ブルーシャムロック

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小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

信・加賀美屋の一番長い日_8

2014-07-14 04:58:13 | 信・どんど晴れ
「許さんよ。あんな馬の骨の分からない小娘に加賀美屋を乗っ取られるのはね。」
大女将は、恵美子につぶやいた。
「そうですか。どうしますか?」
恵美子は表情を変えずに、大女将の顔を見た。
「そうだねぇ。朝倉夏美さんを若女将に据えるというのは。」
大女将の突飛な行動に、恵美子は
「それは混乱をもっと巻き起こします。もしかしたら柾樹さんかわいさに
そういうことを考えたのですか。柾樹さんは、濱で平凡ながら夏美さんと
幸せな家庭を築いて欲しいと私は思います。もし、できないならば
新一さんと離縁してでも、彼女を支えたいです。柾樹さんが駄目ならば
私が支えたいのです。」
恵美子の言葉に
「恵美子さん、今何と言った。」
と大女将は言葉を凍らせた。
「ええ。濱の夏美さんを私が支えたいと思って居ます。」
恵美子の言葉に濁りはない。決意に満ちていた。
「あんたの子供は。」
大女将は言う。
「私が引き取ります。今新一さんの心は佳奈さんのものです。
旅館のstuffも、佳奈さんを信頼しています。
冷え切ったまま、此島に居るべきではないと決意しました。」
と、大女将を母屋の方に恵美子は誘導していった。
「誰のために加賀美屋があるのかな。俺は分からないよ。
兄が大阪に行ったっきり歸らないで、俺がここの社長になっている
でも、お袋は兄の家族ばかりかわいがっている。
俺達が佳奈ちゃんをかわいがるのは、ソレの意趣返しだ。」
普段あまり話さない社長が口を開いた。
「そうかもしれない。」
女将はそう言って後片付けに追われている佳奈を見た。
「柾樹くんはどのくらい朝倉夏美さんとうまくいくのかな。」
ふと、新一と結婚した恵美子を見た。
「分かりませんよ。」
女将は、社長の顔を見た。
えんがわから見ると夕闇が迫っている。
おわり
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信・加賀美屋の一番長い日_7

2014-07-13 05:26:57 | 信・どんど晴れ
「それにしても、甥御さんだけれども、新一さんの奥さんに食われていましたな。」
参列者の一人が女将につぶやいた。
「そういうわけではないですがね。」
社長がFollowしたけれども、
あの朝倉夏美にかいがいしく世話を焼いている恵美子は皮肉にも旧来の友人か
言い方が悪ければ同性愛のカップルにも見えた。
「環(たまき、女将の本名)さん、親戚として言いますけれども
いつもかわいがっている若手のかなちゃんを、後継者にしてしまいなさいな。」
女性の参列者も言う。
ひとまずは、柾樹も朝倉夏美も濱に歸るらしい。
「まあ、どうなるかわからんよ。」
大女将が佳奈の方を見た。
「貴殿のことは女将や社長から注意しなさいと言われてきたのでついつい気になります。

と佳奈は言う。
「もしかしたら島に必要なのは、朝倉夏美さんであって、あんたじゃないかもよ。
あんたを窮地に追い込んで、もしかしたら東京か横浜で仕事を探しているかもよ。」
大女将が脅すように言う。
「ふぅん。そのまえに鹿児島の市内か那覇の病院でくたばるのはあんただよ。
私は此島にへばりついて生きるしかない。あんたが考える以上に濱も東京も
大阪も厳しいんだよ。」
と言い返す。
「このぐらいにしておけ。本当に大女将No言うとおりになるから。」
ソレを聞いていたのは新一だった。
「鹿児島の市内か那覇の病院というのは残酷ですかね。」
佳奈は苦笑した。
「俺の本心はお前を仲居頭か、若女将にしたいところだ。ちょくちょく
加賀美屋と徳之島に遊びに来る沖縄の女の子のためにも。」
と新一は言う。
「小禄さんのこと気になるんですか?」
佳奈は新一に問うてみた。
「あ、いや・・・。」
新一は言葉に詰まった。
tsuduku
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信・加賀美屋の一番長い日_6

2014-07-12 05:27:11 | 信・どんど晴れ
「恵美子の奴空港に柾樹と婚約者を迎えに行ったようだな。」
恵美子の夫である新一は、佳奈につぶやいた。
「そうですねぇ。濱かぁ。また戻りたいなぁ。」
佳奈は羨ましそうに口を開いた物の、こわばった新一の表情を見て訂正した。
「濱は柾樹と婚約者のものなんだよ。お前は加賀美屋の為に尽くしてくれ。」
また始まった。新一や女将はいつもこれだ。
佳奈はそういう風に考えて20分位した跡、
車のエンジン音が聞こえた。
「ここが加賀美屋の正門になるんですよ。」
恵美子の声である。
婚約者の女性は不思議そうに眺めていたようである。
恵美子はこれは島津藩の頃からの門構えだと説明していたようだった。
続いて女将の甥である柾樹、そして婚約者の女性が現れた。
彼らが通り過ぎるとき、佳奈は一礼した。
「徳之島と加賀美屋にようこそ。」
と甥と婚約者に添えた。
通り過ぎる恵美子は、
婚約者の女性に
「夏美さん、ご実家が濱でケーキ屋を営んでいらっしゃるんですか?
小田原に帰ったら、濱のご実家のおかしを食べたいですね。」
と言っているのが佳奈には聞こえた。まるで未来の配偶者である
柾樹が影が薄いぐらいにだ。
「恵美子さん、ここと島を出る準備ができたのかな。」
と佳奈は新一につぶやいた。
「しかし、あの女の子と柾樹の婚約記念パーティーの筈だけれども
何で恵美子が出しゃばるんだ?」
と新一もいぶかしがった。
その跡の恵美子と夏美という女性の運命を誰も知らなかった。
つづく
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信・加賀美屋の一番長い日_5

2014-07-11 12:13:53 | 信・どんど晴れ
「そうなんですか。」
恵美子は皮肉っぽく大女将を見た。
「恵美子さんだっけ。少し顏がこわばっているよ。」
女将の甥は苦笑していた。
「だって、大女将が嬉しそうな顏をおいごさんをみて
思って居たので。」
「そうかい。まあ恵美子さん」
大女将は恩着せがましく、恵美子を見た。
恵美子は、甥の婚約者である女性を見る。
「婚約者さん?聞けば、濱生まれ濱育ちなんですよね。
私は同じ、神奈川縣の小田原出身なんですよ。奇偶だなぁ。」
と、恍惚けて見せた。
「そうなんですよ。」
その婚約者という女性はあまりにも平凡でつまらない女性だ。
その甥とはまあイイカップルになるだろうな。
ただそれだけである。
「あのー。婚約者さんとどういう家庭を築くんですか。
やはり、濱で平凡ながら幸せな家庭を築くのかな。
だといいなぁ。」
恵美子は此島に来てあまり面白かった事がないと信じている。
だから、幸せそうな甥と婚約者の女性に嫉妬していた。
「やたら、こわばっていません。恵美子さん。」
女性もそういう。
「そうじゃありませんが・・。」
ソレを見た大女将は
有るよこしまな事を考えていた。
つづく
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信・加賀美屋の一番長い日_4

2014-07-10 05:21:57 | 信・どんど晴れ
「お孫さんはまだ、来ませんね。」
噂された恵美子は徳之島の空港にいた。
鹿児島の本土を中心とした地域に行く飛行機は頻繁にくるみたいだが、
孫とその婚約者を乗せた飛行機はなかなか来ない。
「朝も早いですから、直ぐ来ないですよ。」
朝にしては、日差しは強い。
「早く、来ないと私は倒れるよ。」
大女将は恵美子につぶやいた。
朝にしては、日差しは強い。
「早く、来ないと私は倒れるよ。」
大女将は恵美子につぶやいた。
「socoまで倒れませんよ。でも、おまごさんの婚約者さんは濱の出身みたいですよね。」
恵美子は話題を変えようとした。
「そうなんだよー。恵美子さんの出身地からどのくらい近いの?」
恵美子は小田原と濱の距離が分からない、大女将に対して
「大阪と京都の距離ぐらいかもしれません、じゃなかったら大坂から和歌山の市内ぐらいかな。」
と、恍惚けて見せた。
「うーん。そうなの。」
大女将は少しは納得したようだった。
徳之島を含めた奄美のひとは関西方面に出る事が多いからだろう。
いつも、嫁である女将の前では苦虫を噛み潰したようような顏の大女将が嬉しそうなのは
彼に加賀美屋を継いで欲しいのだろうか。
しかし、長らく徳之島を離れていて、濱のHotelに就職した彼を連れ戻したいとも見える
溺愛して、いやがる人を無理にでも島と加賀美屋に縛り付けようとしたのは、
女将とほぼ同郷の加計呂麻島出身の松本佳奈が嫌いだからか。
「あの、大女将。」
恵美子は、ふと尋ねた。
大女将は、
「そんなことないよ。あの女の事は気にしていない。」
と、表情がこわばっていた。
TO BE continued
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信・加賀美屋の一番長い日_3

2014-07-09 18:49:09 | 信・どんど晴れ
昼近くになって、参列者が続々加賀美屋にやってくる。
女将、夫である社長、その二人の間の長男新一が参列者に挨拶をしている。
「しかし、上京してずっと音沙汰がなかった人間をそこまで参列者が必要なのかな。」
新一が参列者が少し吐けた跡、佳奈につぶやいた。
「ソレは分かりませんよ。」
佳奈はそう言うしかなかった。些か苦笑紛れニダ。
口を動かしながら、参列者が使うお膳をそびえ立つぐらい佳奈は持っていた。
「どこで大女将が聞いているか分かりませんぜ。さて、新一さんの奥さんの恵美子さん
と大女将が見えませんが。」
佳奈は新一に尋ねた。
「分からん、どこかでぼけた大女将を見ているんだろう。あるいは空港か港にでも行っているのだろう。」
新一は人ごとみたくいう。
「そうですか。」
実を言うと、新一と恵美子は政略結婚である。大女将の指矩で無理矢理結婚させられた。
彼女は小田原の老舗蒲鉾屋の令嬢である。本来ならば小田原か濱の大きなお店の人と結婚するはずだったのだが。
「こんな島に来て彼女は不幸だった。実を言うと子供をふたり作ってしまったのが悔しいところだ。」
新一は、悔しそうだった。
「本来ならば、新一と佳奈が結婚すれば佳かったのに。」
女将や社長は佳奈にくり返し言う。
本来ならばこんな島に閉じ込められるのはまっぴらだ。
しかし、逃げられないことを悟ってからは、加賀美屋の人たちがいい人たちに見えるのだ。
彼らのために尽くそう。
そう、悟ったとき、女将の甥が婚約記念パーティが持ち上がったのだ
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