みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1279「未来の助言」

2022-07-21 17:32:20 | ブログ短編

 彼には他人(ひと)の未来(みらい)が見えてしまう能力(のうりょく)があった。でもその能力を使うたびに、なぜか彼自身(じしん)に不幸(ふこう)なことが起(お)きてしまう。それでも彼は、助(たす)けを求(もと)められると断(ことわ)ることが――。
 今日もまた、友だちが彼の前に駆(か)け込んで来た。友だちはすがるように言った。
「俺(おれ)、リストラされるかもしれねぇんだ。どうしたらいいかな? 教(おし)えてくれよ」
 彼は嫌(いや)がることもなく、友だちの顔(かお)を見つめて言った。「転職(てんしょく)すればいいよ。君(きみ)がやりたいと思ってることをすれば、きっと成功(せいこう)すると思うよ」
 友だちは彼の助言(じょげん)で転職を決意(けつい)した。そして、その友だちの人生(じんせい)は好転(こうてん)した。しばらくして、彼は突然(とつぜん)、会社(かいしゃ)を解雇(かいこ)されてしまった。
 彼が職探(しょくさが)しをしているとき、たまたま出会(であ)った女性から相談(そうだん)をされた。
「あたし、プロポーズされたんです。でも、その人、悪(わる)い人じゃないけど…。あたしのタイプじゃなくて…。あたし、理想(りそう)の男性に出会うことができるかなぁ?」
 彼は、その女性の顔を見つめて言った。「三年後に現(あらわ)れますよ。その人となら幸(しあわ)せに…」
 彼女はため息(いき)をついて、「三年かぁ…。そんなに待(ま)てるかなぁ。自信(じしん)ないです」
 しばらくして、その女性からプロポースを受(う)けたと聞かされた。
 同じ頃(ころ)、彼はやっと就職(しゅうしょく)が決(き)まった。そして、気になる女性にも巡(めぐ)り会うことが――。
 彼が幸せになれそうになったとき、また別の友だちが相談にやって来た。
「妻(つま)から離婚(りこん)を迫(せま)られてて…。僕(ぼく)は、やり直(なお)したいんだ。どうしたらいいかな?」
<つぶやき>彼はやっぱり助言(じょげん)をするんだよねぇ。今度はどんな不幸が彼に起きるのか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1278「始まりの森」

2022-07-19 17:30:40 | ブログ短編

 彼はどこか分からない森(もり)の中に立っていた。どうしてこんなことになったのか――。
 その道(みち)は山の上へ向かっているようだ。頂上(ちょうじょう)へ出れば周(まわ)りの様子(ようす)が分かるかもしれない。彼はそう思って歩き出した。しばらくして、あることに気がついた。周りに生(お)い茂(しげ)っているのは、見たこともない植物(しょくぶつ)ばかり。木立(こだち)はぐるぐるとうねっていて、真っ直(す)ぐな木は一本もなかった。それに、木に巻(ま)きついている蔓(つる)は、人間(にんげん)の腕(うで)ほどの太(ふと)さがあった。
 突然(とつぜん)、どこからか大きな鳴(な)き声が響(ひび)いてきた。こんな鳴き声は聞いたことがない。まるで、テレビで見た怪獣(かいじゅう)の鳴き声のようだと彼は思った。
 その時、何かが足にからみついてきた。彼が見ると、それは太い蔓だった。ぐいぐいと引っ張(ぱ)られて、立っていられない。彼は必死(ひっし)にからみついた蔓をほどいた。蔓はするすると茂(しげ)みの中へ――。彼は、慌(あわ)てて駆(か)け出した。しばらく走って立ち止まると、どうやら頂上にたどり着いたようだ。彼は辺(あた)りを見回して愕然(がくぜん)とした。そこから見えたのは、どこまでも続く緑(みどり)の森だった。彼がいた世界(せかい)は、どこへ行ってしまったのか?
 不意(ふい)に人の声がした。女の子が駆け寄(よ)ってきて、
「あの、教えてください。どうやったら帰(かえ)ることができますか?」
 彼は答(こた)える。「僕(ぼく)にも分かりませんよ。どうして、こんなところに…」
 彼女はがっかりしたが、少しほっとして、「でも、あたし一人じゃなくて良(よ)かったです」
<つぶやき>これは誰(だれ)の仕業(しわざ)か…。彼らはこの森で生き抜(ぬ)くことができるのでしょうか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1277「うわき」

2022-07-17 17:35:31 | ブログ短編

 それは、ほんの些細(ささい)なことだった。妻(つま)は、夫(おっと)の様子(ようす)がおかしいことに気がついた。夫は隠(かく)しごとができないタイプだ。きっとこれは浮気(うわき)だなと、妻は疑(うたが)いをもった。
 妻は浮気の証拠(しょうこ)を見つけようとしたが、なかなか見つからない。きっと用心(ようじん)してるんだと、妻は思った。それでも妻は根気(こんき)よく捜査(そうさ)を続(つづ)けた。そして半月後、とうとう手掛(てが)かりを見つけた。それは小さなメモで、夫の上着(うわぎ)のポケットから出てきた。
 そこには、<明日、何時(いつ)もの場所(ばしょ)で待ってるね>と、ハートマークまで書いてある。
 妻は思った。「明日は平日(へいじつ)よ。職場(しょくば)の人と…そういう関係(かんけい)になってるの?」
 こうなったら、浮気の現場(げんば)に踏(ふ)み込んで…。妻は、夫の会社(かいしゃ)を見張(みは)ることにした。退社(たいしゃ)の時間は分かっている。夫は残業(ざんぎょう)があると言っていたが、これは嘘(うそ)ね。
 ――妻は、夫の会社が入っているビルの出入口(でいりぐち)にいた。退社の時間はとっくに過(す)ぎているのに、夫の姿(すがた)を見つけることはできなかった。
 妻は思った。「まさか、会社の中で…密会(みっかい)してるの?」
 その時、妻のスマホの着信音(ちゃくしんおん)が…。それは、夫からのメッセージだった。
<どこにいるんだよ。誰(だれ)かと一緒(いっしょ)なのか? 遅(おそ)くならないように帰って来いよ>
 夫は、自宅(じたく)に戻(もど)っているようだ。いつ会社を出たのか? 妻は足早(あしばや)に自宅に向かった。
 ほんとに浮気だったのか、妻は確信(かくしん)が持てなくなった。だが、この妻の行動(こうどう)で、今度(こんど)は夫の方が、妻の浮気を疑い始めるかもしれない。さて、真相(しんそう)はいかに――。
<つぶやき>夫婦(ふうふ)なんて、些細なすれ違(ちが)いから離婚(りこん)ってことに…。気づかいが肝要(かんよう)です。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1276「呼ばれる」

2022-07-15 17:46:49 | ブログ短編

 彼女は、ある声(こえ)に悩(なや)まされていた。それは、彼女の頭(あたま)の中で聞こえているのか、他(ほか)の人は誰(だれ)も気づいていないようだ。その声は、彼女を呼(よ)んでいた。こっちに来るようにと――。
 彼女を悩ます声は、日を追(お)うごとにますます頻繁(ひんぱん)に聞こえるようになってきた。無視(むし)しようとしても、頭から離(はな)れない。彼女は、精神的(せいしんてき)にまいっていた。彼女はすがるように友だちに相談(そうだん)してみた。でも友だちは、「空耳(そらみみ)じゃないの。気にすることないよ」と、ありきたりのことしか返(かえ)ってこない。
 彼女は、もう耐(た)えられなくなっていた。気を確(たし)かにしていないと、その声に従(したが)ってしまいそうになるときも…。そして、いつしか彼女は、声に従えば楽(らく)になるのではないかと思うようになってしまった。
 半月後。彼女の友だちが顔を合わせたとき、一人が言った。
「あの娘(こ)、どうしてるか知ってる? あたし、ぜんぜん連絡(れんらく)が取れなくて…」
「ああ…。そういえば、まえ会ったとき、変(へん)なこと言ってたわよね」
「あの娘(こ)なら、引っ越(こ)したみたいよ。私のことろにメールで知らせてきたから」
「えっ、なんで? もう、教(おし)えてくれればいいのに…。で、どこへ引っ越したのよ」
「そこまでは…。でも、家具(かぐ)とか…そのままになってたみたいよ」
「それって…、ほんとに引っ越したの? まさか、何かの事件(じけん)に巻(ま)き込まれたとか――」
<つぶやき>彼女はどこへ行ったのか? もしかしたら、あっちの世界(せかい)へ向(む)かったのかも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

1275「しずく170~決意」

2022-07-13 17:37:05 | ブログ連載~しずく

 アキは治療(ちりょう)を終(お)えると川相初音(かわいはつね)に言った。「骨(ほね)は治(なお)したけど二、三日は安静(あんせい)にしてて」
 初音はアキにお礼(れい)を言うと琴音(ことね)に目をやった。琴音は気まずそうに近寄(ちかよ)って、
「もう、無茶(むちゃ)するからよ。でも、あの男は何だったの…。幻覚(げんかく)だったのかな?」
 水木涼(みずきりょう)が口を挟(はさ)んだ。「幻覚だったら、きっとあずみ先生なんじゃ――」
 そこへ柊(ひいらぎ)あずみが入ってきた。みんなの視線(しせん)が向けられて、あずみは訳(わけ)が分からず、
「えっ、なに…。どうかした? もう、初音さん。大丈夫(だいじょうぶ)なの? 心配(しんぱい)させないでよ」
 初音は率直(そっちょく)に訊(き)いてみた。するとあずみは目を丸くして、
「私じゃないわよ。こんなケガをさせるようなこと、するわけないでしょ。私はずっと、千鶴(ちづる)と協力(きょうりょく)して、日野(ひの)さんを捜(さが)してたんだから…」
 初音は納得(なっとく)したように、「そうですよね。で、あまりは見つかったんですか?」
「ダメだったわ。私が駆(か)けつけた時には…誰(だれ)もいなくなってた」
 琴音が消(き)え入りそうな声で言った。「ごめんなさい。あたしのせいで…」
 しずくが口を開(ひら)いた。「あなたのせいじゃないわ。あなたは、初音と一緒(いっしょ)にここから離(はな)れて。初音も、そうしたいでしょ?」
「何を言ってるの?」初音は困惑(こんわく)したように、「あたしは…、そんなこと…」
 しずくは何かを決意(けつい)したように、「危険(きけん)すぎるわ。ここからは、私一人で――」
 ずっと黙(だま)っていたつくねが叫(さけ)んだ。「バカ言わないで! これは、あたしたちの戦(たたか)いよ」
<つぶやき>これからどんな戦いになるのか…。彼女たちは生き残(のこ)ることができるのか?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする