ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

黄金を手にする者_6

2014-10-30 05:28:34 | 信・どんど晴れ
「イタリア展、大盛況ですね。」
東岡麗美は、今回の出展者である玉置社長に尋ねる。
「いゃあまあね。今回はワインを出さなかったけれどもね。」
玉置は苦笑した。
そして、同じように出展している山本と書かれている同業他社の女性に、
「地下で、ニッカウィスキーの試飲会を開いているから、ワインは駄目かなと
思ったんだよね。」
と言う。
山本は、
「そんな事はないですよ。我が社が出展したワインがありましたからそれが、
結構受けましたよ。玉置社長の方のワインも魅力的でしたが。」
という。
側らで聞いていた麗美は
「山本さんの會社と連名で今回の久良岐デパートの出店だったんですよね。
山本さんのパスタも見たこともないものが多かったから、面白かったですよ。」
という。
山本は社交辞令だと思って、他のブースに移っていく。
「イタリア語でトマトってどういう風に言うか分かりますか?」
玉置は、にやりと笑う。
「さぁ。」
麗美は呆けてみる。
「ポモドーロというんですよ。黄金のりんごという意味です。
トマトを食べる事によって黄金に近づくのかもしれません。」
玉置は得意げになって答える。
「それじゃあ、もしかしたら黄金に近づける人って・・。」
麗美は言おうとしたが、
「そこまでは野暮ですよ。Baka丸出しです。東岡さん自体が考えてみてください。」
麗美に向かって言う。
麗美は考えて、また新しい番組の構成を考え始めた。
tsuduku
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黄金を手にする者_5

2014-10-29 18:03:10 | 信・どんど晴れ
岡崎の祖父の話題を、息子にせがまれた。
「そんな奴は知らない」
龍男は、冷たく息子に言い放った。
息子は不満そうに口をゆがめた。
父親はいつも自分を不肖の息子といって怒っていように思う。
やはり、岡崎の老舗の店を俺に継がせられないと
思っていたのだろうか。
いつも、父親が苦手だったのは、ニューヨークの話ばかり考えていて、
ソレをものさしにする事が多かった。
自分にとっては、小学生の頃は憧れだったかもしれない。
しかし、時間がたつにつれて、ソレが嘘に思えてくる。
高校生の頃だろうか、それとも岡崎を飛び出して、苦学生を始めた大学一年の頃だろうか
当時人気絶頂だったRockArtistカート・コバーンが急逝した。
彼が自殺した時は其れ程影響が出なかったけれども、後からじわじわと影響が出て、
洋楽がせこい者しか流行らなくなった。
それに複雑細分化が進んでいく事が多くなった。
飛行機の音楽チャンネルをみてみる。j-popはある程度興味があるけれども、
洋楽ほどではない。
洋楽chに回してみる。
Coldplayとかあるみたいだ。
最近はこれ気に入っているんだよね。
そんなことを考えながら、
hong kongに赴任することになった同期の事を考える。
思い出すのはまたおやじのことである。
「ばかげた国策映画と、ばかげたカンフー映画」
というおやじの口癖である。
俺もおやじの言う欧米の映画や洋楽は嫌いじゃない。
おやじの影響で、Nirvanaも聞くことが多くなったんだよね
あれやこれや考えていると
福岡に着陸のアナウンスである。
つづく
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黄金を手にする者_4

2014-10-26 05:44:54 | 信・どんど晴れ
「先輩、先日の私の番組を聴いていましたか?」
宇品は、先輩の東岡麗美に尋ねる。
「聴いてた。聴いてた。ゲストは作家の風間龍氏だったよね。
彼が司会を務めるビジネスチャンネルの人気番組のことを
話していた。」
大きな紙コップにはいっていた紅茶を口にして後輩の話に
耳を傾ける麗美。
「そのなかで龍氏が、ル・ヴィサージュの社長である
橘恵美子さんという人を招いたときに、彼女がオフレコで
話したことを聴いていましたか?」
宇品は、コーヒーを口にしながら、些か神妙な顏をした。
ここは、久良岐駅の喫茶スペースである。
歩道橋も近く、結構な人に声が聴こえる。
「実は、ル・ヴィサージュは、朝倉さんというオーナーがやっていた
個人商店だったらしいけれども、橘さんが、社長に就任したとき
当時のオーナーが脳梗塞で倒れた時に、途方に暮れていた娘さんに
請われて、乗っ取ったらしい。現在その娘さんは
ル・ヴィサージュの製菓部門の主任をやっているらしい。」
と話した。
「ル・ヴィサージュって元町にあるケーキ屋さんだったよね。
私の番組でゲストに呼んだ、玉置義智という人が社長を務める
會社が、結構出資ししているみたいで、イタリア製の素材を
ふんだんに使っているみたいだよね。」
麗美は紅茶を口に含みながらそう答える。
「個人商店の時代のル・ヴィサージュの方が美味しかった
という、話も聞きますが。」
宇品がそう話を返す。
「私、ル・ヴィサージュは、予測だけれども娘さんは
製菓学校とか出てなかったのかもしれない。
だから、橘さんに、乗っ取らせたのかなぁ。」
と麗美は尤もらしいことを言う。
宇品と麗美
2人は顔を見合わす。
つづく
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黄金を手にする者_3

2014-10-25 17:28:17 | 信・どんど晴れ
「遅ればせながら鳥井信治郎のドラマ再放送ではまっているよ。」
fm ラジオ局のパーソナリティを務める東岡麗美は、
後輩の同じくパーソナリティを務める宇品は
「へぇ。あのドラマの構図であるならば、シャープの社長と
松下幸之助の対立を描けますね。」
という。
「うん。まあ話題になっているから、ゲストの人との話を合わせるためにモネ。」
宇品は一瞬考える。
何日の時代の話か。第 1 話で出てきた松井達男が福岡に赴いた時代である。
「なるほどね。私たちが知っている世界の外では、竹鶴政孝が主人公で鳥井信治郎が
悪役という物語が成立していそうですね。」
また宇品が口を開いた。
「誰かが言っていたけれども、黄金を手にする者は、善にも悪にもなるのだ。」
麗美は言う。
「黄金は誰のためではない。おおやけのものだという物語もありんすね。」
宇品は乾いた笑いを含めた。
「まあそうかもしれない。そういえば私の番組で招いた映画プロデューサーが言っていた。」
麗美だって乾いた笑い。
「黄金に近づき、そしてどう触れるかの物語はつきないですね。」
くすっ笑う宇品。
つづく
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黄金を手にするもの_2

2014-10-21 11:36:12 | 信・どんど晴れ
さて、松井達男が福岡に出張する年から数年遡った神奈川縣の或アパート。
女子大生が、ルームシェアしてそこに住んでいた。
一人の、女子大生が言う。
「現在講義で渋沢栄一の話題が出ているのだけれども、その渋沢栄一と
対立関係にある岩崎弥太郎が出てくるんだ。前講義で聴いた
鳥井信治郎と、竹鶴政孝の話題に何か似ている。」
女性の名前は高槻久留実という。
神奈川縣の公立大学の経済学部に所属している。
「歴史はくり返すというか。」
横手淡雪というもう一人が言う。
「私にはよくわからないけれども、黄金に近づいた者は
その黄金を守るためには卑怯なことをしてでも、それの批判者が現れる
という訳だ。」
もうひとりの松本佳奈も言う。
「私は付け加えるとすると、黄金に近づき手にした者は、それを
おおやけの為に巻かなければいけない自体に近づく。もしそれが正しければ
後に残された者はうるおい、黄金に近づいたものにまた近づく者が
又物語を作る。」
と高槻久留実は他の学生に言う。
一人はきょとんとした顏で久留実をみて、もうひとりはしみじみと頷いた。
つづく
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黄金を手にするもの_1

2014-10-18 16:57:35 | 信・どんど晴れ
「おみやげは・・・。」
そんなメッセージを息子に入れている男。
名を松井達男という。
彼はある商社に勤務していて、現在は福岡に出張する予定で
羽田で飛行機を待っている。
その時、液晶ないしはledのディスプレイで
「猛き黄金の国鳥居信治郎、ついにドラマックスで放映開始。」
とある。
達男が福岡に立つ一ヶ月前に、別のチャンネルで一年に及ぶ放映を
終えた人気ドラマである。
サントリーの創始者である男をドラマチックに描ききったと、
言われるドラマで見たこともない達男とて存在を知っている。
その後目にしていたディスプレイでは
「ヒストリーチャンネル、英雄たちの決断竹鶴政孝、妻と共に
サントリーに戦いを挑んだ男。」
という番宣。
なるほどと達男は思った。
両枠で上野駅周辺地方を舞台にしたドラマをやったと思ったら、
ヒストリーなんとかでは下町にはない蒲田の英雄たちの決断
というエピソードをやっていた。
何かに引き寄せられているのだろうか。
凡人の頭しかない達男には思いつかない。
ふと思うのだけれども、鳥居信治郎が主人公のドラマって
漫画原作だ。何か同じ題名で三菱の岩崎弥太郎の物語を
違う人がやっていて、その中で渋沢栄一が登場したような気がする。
もしかしたら、ドラマのスタッフも漫画の原作者も
鳥居信治郎に岩崎弥太郎をなぞらえているのだろうか。
「xx航空765便、福岡行き搭乗口は・・。」
アナウンスが聞こえた。
達男は飛行機のりばに滑るように消えていく。
つづく
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奄美と下町

2014-10-12 16:18:25 | 信・どんど晴れ
「疲れた。」
現在私は現在住んでいる神奈川県の釜利谷駅に向かう電車に乗っている。
ついさっきまで浅草深川などの下町という場所に赴いていた。
実を言うと私一人だ。
ルームメイトの横手淡雪が熱烈に反対した。
「あんな東北の人間が傷をなめ合うような場所は行きたくない。」
あまりにも猛烈なので私は何も言えなかった。
私にとって、下町はあこがれの土地だった。
冷徹な関東という都会にあって、人情のある場所というイメージがあって
是非とも足を運びたいと思って居た。
しかし、東北は秋田出身の横手淡雪は、あの土地をすごく拒否していた。
「私が大船の學校を受験したのは、下町や上野駅の馴れ合いの空気から遁れたいからよ。
人情なんて有るわけがない。」
彼女の下町に対する憎々しげな表情に対して同じルームメイトである
石川県出身高槻久留実は、
「石川県の人間も伝統的に上野駅のヘビーユーザーだけれども、其処まで拘りが
ないけど、東北の人間に対してはあそこに執ってしまうから仕方がない。」
と言っていた。
浅草の方に向かう電車に乗っている私は何も考えていなかった。
でも、関西に住む親戚がやたらと關東には東北の人間が多いからお前に合わない
と言われた。
しかし、事実東北出身者と同じルームメイトだ。そこら辺は大丈夫だ。
その彼女も、東北以外のclassmateとの関係を楽しんでいる。
だから、親戚の事は現在は忘れている。
結論を言おう。
下町は楽しかった。だけれども、ルームメイトが嫌悪した下町の現実を見てしまった。
関西弁風のなまりの人を冷たくする一方で、いわゆるzuhzuh弁の人を優しく
見ている店員を見た。彼も東北のどこかの人だったらしく、
「是の土地は東北の人間には住みやすい。」
という。
まるで関西・大阪に
「是の土地は奄美人には住みやすい。」
と言っている親戚を思い出す。
上野駅にある集団就職に対するレリーフは、上野駅を利用した東北出身者をモチーフにし
ていると言うらしい。
関西・大阪に執る奄美人
上野駅周辺・下町に安らぎを持つ東北の人
自分は、それがもしかしたら、別な人においしいものを奪られているし、
受け入れ先も、そこに停まる人に固執して解決の手段にしていく。
横手淡雪もソレをストレートに感じているのだろう。
中吊り広告を眺めると、
シーサーが描かれた沖縄の広告、
又反対側を見ると芋焼酎の広告が見える。
やっぱりだ。
それと高槻久留実の言葉も
「私は上野駅も、其処に向かう電車も道具であるべきだ。
私や私が生まれ育った土地でそう考えられているだけれども。」
という。
やはりイメージと現実は違うのかもしれない。
電車のアナウンスが釜利谷駅を告げている。
おわり
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Ametoどんよりした日_Epilogue

2014-10-11 05:29:09 | 逆襲の藤隆
「誰だと思った。残念でした。バーミリオンでした。」
女性の目をふさいだ同じくらいの年齢の男性、バーミリオンは言う。
「もうふざけないでよ。私を追ってきたんじゃないの。」
女性は、表情は変えなかったけれども、些か意地悪そうだった。
「まあね。」
バーミリオンは気の抜けた声を出した。
ここは、神奈川県と山梨県の県境にあるかきくけ湖で、
新春寒中水泳大会が行われていた。
女性の名前は平賀知世。
彼は恋人の浅岡蓮次と共に、友人が寒中水泳大会に来ているのを見てきた。
「やはり、浩一郎君が躁いでいるのが見えるよ。やはり彼は冬でも元気だ。」
蓮次は苦笑する。
浩一郎君の後ろから泳いでくるのが、恋人の柿沼萌美という名前らしい。
そんな男女を見ながら、知世は言う。
「私は現在湖で泳いでいる浩一郎君や萌美ちゃんみたく自分も幸せになって
自分も幸せになるように生きたい。」
と蓮次とバーミリオンの顔を見て言う。
「それは僕も、バーミリオンも浩一郎君も萌美ちゃんも望んでいることだよ。」
と蓮次君も言う。知世には13歳の時から知り合いだからだ。
冬の曇った日、皆寒そうに湖から出てくる。
おわり
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Ametoどんよりした日_肆

2014-10-10 07:10:40 | 逆襲の藤隆
「ここには主人はいません。」
出来杉の配偶者の最后の辞だったという。
配偶者が殺された日、出来杉は乱れた樣子も莫かったという。
やはり、自分の命を狙っている男に対する彼なりの挑戦だったのかもしれない。
「僕は、そんな歴史を変える刺客ではない。そんなおお外れた人間じゃない。」
彼は呪文のように葬儀の時に、くり返していたと、参列者した漫画家
クリスチーネ剛田氏は後年述懐していた。
配偶者が殺された後も、出木杉博士は普通に研究をしていた。
examsystemの事を主張していた。
出来杉の配偶者が殺害された1年後、大道寺財閥は解体して、
研究部門はある部門は南アの兵器関連会社に引き取られたりもした。
examsystemはヴォイニッチコーデックスというベンチャー企業に
引き取られ、ここに研究主任に出来杉はいた。
研究所の端末を開きながら、出来杉は
「もともと、examsystemを研究を始めた大道寺財閥の社長令嬢は
クローンだったとか。まあ僕には関係ないか。」
そんなことを言っていたとき、
「出来杉英才。こんなところにいたとはね」
と彼を数年来狙っていた男が立っていた。
「どう入ったって?まあ貴公の頭で想像してみては如何ですか。」
とにやりと笑った。
「君の狙っているのはもしかしてexamsystemのことか。」
疲れていた出来杉は咄嗟に言葉に出した。
「話がかみ合わないよ。僕が考えているのは、君という存在 を消して
歴史を正常に戻すことだよ。思っているものを消してでも君は消してもイイ。」
男は、Gurkhaナイフをだした。
「やめろ。xxくん。」
出来杉は逃げようとした。だが、男は出来杉ののど笛を切る。
あっという間の出来事だった。
「此れが歴史を操る刺客の最後か。」
男は表情を変えずにさった。
つづく
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Ameto どんよりした日_3

2014-10-09 05:28:28 | 逆襲の藤隆
「xx くん、来てくれたんだね。家内が君を呼ぶなとか言っていたから
君は呼ばなかったけれども。」
出来杉英才博士が配偶者と結婚した結婚式の bouquet トスの時、会々通りかかった男に
出来杉が声を上げた。
「おめでとう。まあ君にはお似合いだね。君と君の奥さんを取り合った中だけれども
君がふさわしいと思って、僕は引いた。」
男にとって、過去すごく愛した女性らしいけれども、現在はもう眼中にはないようで、
男は出来杉の方ばかり見ていた。
「ずっと昔から、人間を向上させて欲しい、今のままでは駄目だと言い続けてきたけれども
君も進む道を見つけたんだね。」
出来杉は有頂天で言う。
「大道寺財閥と共同研究した exam system ってあれってどの位までうまくいっているのかな
僕のような凡人には分からないけどもね。」
男の目には何か疑りぶかそうなものがあった。
「そうだね。まあ人の役に立つのであるならば進めたいと思っているよ。」
なにやら、出来杉自体、研究がうまくいっていないものを匿しているような表情をしている。
「君のことだ。まあうまくいくようにも思えるな。」
男は彼を睨んだ。
「君も、自分の信じた道を進んでね。」
出来杉は去っていった男にそう云った。
「出来杉君、まあがんばんなよ。」
男は軽口を言って去った。昔のような出来杉への嫉妬はなく余裕な感じだった。
「英才さん、彼はもうあなたと私が知っているあの人じゃない。どこかで違った道を進もうとする
信念を持っている。その彼の信念の元、私も命を落とすしあなたも命を落とす。」
そばで聞いていた出来杉の配偶者が口を開いた。
「なんでそんなことをいえるんだ。」
出来杉は取り乱した
「取り乱せば取り乱すほど、あなたを追い詰めたいと彼は思うの。彼だけではなくて
みな、あなたを追い詰めたいと思っている。」
配偶者の表情は覺めていた。
「じゃあ、僕は何だというのだ。自分の力を信じてやってきたのに。」
出来杉は、駭く。
「あなたはその巨大な力に不知不識酔いしれている。その力が人を恐れさせるの。それに・・。」
配偶者はそう答える。
「もういうな。なんで僕の事ばかり。」
彼は頭を抱えた。
「ある人は言うわ。あなたという人間は歴史を元に戻すために歴史の神が遣わした
刺客なのだと。その刺客であることに気づいたのがあなたを狙っている男。
もしかしたら、私と結婚して幸せな家庭を築いたかもしれない男。
彼は私を選んだ事によって作用される、刺客であるあなたが生き続ける世界
ソレが許せなかったのでは。私を選ぶか、あなたを追い詰めて道連れにする世界がイイかと」
配偶者は経に冷静であった。
「そんな恐ろしいことを彼は考えていたなんて。彼は心優しい男でソレは出来ないはずだが。」
出来杉は言う。
「英才さん。あなたはやはり融通が利かない男ね。自らの物語によってあなたは滅びる。」
悲しい男を見てしまった配偶者の顏は悲しいと出木杉は思っていたが、
配偶者は惘れていた。
「英才さん。彼は巨大な力を持つあなたに血みどろの戦いを挑む山岡士郎や範馬刃牙には
なれないし、キシリア・ザビにもなれないでしょう。しかし、顏の分からない沢山のブドリや
ネリの為に殉じるグスコーブドリにでもなろうとしているのかも。
彼は不器用だから、私を捨て、無理と感じたときにソレを感じたのかもしれない。
はたして、彼はあなたのように活字の本を読まない彼だから、どこまでソレを感じたのかも
私には分からないけれどもね。」
出来杉は配偶者の辞に絶句していた。
出来杉も彼を狙っている男も両方とも危ういとは思って居たが、配偶者は彼を選択した
自分を達観していた。
「ねぇ。xx さん(狙っている男)、これでいいわね。」
配偶者は窓の外を見ていた。
つづく
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