凄まじい雷鳴が響いているが、まだ雨は降っていない。夕立になってくれたら、水遣りをしなくてもすむと勝手なことを思う。雷鳴を聞くとなぜかウキウキした気分になる。地球最後の日といえば、必ず稲妻が走り雷鳴が轟くけれど、誕生と終末はそんなものかも知れない。なのに、雷鳴を聞くとウキウキするのは本当の恐さを知らないからだろう。
記憶などは当てにならないが、子どもの頃はもっと夕立が多かった。急に暗くなり、ザアーと雨が降ってきた。少し雨宿りしていればそのうち止んでしまった。涼しくなっていいなと子どもの頃は思った。最近は、台風は相変わらず来るのに、夕立に逢うことがない。それでも異常気象は日本だけではなく地球規模だというから、何かが起きているのだろう。
8月5日の朝、マリリン・モンローはハリウッドの自宅で変死で見つかった。電話の受話器を握っており、ベッドの側には睡眠薬の空ビンがころがっていたから自殺といわれている。36歳の若さだった。マリリン・モンローは私よりも18歳も年上なので、私は映画を観たことがなかった。性に目覚める頃の私の関心の女優はブリジッド・バルドーだった。
バルドーは私より10歳年上で、デビュー映画となった1956年制作の『素直な悪女』を観て虜になった。バルドーの方がモンローよりも8歳年下なのに、私にはバルドーの方がはるかにセクシーな女優に見えた。モンローの映画は観たことがなかったが、大人になって観た映画では可愛い女性の印象しかない。題名を忘れてしまうほど何も残っていない。
それでも寝る時は「シャネルの5番を着て寝ます」のセリフは知っている。初めは何のことなのか理解できなかったが、裸で寝ていると大人になって分かった。彼女は『百万長者と結婚する方法』とか『お熱いのがお好き』とか、悪女的な役柄が多い。ヨーロッパ映画のようなシリアスなものよりもユーモラスなものを好むアメリカ映画が作り上げたセクシー女優だと思う。
年老いたバルドーは気の毒なくらいの老婆になってしまったが、若くして亡くなったマリリンはいつまでも美しい。彼女の自殺はそのためだったのかと思えるくらいだ。ハリウッドでマリリンの墓を見たけど、なぜかとても可愛い女という気がいっそうした。