雨あがりに戸外に出ると、終りに近づいている紅花が咲いていた。『おくのほそ道』
の旅で、尾花沢で芭蕉が出会った花である。牡丹とかユリ、華やかな花に比べると花より、この花から採れる紅粉や紅花油などの原料として見る。紅粉はこの花の部分を摘むので、末摘花とも呼ばれ、源氏物語にも登場する。
まゆはきを俤にして紅粉の花 芭蕉
まゆはきをかんじすると眉掃き。顔に白粉をつけたあとの眉をはらう刷毛のことで、その形が紅花を連想するところから、芭蕉のこんな句が生まれた。芭蕉は尾花沢で鈴木清風を訪ねているが、清風はこの地方特産の紅花を商う豪商であった。尾花沢で芭蕉が見たものは、蚕飼いであった。
芭蕉が尾花沢に着いたのは、元禄2年の5月17日(新暦では7月3日)である。清風宅に21日と23日に泊るが、その他の日は、近くにある養泉寺で、風通しがよく、北に開ける景色のよさで旅の疲れを癒すもてなしを受けた。尾花沢で10泊でその間、2つの歌仙の興行が行われ、「すずしさの巻」、「おきふしの巻」の2巻が残されている。
紅花や養蚕という収入の道があったため、俳諧をたしなむ俳人が多数いた。