ブルーシャムロック

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大岡山から笑ってやるよ

2014-09-17 18:28:15 | 信・どんど晴れ
「竟に届いたか。」
高槻久留実は、予約していた本を恭しげに受け取った。
歩いて 15 分~20 分ぐらいある市立図書館からだ。
2 冊有るらしく、一つはラブストーリーで、もう一つは推理小説だった。
どちらか一方を楽しむファンはいる物の、こんな様々な本を読む人も居ない。
「『大岡山から愛を込めて』は中学校一年の頃のベストセラーで、これが読めるなんて
すばらしい。『蒲田・羽田殺意の考想』この映画昔結構な時間かけて実家の方から
金沢の映画館に見に行った。友達からビデオで見ればいいとか言われたけれどもね。」
と懐かしそうにソレを見ていた。
ルームメイトの松本佳奈としては實に頭が痛くなりそうな作品だった。
「難しそうだな。」
と一言
同じくルームメイトの横手淡雪は苦笑しながら愛読しているハーブティーの本を小脇に抱えている
「そんなにいろいろ読んでいるならば、上智とか東洋英和とか受ければ佳かったじゃない。」
といって、『九郎右衛門』と書かれた自販機用のペットボトルを流しに持って行く。
これにわかしたハーブティーを入れるためである。
「さーて読むぞー。ところで佳奈ちゃん明日居酒屋善助でのバイト初日だよね。」
久留実は余裕の表情で佳奈に聞く。
「そうだな。確か淡雪も関内でバイトだよね。」
佳奈は淡雪に聞く。黙って頷く淡雪。
「じゃあ、私一人で 2 冊とも読破するぞ。」
久留実はもう読む氣まんまんである。
「それにしても、本を読む速度が速いな。このまえ読んでいた江戸期の一揆、
百姓太兵衛の記録とか言う本を読んじゃったみたいだけれども。」
佳奈に対して久留実はこう答えた。
「そうだね。私自身速読でいろいろ楽しんだ方がいいからね。あまり待たせると他の人が
読む時間が遅くなるだけだからね。」
それに対しても久留実は小説か何かを書くために資料を集めたり物語のイメージを
固めるためにいろいろな小説や本を呼んでいるのかな。
佳奈はそんなことを考えていた。
翌日、佳奈も淡雪もバイトなどで部屋を開けている。久留実は文庫本のページを
開きながら、ふと考えていた。
「佳奈ちゃんは、いつもバイトと講義に明け暮れているが、何か意地になっている感じだ。
加計呂麻島と大阪から逃れたいとかいつも口癖見たく言っている。」
もっとも、これに類似した感情は上野駅周辺を嫌い
下北沢と吉祥寺を愛する横手淡雪も同じだが。
不思議なのは奄美の人がやたら集まる関西、東北の人がやたら集まる上野駅周辺地方
という事である。石川県出身の久留実からすればフラットにどこでもいいはずなのだが。
人間の心はなにかよりどころが必要なのだろう。
今私が住んでいる神奈川県の街では、比較的石川県出身者が多いと言われている。
そんなことを考えつつ、文章を読んでいる。
「そういえばさあ、蒲田も大岡山も空港のある羽田に近いね。」
松本佳奈が素っ頓狂なことを言う。
ある日の夕食である。
久留実も淡雪も苦笑した。
「たしかに小松空港に行くのに羽田を使うね。」
「同感。私も新幹線より飛行機を場合によって使うね。」
と、佳奈に向かって言うだけだった。
きょうの料理は佳奈が作った。和食のうまい久留実や洋食が多い淡雪のようには
うまくいかなかったけれども。
「ところで、質問だけれども今度私のクラスメートをこの部屋に呼んでくる。」
横手淡雪が部屋を見回しながら答えた。
ココの部屋古いアパートをリノベーションして使っているので Living がやたら廣い。
「ええっ。」
佳奈と久留実は顏を見合わせた。
「ねぇ。佳奈ちゃん、關東に来てから直ぐ、關東はシーサーと桜島がいっぱいだとか
いっていたじゃないの。そのシーサーと桜島の場所出身の人も私のクラスにいる。
偶然なのかもしれないけれども、私のクラスは東北出身者は私一人で
他に、高知の子が一人、愛媛県の子が一人、京都の子が一人という感じなんだよね。
下町よりも西日本や沖縄に寛容な土地だからかな。」
淡雪はアウェーを楽しんでいるように感じる。
佳奈と久留実、ふたりは顔を見合わせた。
「私のクラスは女の子は珍しい経済学部だから、會津の子が二人、沼津が一人
そして広島の子だな。」
淡雪は一瞬考えた。
「會津の子か。なるほど心中複雑だ。」
と口を開く。少し笑っている。歴女でもある久留実はある程度心を察している。
「結構二人とも仲良しなんだな。」
佳奈は答えた。
彼女に声をかけてくれた札幌出身の子は居る物の、ルームメイト程友達はいないのだ。
このルームメイトたちが連れてくる人々が互いに影響を与えていくことを
3 人は知らなかった。
ソレはさておき、
「このワインはうまい」
佳奈は淡雪が実家から持ってきた wineglass をみて眺めた。
「これは安いオーストラリアのワインだったよ。佳奈ちゃんは、關東に来たんだから
その關東の変化を楽しんだらいいのに。」
と淡雪がいう。
「変化と言えば日本酒をワインの代わりに飲んでみることを勧めた方がという
話題を会津出身の子一人が切り出していた。マーチャンダイジング的に
こうやった方が日本酒が売れるとか言っていたな。」
と久留実が wineglass を眺めた。
「ふーん。」
佳奈にはそういう難しい話はわからない。酒と言えば黒糖焼酎しか飲んだことがないからだ。
芋焼酎も泡盛もあまり飲んだことがない。ましてや日本酒だ。
「私の高知県出身のクラスメートは新歓コンパで日本酒ばかり頼んで、困らせたらしいよ。
まあ、私も秋田出身日本酒は、身近だから彼女の事は察してやるところがある。
やはり、關東の状況しか分からないひとは分からないのだろうか。」
と、淡雪は wineglass を傾ける。
「私も石川出身だから、日本酒は身近なんだね。まあ、私の地元の日本酒を勧めてみるか。」
久留実はにやりとした。
「私はまだ日本酒は體が受け付けないよ。」
佳奈は難しい顏をしていた。
おわり

Beachで人を待つ

2014-09-16 16:02:41 | 逆襲の藤隆
すったもんだしたあげく、私たち一行は、三浦半島のBeachに着ていた。
浜の方では、日下部浩一郎君と萌美ちゃんが遊んでいる。
すると、Beachの有る方向から、2人のヒトカゲが。
幼馴染のバーミリオンとその恋人のマゼンタさんのようである。
浩一郎君にとってはバーミリオンはあこがれのお兄さんだから
話が弾むのであろう。
隣に派手派手しいビキニのマゼンタさんが似合うのだ。
悔しいけれどもあの人が居ると一歩引いたところに居るべきだなと感じる人だな。
おわり

忘れろ。

2014-09-06 18:54:27 | 逆襲の藤隆
「平賀、木之本のことを忘れろ。」
私有村佐和子はそういって、平賀に発破をかける。
私は彼女が、同性愛者だとしても、構わないんだぜ。
だから、彼氏も連れてくる。
平賀知世は、木之本という女に裏切られたらしいんだ。
でも、今そいつは消えている。強引な手を使ってでも
忘れさせる。

インターUrban

2014-09-05 19:53:00 | 逆襲の藤隆
僕は、SCANDALを起こしたとしてしばらく姿を消していた作家の
原稿を取りに行く。
名古屋から乗った新幹線を降りて、大阪の駅から、
作家先生の家がある最寄り駅までインターアーバンに乗る。
あのときの、東北の人間の反発はすごかった。
俺らをBakaにしているのか。まだ社会人になる前の学生だったけれども
あれは恐ろしかった。
最寄り駅から歩いて数分の所に、作家先生の家はあった。
原稿を取りに行くことをインターホンで告げると
作家先生が待っていた。
「新作ならば、もう書き上げているわ。」
こういってとんズラされたこともあったけれども、作家先生はコピー用紙に
ちゃんとプリントアウトしていた。
「今回の作品だけれども、あの下品な漫画家は息子が旧作を
古本屋か電子書籍の復刻企画で発見して嵌っているわね。
あの映画プロデューサーは、ドキュメンタリー專門チャンネルの番組で
しった。彼ら原稿を競作するとなると面白いわ。」
作家は、不敵な笑みをこぼした。
作家先生が執筆していた作品は、北斗の拳のような破滅後の世界で生きる
半沢直樹と花咲舞といった作品だった。
原稿を目に通している僕に、作家先生は言う。
「その昔の東北と上野駅の關係を執筆しているとき気づいたのよ。
上野駅周辺地方に住む人々を調べている時
彼らが大好きな物は、彼らが嫌いな物と似ている行動をしているのを。
その事実は東北の歴史を調べれば調べるほど。」
彼女は思い出したくないように口をへのじぐちにまげて遠くを見ながら。
今回の復活第一作は東北でも好かれるだろうか?
ichiou owari

姿無き挑戦者

2014-09-02 19:48:08 | 逆襲の藤隆
「君、新しい雜誌のために大阪に行って貰うよ。」
僕の勤務する出版社が新しい雜誌を創刊するみたいである。
僕もその雜誌の編集部に選ばれた。
眠い目をこすりながら、僕は名古屋から大阪に向かう電車に乗車している。
電車の自動ドアが閉まったとき、この人から原稿を貰うのは困難だろうな
と感じていた。
今回の雜誌の目玉として目されるのは、大ヒット映画を多数演出する
大物プロデューサーのColumn、あるいは下品な作風で発表当時の漫画界を
賛否両論の渦に巻き込んだ人気漫画家の新連載漫画。
他にも大物作家の名前が連なっている自分が命じられたのは、
「薔薇と菊のロンド」、「臭橙と酢橘(かぼすとすだち)」、などの清純派純文学で
デビューしたものの、そのご「上野駅の亡霊」、「陸奥の門(みちのくのもん)」といった
上野駅と東北の關係を皮肉ったColumnを多数出版し、東北の人間から手洗い批判をうけて
その後、何處にいるか分からなくなっている女流作家である。
最近の調査で大阪に居ることが分かった。なので彼女に原稿を貰っていく。
というのが僕のミッションである。
この原稿を貰ってくる予定の作家だけれどもどのくらい恐ろしいのだろうか。
差別用語バリバリの偏った人間なのだろうか。
はたして、普通の人間なのだろうか。
(もしかしたら続くかもしれない)