「近江ですか。となると京都の近くだ。」
私は考えたのだけれども、ここからは聊か遠い場所だなと
思った。
「もし、模型秘伝帳の写本の出版を許可してくれるならば
此處に行かなければと考えています。
もともと石田三成の旧臣だったらしく、徳川王朝の御代は
ひっそりと暮らしていたと聞きます。」
甘井さんは言う。
「今の写本を見ていて、思ったのですが、あまり武家文化のにおいがしません。
町人文化の感じがしますが・・・。」
私は顏をゆがませた。
「私の予想ですが、これを元元書いた人間は、利休や古田織部を見ていて
面白そうに思って、それらと対立した主君の石田三成への皮肉だったのかもと、
写本を研究して思っていましたよ。」
甘井サンは饒舌だ。彼にとってはこの写本の発見はうれしいのだろう。
どうにか成功したいと思ってはいる。
つづく
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