ブルーシャムロック

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小説主体ですので、小説に興味の無い
人は、退出下さい。

ぷりぷり市物語_(最終回)

2010-08-23 21:09:26 | 逆襲の藤隆

「この写本を出版することを決定したいと思うのですが。」
甘井サンが図書館の館長や県知事などの県の関係者の前で
答えた。
「面白いんじゃないの。師匠もこういうのおもしろがってくれそう。」
県知事がくすりと笑っていた。
師匠というのは、県知事が關東にいた頃に落語家をやっていた時代の肆遊亭道解という
有名な噺家である。この県知事、師匠は映画監督などをやり、著明な作曲家を
見いだす男なのに対してのびずに弟子の彼は地元で県知事をやって当選した男である。
まあ、それはいいとして
「これは、これを執筆したもとの模型秘伝帳の記した一族には許可を取ったのかね。」
図書館の館長が怪訝な顏をした。
「ここにいる海老名さんが湖東三山まで赴いて一族の人たちに許可を取り付けて
きました。」
甘井サンがにこやかに私を推してくれた。
お偉方はうんうんと頷いていた。
關東の出版社は
「これで新しい古典文学全集の目玉が出来る。」
と言ってくれた。
かくして、模型秘伝帳の写本はめでたく日本列島と琉球群島で出版されることとなった。
おわり
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ぷりぷり市物語_9

2010-08-23 21:08:47 | 逆襲の藤隆
性の執務室と覚敷和室に通された。
「すごいですね。」
私は古い本に囲まれている事に感心した。
どれも江戸時代以前の本であることは確かである。
「模型秘伝帳の事ですね。原本を見せてあげます。おいっ。」
ふすまが開き、使用人の年配の男性が三方に巻物を載せて入ってきた。
「これが模型秘伝帳か。」
私は感心していた。
木火土金水と書かれた巻物であった。
「少し見せてあげます。」
彼はその中の火の巻と書かれた書物を
みせた・・。達筆すぎる文章で書かれている。私には全く解読不能。
「写本は冊子本だったからか、読みやすかったのですが、巻物なので
読みにくいです。内容の方は・・・。」
私は男性に尋ねた。
「恐らくは、内容は同じでしょう。今見せたのが秘伝中秘伝。
あと103巻はお見せできません。」
男性は意地悪く笑った。
「そうですか。仕方がありませんが、目録はお見せできませんか?」
私は男性に食い下がった。
「目録ですか・・・。」
男性は一瞬考えて・・・。
「目録であるならば、あそこの書棚にあります。一番上の右。」
恐ろしく高くて何があるか解らない。
「梯子もありますので使ってください。」
男性は、木製の梯子を指した。私は其れを使ってぎしぎし言わせながら
書棚の上の本を見た。
「模型秘伝帳目録」
と書かれている。
萌葱色の表紙の本を手にとって、
目録を見る。
模型秘伝帳の108巻に書かれているが、絡繰については何も書かれていない。
「ぷりぷり市で見つかった写本にある絡繰やその他蘭学に引っかかるような
記述は貴殿の一族が所蔵している絡繰などについて書かれていないとあります。」
私は文机に座っている男性にキッパリと応えた。
「そんな馬鹿な。」
男性はPageをめくってみた。
「本当だ・・・。確か・・・我が創一族の中で江戸に出ていたのは・・・。」
彼は古い本やpcのcd-romやdvd-romのDatabaseを探し始めた。
「もしかしたら・・・。」
ある資料のpdf化されたものをみた。
「佐竹藩に召し抱えられていた創五郎左衛門なる男がぷ州藩の但馬守と祐筆に
見せたという日記の記述がある・・・。もしかしたら、彼が偽書として
見せたのでは・・・。」
男性は驚愕の顏をして私を見た。
「もしかしたら、そうかもしれません。偽書として闇に葬り去るのではなくて
写本として出版すれば面白いと思うのですが。」
私は笑いながら、男性を見た。
「参りました。ならば、ぷりぷり市の文章を出版する許可を上げます。」
男性は恐縮していた。
つづく
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ぷりぷり市物語_8

2010-08-23 21:08:19 | 逆襲の藤隆
私が湖東三山に出かけているとき、甘井サンは電話の応対に追われていたらしい。
文学全集を刊行する権限を持っている關東の出版社である。
甘井サンたちが簡単に、出版するといったものだから
全集の担当の人間もぷりぷり市の方に電話を催促するようにしているのだ。
出版社も日本語圏では権限を持っている団体。
ぷりぷり市の都合は考えてもくれない。
「ですから代理の者が、創一族の人間にアポを取っているんです。
そこが上手くいったら、電話かメールが行くと思うのですが・・・。」
かなり口手八町な言い方だなと我ながら思うのだ。
關東の人間も少し猶予を与えるといったようだけれども・・・。
まあ、いいか。
つづく
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ぷりぷり市物語_7

2010-08-23 21:07:39 | 逆襲の藤隆
私は湖東三山に発つことに決めた。
ぷりぷり市のApart より、東に行く事どのくらいだったかな・・・。
まあ、飛行機と電車を駆使して、琵琶湖の東岸に赴く。
京都から乗り換えた車中、列車は、琵琶湖が見え隠れしている。
確かに淡水の海だな。
だから、近江なのだ。
なんて気楽なことを私は独り言を言いながら駅弁を食べた。
乗換駅に着くと、湖東三山はこちら。という表示が出ていた。
思ったよりは早く着きそうだな。
私はそう思ってバスに乗る。
趣のあるお寺が沢山ある。
さてと、此處で参拝するとするか・・。
「模型秘伝帳の全集収録が上手くいきますように。」
お堂に手を合わせる。
お寺を出た跡、模型秘伝帳が伝わっている一族を聞いてみる。
可成り大きな屋敷だという。
屋敷を見てみる。
まるで白川郷の家をこの地方独特の様式にしたような茅葺きの家である。
瓦屋根のお城のような家を想像していたのだけれども。
玄関に私は声をかける。
「私はぷりぷり市の模型秘伝帳の全集推進委員の甘井の代理でやってきた海老名です。
創一族の方にお目通り願いたい。」
しーんとした感じだ。
使用人の方々もいないんだろうか。
すると・・・。
自分と同じくらいの年齢の人間が応対に出た。
「私が創一族の人間です。」
びっくりだった。
「模型秘伝帳の事ですが、写本であるが故に出版の許可をお願いできますか。」
私は、一族の方に懇願した。
「私の部屋に、お通しします。」
男性は、柔和な顏で会釈をした。
つづく




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ぷりぷり市物語_6

2010-08-23 21:06:54 | 逆襲の藤隆
「近江国友村・・。現在は長濱市の一部ですね。今上げた石田三成は
此處周辺の出身だったとか・・・。」
甘井サンは説明した。
「鉄砲の生産が盛んで、その後江戸時代に成った跡も
絡繰を使った機械が盛んだった場所だ・・・。」
私も調べたことを言う。
「ですよね。だから石田三成の旧臣で有るが故に、国友村に
赴いて、本流とは違う邪道として、筆記した人間がいる。」
甘井サンも言う。
「ですよ。だから湖東三山の人間に意見が出来るかも。」
私は期待を持った。
つづく
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ぷりぷり市物語_5

2010-08-23 21:06:09 | 逆襲の藤隆
「何年か前、模型秘伝帳の事を聞いたのですが、おそらく
土の巻と金の巻の技術を受け継いだ東北のある村の話しを聞いたこと
があるのですが、これはいろいろなところにあるようです。
しかし、絡繰人形は、やはり近江の国友村の影響でしょうね。
但馬守や祐筆が見る少し前の時代に影響を与えたのかもしれない。」
甘井サンの出版したいという熱意だろうか。
模型秘伝帳の写本ごときにかたくなになる人間が許せないのか。
「甘井サン、金属や粘土などは石田三成の時代ならば可能ですよね。
絡繰人形については、やはり三成の時代の人じゃない。
ならば、そこにつけいる隙があるんじゃないですか?」
私は毒を盛った笑いをした。
「はぁ。」
甘井サンは私の顏にうっとなった。
つづく
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ぷりぷり市物語_4

2010-08-23 21:05:36 | 逆襲の藤隆
甘井サンから聞いた話しだけれども、
先日模型秘伝帳の執筆をしている一族の人の一人から
メールが来たらしいのだ。
「どんな文面か?」
私は聞いてみた。
「まあ、古典文学全集に載せるのをやめて欲しい。という内容です。」
甘井サンは深刻な顏になっていた。
「やはり、長年秘伝で、この文章自体多くの人に振れる事を恐れている感じでしょうか。」
私は質問した。この写本は、秘伝帳の抜粋のような氣がして成らない。
私は、写本を眺めた。絡繰人形について言及した箇所である。
「石田三成の時代にこんな絡繰人形が存在したかと私は思っているのですよ。
杉田玄白、彼が交流を持った平賀源内は蘭学という当時の最先端科学の人
だからなぁ・・・。おそらく誰かが付け加えたようなと私は思っています。」
黒がかった紫の表紙を見た。
つづく
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ぷりぷり市物語_3

2010-08-23 21:04:59 | 逆襲の藤隆

「近江ですか。となると京都の近くだ。」
私は考えたのだけれども、ここからは聊か遠い場所だなと
思った。
「もし、模型秘伝帳の写本の出版を許可してくれるならば
此處に行かなければと考えています。
もともと石田三成の旧臣だったらしく、徳川王朝の御代は
ひっそりと暮らしていたと聞きます。」
甘井さんは言う。
「今の写本を見ていて、思ったのですが、あまり武家文化のにおいがしません。
町人文化の感じがしますが・・・。」
私は顏をゆがませた。
「私の予想ですが、これを元元書いた人間は、利休や古田織部を見ていて
面白そうに思って、それらと対立した主君の石田三成への皮肉だったのかもと、
写本を研究して思っていましたよ。」
甘井サンは饒舌だ。彼にとってはこの写本の発見はうれしいのだろう。
どうにか成功したいと思ってはいる。
つづく

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ぷりぷり市物語_2

2010-08-23 21:03:48 | 逆襲の藤隆
「海老名さん、この写本を出版したいと思っているんですよ。」
甘井サンは私に小さな声で問いかけた。
「はぁ。いいんですか?」
私は一瞬怖くなった。
「私は、フリーライターとして民俗学や各地の古い習俗を調べてきた
から解るんですけれども、こういう秘伝書は、出版してはいけないと
おもうのですが。」
私はなおも続けた。
甘井サンは
「写本だから、秘伝書の文章をそのまま出すわけじゃないですよ。あくまでも
異本として、出版した方がいいと思っています。」
ときっぱり話した。
「異本ですか・・・。この模型秘伝帳の写本が出版されたのはいつ頃になります?」
歴史に詳しくない自分は、甘井サンに聞いてみた。
「ええとですね・・・。当時の著名人で言えば佐竹署山とか、杉田玄白とか・・。」
なんとなく自分でも解る・・。著明な蘭学者だな・・。
「そういった時代に何故、模型秘伝帳は写本されたんです。」
私は甘井サンに問い続けた。
「今上げた蘭学の徒に但馬守はしきりに接触して、蘭学のノウハウを吸収する一方
伝統的な技術が枯渇するのではないかとおそれを抱いたから、祐筆の日下部に模型秘伝帳

写本させたらしいのです。くだんの模型秘伝帳の一族は近江に根城を張っていたとか・・
。」
甘井サンは資料を見せ続けた。
つづく








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ぷりぷり市物語_1

2010-08-23 21:03:11 | 逆襲の藤隆
私は、現在この記録文を執筆している場所はぷりぷり市という地方都市である。
いわゆる旧日本列島から独立した独立国ではそこそこ大きな街である。
日本列島全体をみるとそこまで巨きくはないのだが、
曲がりなりにも県庁所在地である。
私は、福岡の出身で此處の場所とはあまり無縁な人間である。
そんな私が此處の場所に来たのは、長い間秘蔵になっていた
模型秘伝帳なる文章の写本が発見されたからである。
かつて此處の地方を納めていた藩主に近しかった祐筆の
日下部太郎左衛門なる人間が、江戸に下ったときに
模型秘伝帳を当時の藩主の但馬守とともに見たときに写本を行った
ようである。
太郎左衛門の主君である但馬守は蘭学に興味を持っており、
蘭学を自らの藩の治世に役立てようとしていた痕跡がある。
「あ、海老名さん。来ましたね。」
ぷりぷり県立図書館の甘井サンが特別に招待してくれた。
「不思議だよね。秘伝帳は模型問屋の会長が持っていたとか言っていた
けれども・・。」
私は恐縮しながら甘井サンに訪ねた。
「まぁ・・。写本ですからね見つかったときはビックリしましたが・・・。」
甘井サンは何かたくらんでいるようである。
つづく
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