夏美が生まれ育った近くの
神奈川縣の街に何のために住んでいたのか?ぼけーと学生生活は進んでいった事を。」
私は、淡々と話していたけれども、心の中に悔しさが籠もっていた。
「あなたは、此處の方がいいかもしれない。時折現れる沖縄の女性は、アナタのことを
考えてくれる。もし、加賀美屋の力になるならば、彼女の力を借りるべきね。」
厳しい表情である女将の顏がいささか緩んだ。
「彼女は実を言うと学生時代住んでいた関東で出会いました。自分のことを気にしていまして。」
私は、甘い物と酸っぱい物を一緒にして食べたような顏をした。
「なかなか、彼女に悩まされたようね。」
女将は笑った。
「はい。」
この言葉を言ったときには、女将に同感する氣持ちでいっぱいだった。
女将は自分のことになるとやり過ぎるが、仲間や部下として認めた人には
とことんまでつきあうというのは、旅館と島に来てからびんびんに感じるからだ。
私は閉じられたところの方が力を発揮する。去ってしまった人の自由に幸多かれ。
おわり
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由に生きよ_肆

2011-11-08 17:38:43 | 信・どんど晴れ
私は結局、伸一さんと別れ、徳之島も出た。
現在は小田原の実家で家業のかまぼこ屋を
手伝っている。
私の携帯にメール着信のチャイムが鳴った。
「恵美子さん、新作ケーキが出来上がりました。夏美」
という内容だった。
夏美さんと言えば、徳之島での嫁ぎ先「加賀美屋」で女将に成りたいと言って
女将たちによって、罠にはめられて追放された朝倉夏美さんである。
彼女も横浜の実家に帰って家業を継いだ。
しかし、そこまではいい。
彼女は、脳梗塞で倒れた父親の後を継がざるを得なかった。あまり腕のよくない彼女のケーキ
は、評判がよくなく、店を閉めざるを得なかった。
あえなく、彼女の実家は店を閉めざるを得なかった。
そこで私は救済で、実家のポケットマネーで彼女の実家を、かまぼこ屋の製菓部門として
再生させることにした。彼女の腕では駄目なので、私の所の職人をある程度入れた。
製菓部門にして、ある程度再生したけれども、父親の後継者としての
朝倉夏美も育成したいと思っても居た。
「恵美子さん、私を支えてくれてアリガトォーございました。」
という内容のmailを貰ったこともある。
悲しいかもしれないけれども、朝倉夏美を支える存在は夫になるはずだった柾樹ではなくて
私と言うところに、悲しさを感じる。
私は、朝倉夏美にmailを入れる。
「夏美さん、私の店で出しているかまぼこのファンのドイツ人の大使館員が
親戚が経営している製菓学校で学ばないかと述べています。
至急RESをお願いします。」
そんな内容だ。
どんな内容がくるのだろうか。
Epilogueにつづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由に生きよ_3

2011-11-08 17:37:56 | 信・どんど晴れ
「それにしても、女将。小生をお引き立てしてくれてありがたいのですが、伸一さんの
奥様には失礼ではないのですか?」
佳奈さんのふざけつつも、甲高い声が聞こえた。
母屋に居る私も聞こえるくらいの聲だ。
彼女はいつも否否ながら旅館の仕事をやっていると執拗く言っているけれども、
私には進んでやっているように見える。
申し遅れましたが、私は加賀美恵美子という。
元々は小田原のかまぼこ會社の社長令嬢なのだが、政略結婚でこの徳之島に來た。
私は今出は専業主婦のようなことをしているけれども、逆に島の人には嫁ぎ先の仕事を
手伝わない怠け者のように思われている。
「母さんは、小田原には戻らないの。」
私の次男が質問する。
「そうね。戻れたら戻りたい。」
少しごまかすように、じなんに答えた。
「あ、そうだ。あの佳奈は関東に言っていたけれども、小田原には行った事はあるかな?」
長男が問いかける。
「私はおばあちゃんごしには聴いたことがない。」
私は、こうべを横に振った。
「ふーん。佳奈はシマが嫌だから関東に行ったみてえだけれども、本当は
関東に冷たくあしらわれた節だろ。逆に島人(しまんちゅ)に好かれている。」
長男は意地悪く言う。
「母さんは、お父さんと別なところに住めばいい。たとえば小田原とか。」
次男は、とんでもないことを口を開いた。
私はビックリしていて、長男はあんぐり口を開けていた。
少し、気不味い空気が流れていた。
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由に生きよ_2

2011-11-08 17:37:24 | 信・どんど晴れ
私はあることをふと思っていた。
関東に住んでいたのに、伊豆にも小田原にも行ったことがない自らに対して
私の關東時代のルームメイト、高槻久留実が沼津出身の友人が居て、
彼女の家に泊まりに行ったことを思い出した。
いつも飲んでいる焼酎の氷も溶け始めていた。
「小田原に恵美子さんが歸るならば私の存在がもっと強くなるのか。」
そんなことを考えながら焼酎をぐっと飲み干した。
Masterも私のことを心配そうに眺めていた。
「まあ、佳奈ちゃんは此処の島に着てから、責任感で一杯になるよね。」
笑いながら長細いグラスを磨いていた。
「ええ。そうでしか生きられないから。自由に生きて其れで幸せを一人占めにしている人間
とは体質が違うから。」
焼酎の入っているロックグラスを起きながら、私は語った。
そういえば、私の同学出身の女性宇品は私の下宿先を出入りしていた東岡先輩と
ともに、神奈川縣のfm局に就職を決めた。
私のRoommateもだ・・・。
今の家地に帰るとき、自由に生きて自分の生き方を決めた人間をやっかみ半分で
考えてしまう。
だからこそ、生き延びることを考えるのだ。
私を追放したくて溜まらないここの島の人間は誰だ?
そう。女将の姑である大女将である。追放された朝倉や長男の孫である柾樹の話
ばかりだ。
だからこそ、こいつのために生きている。
関東に居た頃、憎しみを糧にするな。其ればかり言われたけれども
もし、私が此處にいるのは、大女将への存在があるから
そいつに根性を見せるためだ。
私にとって、板長さんなどの加賀美屋の従業員、島に住んでいる人々は自分に優しい。
でも、善意を押しつけてくるので、其れが息苦しい。
ここから私を出るのを拒否し、あきらめさせるために存在しているみたいで怖い。
それ故に自由に生きるのは私は駄目なのだろうか。
本心は自由に生きることを是認している人は朝倉以外にも居るはずだ。
つづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自由に生きよ_1

2011-11-08 17:36:38 | 信・どんど晴れ
「女将、先日追放した朝倉夏美ですがね。あいつは加賀美屋の女将だけに収まる器ではない
と考えているのですよ。アイツは枠に収まらない自由な存在なんだ。」
私は、自らの上司である女将に述べた。
女将は私を相変わらずおかしなことを言うと曇った笑いを見せる。
「そこが佳奈ちゃんらしいけれども。まあそう言うことを許さない人がいるから注意しなさいよ。」
女将は、私を厳しい目で見た。
「そうですねぇ。私は掟に縛られる方がいいのかもしれないと思って居ます。今加賀美屋と
徳之島に縛られて生きるのは、自らの運命がそう動かしていると思うのです。」
私は、そう言いながらお客用のお膳を運ぶ。
「まあ、佳奈ちゃんもここに来たときは、神奈川県に帰りたい神奈川県に帰りたいばかり
言っていたけれども、たいした成長だよ。それも生き方だね。」
女将は、そんなことを言いながら、お膳の次に丸まった緋毛氈を運ぶように目をやった。
「はい。朝倉を追放したやり方はフェアではなかった・・・。でも、彼女は浜に返って
そこで自由な精神を発揮するかもしれません。そして、其れを支えるのは婚約者の
柾樹とか言う男じゃない感じがする。」
と頭の中は女将の長男である伸一さんとうまくいっていない嫁の恵美子とか言う
女性を考えていた。
「恵美子さんのことを考えていたのかい。彼女は余り島では好かれていない。
だから、彼女は実家の小田原に帰したいのだけれども、伸一が
子供の親権とかで迷っているからね・・・。所で佳奈ちゃん、
小田原と浜ってどのくらい離れているのかい。」
私の思っていることを女将に悟られた。そしてあまり関東のことに詳しくない
女将は、学生時代関東に住んでいた私に聞いてきた。
「些か距離はありますけれども、電車で一本で行ける距離です。」
と答えた。私は学生時代関東に住んでいたくせに伊豆にも小田原にも行っていない。
「まあ、それだったら、朝倉さんを恵美子さんが助けるというシナリオが出来るね。」
女将がにやりと笑った。
「だといいのですが、そこまでうまくいくかどうか。」
私はそんな虫のいい話は存在しないと思った。
つづく
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋深し

2011-11-03 17:14:28 | 信・どんど晴れ
なんだか、ほっとする味だな。」
ルームメイトの横手淡雪の作ったアップルパイをほおばりながら
松本佳奈は口を開いた。
横では同じくRoommateの高槻久留実が「保険金殺人の実態」という
昨日近所の市立図書館から借りてきた本を読んでいた。
「お隣の諏訪の三姉妹から貰った紅玉ね。」
本をぱたりと閉じて、アップルパイをFolkに指す。
「あそこも、なんだか姉妹だけでうまく暮らしているよね。長女が製薬会社に勤めていて
下の二人がまだ學生だと聞いた。」
淡雪は洗う予定の食器を流しに持って行った。
「何かの励で、才能姉妹とか言ってデビューしたらおもしろくない。」
久留実は、クスクス笑いながら保険金殺人に関する本と並行して借りてきた
コシノ三姉妹に関する本に目が行った。
「かの有名な人見たくいきますかね。」
佳奈は意地悪く笑った。
「ちょっと意地悪なんじゃないの。」
淡雪が訂正した。
「佳奈ちゃんは物事を斜に見ることが好きだからね。近頃それが強くなっている。」
久留実が言う。
「仕方がないだろう。其れが私だ。」
佳奈は訂正するように言う。
「ところで、佳奈ちゃんは目標である關東でやりたいことは見つかったのかな。」
淡雪は、佳奈をにらんだ。
佳奈は、言うことが何もなかった。其れを見て久留実は乾いた笑いをたたえていた。
おわり
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする