ブルーシャムロック

此処はtomohiroのオリジナル小説サイトです。
小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

どんど晴れ群像傳_3

2012-03-30 07:50:14 | 信・どんど晴れ
ここは、徳之島。
此島に所在する、老舗旅館の「加賀美屋」ここに、中半強引な女将につれられて
就職してしまった、松本佳奈という女性がいた。
全く笑わない仲居として、此處に來る人々の話題を逆に攫ってしまい、
加賀美屋の人気に貢献している。
旅館の従業員が詰めている休憩所に佳奈は居た。
「おう。佳奈、追浜さんという方から、cdみたいなものが入った郵便物が加賀美屋名義で
送られてきている。」
と、女将の長男である伸一という男が佳奈に渡す。
「ありがとうございます。」
佳奈は素っ気なく答え、
郵便物を受け取った。
夜、郵便物に入ったcd風の物を取り出す。
おそらくdvdだろう。
この追浜彰、大学を卒業後、大学の近くである立川に住み、フィットネスクラブに勤務していた
と以前、聞いた。結婚相手はフィットネスクラブの利用者で、どういう風に結婚されたかは
ビデオは語らなかった。
「佳奈ちゃん、私たちの結婚式のビデオを送ります。徳之島での仕事は可成りつらそうで
電話やメールなどで察しています。でも、無理矢理連れてこられたと思わないで
黙って仕事をした跡、そのときの何か開ける物があります。」
同封していた手紙は、そう伝えていた。
「結婚おめでとう。だが、私はここでどう生きるか。女将のRailにしかれたまま
仲居頭かなにかになるのだろうか。以前のように抗うのも疲れた。」
ビデオは終了していたのに、Deckからdvdをダスのを思い出し、
急いでdvdを出した。
「私はここがいいのかな。」
電気に照らされた、ガジュマルとパパイアの木が見えた。
おわり
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どんど晴れ群像傳_2

2012-03-29 05:43:24 | 信・どんど晴れ
「そうですね。夏美さん、明日は片岡先生が来るんですよ。」
橘恵美子は、電話口の人間に言い聞かせていた。
片岡先生というのはコシノ某という著名なファッションデザイナーのモトで修行した
売り出し中のデザイナー、片岡友加里という女性である。
實は恵美子は、徳之島という島に住んでいたが、夫とうまくいかず離婚して、
実家の小田原に出戻って来た。彼女の実家の蒲鉾屋を手伝いながら、現在は幅広く
店舗を経営している。一ヶ月前、濱元町にあるケーキ屋
「ル・ヴィサージュ」
を買い取った。
病気で倒れた店主を、何かの拍子で戻ってきた娘の夏美がやっているのだが
うまくいかず救済という形で、「ル・ヴィサージュ」を買い取った。
夢見心地な事を言う、夏美も小ヒットながら徳島の和三盆を使ったケーキが
成功してはいる物の、まだパンチが足りない。
それを片岡先生とコラボしては如何かと考えた。
「あなたは、徳之島の事は忘れることがある程度できたようね。運命の人は
元婚約者じゃないのかも。」
恵美子は電話口の女性にまた続ける。
聞こえてくる、電話口の女性の声は
「はい。」
と力ない声だった。
未だに分かれた婚約者のことを考えているのか。
思えば、朝倉の人生は、流転の運命であったと
彼女の伝聞から考えてしまう。まず石川に行き、勤め先が岩手県、
そしてそこを追い出されて、父親が脳梗塞で店を継がざるを得なかった。
なぜ、女将にならなければいけなかったのだろうか。物事を甘く考えた末の
今のあり方。
片岡某が、何がAdviceを与えてくれる可能性がある。
朝倉夏美をものにするのは、私だ。
勝手にそう考えざるを得ない。
先日元町に行ったとき、トカゲのような顔をした男がいたが、もしかしたら夏美の
と、恵美子は勘でわかった。
さて・・・。
彼女は、その男に白羽の矢を立てようとした。
恵美子は自らの携帯で、朝倉夏美の電話番号を呼び出す。
「もしもし、夏美さん、仕事以外のことなんだけれども、この前あなたのお店に、出入りしていた
男の人が居たじゃない、彼には脈はあるの。」
と恵美子は夏美に聞く。
「あの、その、彼はとなりのブティックの一人息子で、去年イタリアから帰ってきて・・・。」
と、しどろもどろに答える。
「柾樹さんはもう石川県あたりで、他の人と幸福に暮らしている。そして、濱も徳之島
双方とも縁を切ったんじゃないの。」
と受話器ごしに叫んだ。
「え・・。」
夏美は、弱々しく答えた。
「私は分かる、例の洋服屋の男、彼の方があんたを幸福にする。」
恵美子は断言した。
「でも、恵美子さん。あなただって、離婚したはず。徳之島に残してきた人は・・。」
と夏美は言う。
「徳之島の事は、残された人たちで何とかしている。神奈川縣にいる自分たちは
自分たちで何とかしていると思う。」
と踏ん切りのつかない夏美を振り向かそうとした。
夏美は少しの間、無言になっていた。夏美への電話を切った跡、恵美子は片岡に電話を
かけ始めた。
「もしもし、片岡先生ですか。小田原の橘です・・・。」
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どんど晴れ群像傳_1

2012-03-28 18:39:36 | 信・どんど晴れ
「下町は、人間をふぬけにする。そんなことを言うある論客がいた。
その人の言動はまさにそうね。」
ハーブティーの入ったティーカップを手において横手淡雪はつぶやいた。
「やけにはっきり言う。」
クラスメートの立芝ヒカルは苦笑した。
「私がこの神奈川縣の大学を選んだ理由。あんまり東北の人間ばかりで傷を嘗め合うことを
したくないから。」
ティーポットからまたハーブティーを入れながら其れを口にした淡雪。
「私は松山出身。他に西日本や琉球群島出身者も、同じClassにいる。下町という
場所は、なにやら、人なつっこい人が居たけれども、もしかしたら、其れは仮面。」
ヒカルは苦笑している。
pcのmailをスマホで確認している人間。高知出身の岡田蛍。
「大田区の公民館で、大阪の町工場の展示会が行われる見たいだけれども、
大田区だからかな。下町だったら、東北ってかんじかな。」
届いたダイレクトメールに関する感想。
Tentionが高く笑っている女の子というImageの強い蛍だが、メールソフトを眺めている
彼女は、表情を変えていない。
「そうかなぁ・・。」
少し離れた場所のパイプ椅子に座っている女子学生は
「東北と下町ってすごい蜜月だな。漫画とかテレビドラマの影響でみんな人情があって
人なつっこい場所かと関東に來るまで考えていた。」
と言う。鹿児島市出身の永薗幾。
「まあ。Imageではそうかも。その正体は。」
横手淡雪はまたシビアになる。
午後の時間は過ぎていく。
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