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常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

2017年09月28日 | 日記


昔、一軒家に住んでいた頃、朝の目覚めとともに聞こえてくるのは、雀の鳴き声であった。このところ、朝、雀の鳴き声を聞くことはほとんどない。畑を耕したり、稲刈りをしたあと、餌を求めて集団でやってくるのを見かける程度である。最近は、雀の数が減少傾向にあるらしい。住宅の形態が、雀が巣をつくることができなくなったことが原因らしい。統計では、2008年に雀の個体数は1800万羽と推定されていた。この20年で約6割が減少したという記事を見た。事実とすれば、その数は640万羽ということになる。この勢いで減少が続くと、雀が絶滅危惧種となる日も遠くない。

鳥獣保護の観点から、法律上、雀を捕獲したり、飼育することは禁止されている。ましてや、焼き鳥にして食べるなどは論外である。但し例外があって、飛ぶことができなくなった個体や親がいなくなった雛を保護して、飼育してもよいことになっているらしい。井伏鱒二の随筆集『人と人影』の冒頭、「中込君の雀」という項で、この親のいなくなった雀の雛を飼う話が出てくる。聞いたことのない雀の雛の生態が書かれていて、実に面白い。

夏の8月24日、雛を家に連れてきた翌日の記事。「胸毛や背中の毛は生えそろわなくて斑である。昨日は、がたがた震えていたが、今日は大半、瞼を閉じていた。雀の瞼は下から上へ閉じる。餌はゆで玉子の黄身とパン。夜は女房がヤマメの白焼を少し食べさせる。綿とぼろぎれでくるんで小さなボール箱に入れて寝かせた。」その翌日になると、雛はすっかり元気になる。「今朝は黒目をぱっちり明けていた。自分で餌を啄いて絶えず動きまわり、よく水を飲む。箪笥の上に乗っけてやると、ヤマメの白焼を置いた卓袱台まで滑空した。」

著者のもとへ、中込君という釣り仲間が雀の雛の飼育状況を手紙で知らせて来る。9月になると、雛は水を飲まなくなった。そのかわり梨を食べている、と書いてきた。著者は、中込君の家に、雀の雛を見に行く。中込君の細君が、水替わりの梨を剥き始めた。雀は卓袱台の上に飛んできて、梨の皮が螺旋状になってお盆の上に溜まって行くと、突然、それに向かって頭から突き進んだ。同時に、ぺたんと坐って羽根や翼を膨らませ、激しく身を震わせた。「水浴びしているつもりでしょう。」と中込君が言った。

子雀を拾ひぬくめて遣り場なし 岩城のり子
コメント
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