
「雪がどんどん落ちてきます。それに風が一そうはげしくなりました。二人は又走り出しました。けれどももうつまずくばかり。一郎がころび、楢夫がころび、それにいまはもう二人ともみちをあるいているのかどうか、前に無かった黒い大きな岩が;いきなり横に見えたりしました。」
やがて二人の前に不思議な、怖ろしい世界が広がって行く。鬼に追われる一団の子どもたち。いつしか二人はその一団に加わり、鬼の容赦ない鞭に怯え、剣が生える山で、足を切られ、身体中が傷だらけになってしまう。弟をけなげにかばう一郎。どうか、弟は許してください。私を鞭うってと哀願する。やがて再び奇跡が起こる。白い素足を持つ人が登場する。その人が歩けば地面の棘も赤い火も足を怪我させることもなく平らな道になった。見ると、あの恐ろしい鬼させ後ろへ下がり首を垂れています。
ここで気がついた兄弟は、別れの舞台となる。弟は死への道を選び、弟をかばい続けた兄は、集落の人たちから食べ物を貰って生きかえる。その生死の境は殆どないと言っていい。あの死の舞台から楢夫は、兄と別れて学校へ勉強をするために行ってしまう。それが、楢夫の辿った道であった。宮沢賢治の「ひかりの素足」はこんな悲しい幕切れとなる。