ブルーシャムロック

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人は、退出下さい。

自由に生きよ_Epilogue

2011-11-08 17:39:09 | 信・どんど晴れ
「いつも思います。貴殿が自らの手を汚して、大女将の考えていることを打ち砕いて
私を後継者にしたいという事を。朝倉が食中毒の張本人という事も
彼女を遠ざけるための考えてですか。たぶん、彼女は加賀美屋と徳之島を憎み続けるかもしれません。」
私、松本佳奈は複雑な顏をして、女将である加賀美環を見た。
「その代わり、朝倉夏美は横浜において幸福をつかんだわ。」
女将は冷たく口を開いた。
「今になって思うのですが、此處にいることは私の宿命だと。朝倉夏美が生まれ育った近くの
神奈川縣の街に何のために住んでいたのか?ぼけーと学生生活は進んでいった事を。」
私は、淡々と話していたけれども、心の中に悔しさが籠もっていた。
「あなたは、此處の方がいいかもしれない。時折現れる沖縄の女性は、アナタのことを
考えてくれる。もし、加賀美屋の力になるならば、彼女の力を借りるべきね。」
厳しい表情である女将の顏がいささか緩んだ。
「彼女は実を言うと学生時代住んでいた関東で出会いました。自分のことを気にしていまして。」
私は、甘い物と酸っぱい物を一緒にして食べたような顏をした。
「なかなか、彼女に悩まされたようね。」
女将は笑った。
「はい。」
この言葉を言ったときには、女将に同感する氣持ちでいっぱいだった。
女将は自分のことになるとやり過ぎるが、仲間や部下として認めた人には
とことんまでつきあうというのは、旅館と島に来てからびんびんに感じるからだ。
私は閉じられたところの方が力を発揮する。去ってしまった人の自由に幸多かれ。
おわり
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自由に生きよ_肆

2011-11-08 17:38:43 | 信・どんど晴れ
私は結局、伸一さんと別れ、徳之島も出た。
現在は小田原の実家で家業のかまぼこ屋を
手伝っている。
私の携帯にメール着信のチャイムが鳴った。
「恵美子さん、新作ケーキが出来上がりました。夏美」
という内容だった。
夏美さんと言えば、徳之島での嫁ぎ先「加賀美屋」で女将に成りたいと言って
女将たちによって、罠にはめられて追放された朝倉夏美さんである。
彼女も横浜の実家に帰って家業を継いだ。
しかし、そこまではいい。
彼女は、脳梗塞で倒れた父親の後を継がざるを得なかった。あまり腕のよくない彼女のケーキ
は、評判がよくなく、店を閉めざるを得なかった。
あえなく、彼女の実家は店を閉めざるを得なかった。
そこで私は救済で、実家のポケットマネーで彼女の実家を、かまぼこ屋の製菓部門として
再生させることにした。彼女の腕では駄目なので、私の所の職人をある程度入れた。
製菓部門にして、ある程度再生したけれども、父親の後継者としての
朝倉夏美も育成したいと思っても居た。
「恵美子さん、私を支えてくれてアリガトォーございました。」
という内容のmailを貰ったこともある。
悲しいかもしれないけれども、朝倉夏美を支える存在は夫になるはずだった柾樹ではなくて
私と言うところに、悲しさを感じる。
私は、朝倉夏美にmailを入れる。
「夏美さん、私の店で出しているかまぼこのファンのドイツ人の大使館員が
親戚が経営している製菓学校で学ばないかと述べています。
至急RESをお願いします。」
そんな内容だ。
どんな内容がくるのだろうか。
Epilogueにつづく
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自由に生きよ_3

2011-11-08 17:37:56 | 信・どんど晴れ
「それにしても、女将。小生をお引き立てしてくれてありがたいのですが、伸一さんの
奥様には失礼ではないのですか?」
佳奈さんのふざけつつも、甲高い声が聞こえた。
母屋に居る私も聞こえるくらいの聲だ。
彼女はいつも否否ながら旅館の仕事をやっていると執拗く言っているけれども、
私には進んでやっているように見える。
申し遅れましたが、私は加賀美恵美子という。
元々は小田原のかまぼこ會社の社長令嬢なのだが、政略結婚でこの徳之島に來た。
私は今出は専業主婦のようなことをしているけれども、逆に島の人には嫁ぎ先の仕事を
手伝わない怠け者のように思われている。
「母さんは、小田原には戻らないの。」
私の次男が質問する。
「そうね。戻れたら戻りたい。」
少しごまかすように、じなんに答えた。
「あ、そうだ。あの佳奈は関東に言っていたけれども、小田原には行った事はあるかな?」
長男が問いかける。
「私はおばあちゃんごしには聴いたことがない。」
私は、こうべを横に振った。
「ふーん。佳奈はシマが嫌だから関東に行ったみてえだけれども、本当は
関東に冷たくあしらわれた節だろ。逆に島人(しまんちゅ)に好かれている。」
長男は意地悪く言う。
「母さんは、お父さんと別なところに住めばいい。たとえば小田原とか。」
次男は、とんでもないことを口を開いた。
私はビックリしていて、長男はあんぐり口を開けていた。
少し、気不味い空気が流れていた。
つづく
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自由に生きよ_2

2011-11-08 17:37:24 | 信・どんど晴れ
私はあることをふと思っていた。
関東に住んでいたのに、伊豆にも小田原にも行ったことがない自らに対して
私の關東時代のルームメイト、高槻久留実が沼津出身の友人が居て、
彼女の家に泊まりに行ったことを思い出した。
いつも飲んでいる焼酎の氷も溶け始めていた。
「小田原に恵美子さんが歸るならば私の存在がもっと強くなるのか。」
そんなことを考えながら焼酎をぐっと飲み干した。
Masterも私のことを心配そうに眺めていた。
「まあ、佳奈ちゃんは此処の島に着てから、責任感で一杯になるよね。」
笑いながら長細いグラスを磨いていた。
「ええ。そうでしか生きられないから。自由に生きて其れで幸せを一人占めにしている人間
とは体質が違うから。」
焼酎の入っているロックグラスを起きながら、私は語った。
そういえば、私の同学出身の女性宇品は私の下宿先を出入りしていた東岡先輩と
ともに、神奈川縣のfm局に就職を決めた。
私のRoommateもだ・・・。
今の家地に帰るとき、自由に生きて自分の生き方を決めた人間をやっかみ半分で
考えてしまう。
だからこそ、生き延びることを考えるのだ。
私を追放したくて溜まらないここの島の人間は誰だ?
そう。女将の姑である大女将である。追放された朝倉や長男の孫である柾樹の話
ばかりだ。
だからこそ、こいつのために生きている。
関東に居た頃、憎しみを糧にするな。其ればかり言われたけれども
もし、私が此處にいるのは、大女将への存在があるから
そいつに根性を見せるためだ。
私にとって、板長さんなどの加賀美屋の従業員、島に住んでいる人々は自分に優しい。
でも、善意を押しつけてくるので、其れが息苦しい。
ここから私を出るのを拒否し、あきらめさせるために存在しているみたいで怖い。
それ故に自由に生きるのは私は駄目なのだろうか。
本心は自由に生きることを是認している人は朝倉以外にも居るはずだ。
つづく

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自由に生きよ_1

2011-11-08 17:36:38 | 信・どんど晴れ
「女将、先日追放した朝倉夏美ですがね。あいつは加賀美屋の女将だけに収まる器ではない
と考えているのですよ。アイツは枠に収まらない自由な存在なんだ。」
私は、自らの上司である女将に述べた。
女将は私を相変わらずおかしなことを言うと曇った笑いを見せる。
「そこが佳奈ちゃんらしいけれども。まあそう言うことを許さない人がいるから注意しなさいよ。」
女将は、私を厳しい目で見た。
「そうですねぇ。私は掟に縛られる方がいいのかもしれないと思って居ます。今加賀美屋と
徳之島に縛られて生きるのは、自らの運命がそう動かしていると思うのです。」
私は、そう言いながらお客用のお膳を運ぶ。
「まあ、佳奈ちゃんもここに来たときは、神奈川県に帰りたい神奈川県に帰りたいばかり
言っていたけれども、たいした成長だよ。それも生き方だね。」
女将は、そんなことを言いながら、お膳の次に丸まった緋毛氈を運ぶように目をやった。
「はい。朝倉を追放したやり方はフェアではなかった・・・。でも、彼女は浜に返って
そこで自由な精神を発揮するかもしれません。そして、其れを支えるのは婚約者の
柾樹とか言う男じゃない感じがする。」
と頭の中は女将の長男である伸一さんとうまくいっていない嫁の恵美子とか言う
女性を考えていた。
「恵美子さんのことを考えていたのかい。彼女は余り島では好かれていない。
だから、彼女は実家の小田原に帰したいのだけれども、伸一が
子供の親権とかで迷っているからね・・・。所で佳奈ちゃん、
小田原と浜ってどのくらい離れているのかい。」
私の思っていることを女将に悟られた。そしてあまり関東のことに詳しくない
女将は、学生時代関東に住んでいた私に聞いてきた。
「些か距離はありますけれども、電車で一本で行ける距離です。」
と答えた。私は学生時代関東に住んでいたくせに伊豆にも小田原にも行っていない。
「まあ、それだったら、朝倉さんを恵美子さんが助けるというシナリオが出来るね。」
女将がにやりと笑った。
「だといいのですが、そこまでうまくいくかどうか。」
私はそんな虫のいい話は存在しないと思った。
つづく
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