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常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

レモン

2021年09月02日 | 日記
レモンをよく洗って、輪切りにしてガラス容器にいれ、上から蜂蜜をかけて冷蔵庫で保存する。2日ほどで美味しい蜂蜜レモンの出来上がり。夜の晩酌に焼酎の水割りに、一切れの蜂蜜レモン。これを定番にしてから半年ほどになる。自分の食卓は貧しいものだが、毎日食べるものものがある。朝に味噌汁に入れる銀杏、牡蠣、チーズ。時折り納豆に温泉タマゴ、最近ショウガの醤油漬け。

レモンにはビタミンCが多く含まれ、抗酸化作用があり、特に皮には顕著な抗酸化活性の働きがある。最近テレビの健康番組でも、レモンを皮ごと摂ることで血管年齢を若返らせることが実験結果で出たことが報じられている。米津玄師のヒット曲に「レモン」があるが、その歌詞に「胸に残り離れない苦いレモンの匂い」とあるが、あの苦みこそがレモンのいい所である。ナリンギンという成分でポリフェノールの一種で、脂肪の分解を促進、高脂血症の予防になる。

高村光太郎の智恵子抄に「レモン哀歌」があるが、すでに死の床についた智恵子がレモンを齧る場面が詠まれている。 

そんなにもあなたはレモンを待ってゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとった一つのレモンを
あなたのきれいな歯がかりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱっとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ

梶井基次郎にも『檸檬』という小品がある。病に冒され失意のうちに街を徘徊する主人公が見つけたのは、八百屋の店頭にある一個にレモンであった。「その檸檬の冷たさがたとえようもなくよかった」その鼻をうつ香りを胸いっぱいに吸い込むと「私の身体や顔には温かい血のほとぼりがのぼってきて何だか元気が目覚めてきた」と主人公は述懐する。

梶井も智恵子も、その病のなかでレモンに出会い、生を一時的にせよ蘇らせている。この小さな果実は、人の生に働きかける不思議な力がある。
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