甲子園大会の決勝戦はドラマのようだった。東海大相模と仙台育英、ともに投手が優れているし打撃力もある。エース同士の投げ合いで始まったが、東海大相模の打撃が圧倒した。仙台育英が優勢と思っていたが、どうやら東海大相模の優勝だなと観ていた。ところが6回に仙台育英が6対6に追い付いた。延長戦になるのかと思った。9回表、打者は東海大相模の投手、初球を見事に打ってホームラン。これで一気に仙台育英の選手の気持ちが崩れてしまった。
頑張るぞ!と思っていても何かの拍子に一気に気持ちが萎えてしまうことはある。残念だが人間はそんなに完璧ではない。崩れかかると意外にもろい。それは子どもよりも大人の方が、強そうに見えても弱いかもしれない。立ち直りも子どもの方が早いかな。いや、これはもう大人とか子どもとかの問題ではなく、個人差の問題だと思うが、年を重ねてくるとなるべく辛いことにはかかわらないように、避けるクセがついてくる。
先日、私が教師になって初めて勤めた高校の生徒だったという人に会った。彼は名門校に憧れて入学したが、1年で退学し他の高校へ再入学したと言う。「あまりに自分の思っていたものと違っていた」と話す。入学するとすぐに校舎の屋上で、上級生から校歌と応援の指導を受ける。時には正座させられ、大声を出す訓練を受けたり、「声が小さい!」とカツを入れられる。私もビックリしたけれど、これがこの学校の伝統で代々受け継がれてきたからやめることは出来ないと教えられた。
これが縁で上級生と下級生の強い絆が生まれるようだ。クラス会に呼ばれて行くと、多くの卒業生がこの行事を思い出深く語る。けれども彼のように馴染めなかった者もいる。愛知県の小中学校で不登校が増えていると県教育委員会は発表したが、小学校より中学校の方が圧倒的に多い。学習が難しくなっていることもあるが、学校の雰囲気が小学校と違うことも大きな要素だろう。どうしたらよいのか分からないが、伸び伸びと生きられる社会になって欲しいと思う。