ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
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人は、退出下さい。

後始末の後始末_最終回

2018-03-23 12:19:30 | 逆襲の藤隆
「それにしても、私の共同研究者という人は、幸せなんでしょうか。」
女性科学者は、パトロンに尋ねた。
パトロンは、
「そうだねぇ。彼はかつて愛した人も、かつて気にして脅威だと
思った出来杉も超えて今が楽しいのかもしれない。様々なものを捨てて
力のある人間を躱す技を身につけたというか。」
と言う。
「はぁ。」
と、女性科学者はいい、
「私のような根無し草で粗暴な女性を共同研究者に選ぶのは
そういう部分があるのでしょうか。」
パトロンは考えた。
「そうだろうね。今日はあの男の人来るみたいだよ。」
と、女性科学者の肩をたたいた。
女性科学者は複雑な表情をしていた。
さて、男がやってきた。
「私は、ここ最近ショックだったのは、出来杉の亡くなった嫁さんにね
あなたのバカバカしい研究に与することができない。と、言われたこと
だったんだよね。私は結婚とか恋愛感情抜きに普遍的に彼女に認めて
貰いたかったんだけれども、彼女はそういうことを下心と受け取った。
僕は、いくら僕に恋愛感情ないからそういう言葉を叩きつけるのは
やはり無礼だ。と感情的に彼女に言ったことがある。
彼女は、私の主人の出来杉が勝つかあなたが勝つかと言った。
これが彼女の生前最後の言葉になった。」
と男はパトロンが入れてくれたグルジア産の紅茶を口にしながら答えた。
多少遠い目だった。
「ショックだったのでは。」
女性科学者が慰めるような目をした。
「いや。彼女との恋愛や恋を諦めてからはなんとも思ってない。
生前の彼女にはけちょんけちょんに言われ続けて、出来杉との結婚には
呼ばれていないようなところがあったから。」
と男は言う。
「 yy さん、 ( 男の名前 ) 人生とは何なのでしょうか。」
パトロンは多少意地悪な質問をした。
「そうですね。多少運命、多少自分で選ぶものでしょう。
もし、出来杉の嫁さんと僕が結婚していたならば、出来杉は手負いに
なってますます巨大になったかもしれない。彼は悩むこともなく
大科学者になっていたかもしれない。もしかしたら、自分を変えた
事故があっても、僕は変わらない人間だったかもしれない。」
男は紅茶の入ったマグカップをおいて答えた。
「さて、研究のことでしたね。」
女性科学者が言う。
「はい。」
男はそう答えた。
おわり
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後始末の後始末 _4

2018-03-17 11:42:09 | 逆襲の藤隆
「そういえば、私が使っているゴーダマートが、大手のツルキに変わったみたいだ。」
女性科学者が自前のエコバックにウィスキーとおつまみを入れたものを見ながら
初老のパトロンにそれを見せた。
「今日はこれを持ちながら研究ですか。」
彼女が小脇に抱えたレポート用紙を皆が答えた。
「ああそうですよ。ゴーダマートって確か關東のローカルでは結構目立っていた
けれども、全国チェーンに飲み込まれて大丈夫なのかな ? 」
「どこも生き残るのに必死だ。」
パトロンは、女性科学者を見た。
「それな。やっぱり倒産するより生き延びるほうが専決なのかもしれない。」
女性科学者は自分の持っているスマホを見た。
「ふーん。ツルキの連結子会社で旧ゴーダマートの店舗はゴーダ Mart の人間が
経営して、かつての独自の商品はそこで売るみたいだ。」
と、画面に表示された情報をみた。
「うん。確かあなたが研究しようとした研究を提唱した人間とは確執があるようで。
パトロンはにやりとした。
「ううむ。どこでそんな情報を仕入れたんですか ? 」
女性科学者は花白んだ。
「私は大富豪ですから、情報網はそれなりにあるのですよ。」
パトロンはそう結んだ。
おわり
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後始末の後始末_3

2018-03-15 05:31:30 | 逆襲の藤隆
「ゴーダ・ツルキマート設立の結び」
ネット検索をしてこんなタイトルのページを見つけた。
この男も出来杉同様自分が恐れた男が関与している。
このコンビニチェーンは関東地方のある一部ではよく見かけた店舗だった。
しかし、こういう形で大手のツルキに乗っ取られるのはなんだか怖いものがあるよ。
自分が恐れた男たちが色々と苦しんでいる。
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後始末の後始末 _2

2018-03-11 06:02:26 | 逆襲の藤隆
「ふーん。アゼルバイジャン産の紅茶ですか。」
僕は何もわからないまま、ここの館の主である初老の男が
薦めてくれた紅茶を飲んでいた。
この館の男は、長らく僕と共同研究を行っている女性科学者の
パトロンをしている男である。
この前はグルジア産の紅茶を薦めてもらった。
「いつも紅茶に凝ってしまって、こんなものをあなたに薦めるのはおかしいですよね。」
男は苦笑していた。
「いえ、構いません。」
このぐらい我慢できる。自分の研究に興味を持ってくれたから。
自分の研究は出来杉より理解できないだろうことも百も承知。
彼を疎ましく思い、彼を慕っている彼の嫁さんと結婚する事を望んだ。
しかし、事故があって、彼女と出来杉が結婚する事をどことなく容認する。
こうやって私は嫁さんを迎えるのは遅すぎる年齢になってしまった。
しかし、怖くない。死ぬことだって。
今の研究は、自分にとって重要で楽しいからだ。
「もう一杯お願いします。」
私は初老の男に頼む。向かい合うソファには女性研究者が座っていた。
つづく
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後始末の後始末 _1

2018-03-08 11:00:17 | 逆襲の藤隆
「うん。此れから行ってくる。」
男は独り言を呟く。
「出来杉の嫁さんが亡くなっていつになるのかなぁ。」
また男は続ける。
男は考えていた。
「出来杉は、自分がなぜ恐れることがなんだかわかっていないようにも思う。
いつもいい子ちゃんとして振る舞おうとするが、逆に彼の力だと
受け止められてしまう背景があるのだよ。」
男は、出来杉の嫁さんが殺害された背景をそう狙っていた。
「うん。 xx ちゃん。君は自分が Femme Fatale だと考えていたけれども、
それは見当違いだね。君は近所で可愛い女の子止まりだ。
ある世界では、出来杉は僕と結婚させれば自分は大丈夫だと
思ったのかもしれない。」
出来杉の嫁さんにそう考えて、男は家のドアの鍵を締める。
つづく
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