ブルーシャムロック

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岡崎で聞いた話_3

2011-11-18 09:41:55 | 信・どんど晴れ
「それにしても、生きて歸らないときには、水杯を交わすと言うが、それからすると
関東に帰れる可能性があるのかな。」
彼女はワイングラスにつがれた日本酒を飲みました。
「どうかな。」
私と久留実は顔を見合わせて笑いました。
あのときの彼女の顏。
彼女の出身のシマで作られるお酢をそのまま口に放り込んだような顏が印象的でした。
「私は、本能的に歸ることができるならば、心がどきどきしない。でも不安でいっぱいだ。
父親の静止以前にだ。」
彼女はがたがた震えているようでした。
「佳奈ちゃん、寒いのかな。もう4月になろうとしているのに。」
暗い顔をしながら、久留実が彼女を見ました。
「問題ばかりだ。」
普通であるならば松本佳奈という女は、モーマンタイとか、大丈夫だ問題ないというセリフを
真顔で粋がって言う人なのですが、がたがた震えた彼女を見ていると、私も久留実も
何か起こりそうな氣がして成りませんでした。
「もし、帰省した先で何か起こるならば、そこで考えてもいいよ。」
私は、そういう風に答えました。
ご飯を食べ終わった跡、佳奈に、お弁当を持たせて最寄りの釜利谷驛まで高槻久留実と一緒に
送りに行きました。
ご飯を食べている時の不安な顏は多少和らいだのですが、
まだ表情が硬い。私と久留実は思いました。
「さて、あのシマの事だ。何もすることがないだろう。」
松本佳奈はそう捨て台詞を残して、羽田行きのホームに消えていきました。
私と久留実は苦笑して、自宅まで帰って行きました。
つづく

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