それは、ほんの些細(ささい)なことだった。妻(つま)は、夫(おっと)の様子(ようす)がおかしいことに気がついた。夫は隠(かく)しごとができないタイプだ。きっとこれは浮気(うわき)だなと、妻は疑(うたが)いをもった。
妻は浮気の証拠(しょうこ)を見つけようとしたが、なかなか見つからない。きっと用心(ようじん)してるんだと、妻は思った。それでも妻は根気(こんき)よく捜査(そうさ)を続(つづ)けた。そして半月後、とうとう手掛(てが)かりを見つけた。それは小さなメモで、夫の上着(うわぎ)のポケットから出てきた。
そこには、<明日、何時(いつ)もの場所(ばしょ)で待ってるね>と、ハートマークまで書いてある。
妻は思った。「明日は平日(へいじつ)よ。職場(しょくば)の人と…そういう関係(かんけい)になってるの?」
こうなったら、浮気の現場(げんば)に踏(ふ)み込んで…。妻は、夫の会社(かいしゃ)を見張(みは)ることにした。退社(たいしゃ)の時間は分かっている。夫は残業(ざんぎょう)があると言っていたが、これは嘘(うそ)ね。
――妻は、夫の会社が入っているビルの出入口(でいりぐち)にいた。退社の時間はとっくに過(す)ぎているのに、夫の姿(すがた)を見つけることはできなかった。
妻は思った。「まさか、会社の中で…密会(みっかい)してるの?」
その時、妻のスマホの着信音(ちゃくしんおん)が…。それは、夫からのメッセージだった。
<どこにいるんだよ。誰(だれ)かと一緒(いっしょ)なのか? 遅(おそ)くならないように帰って来いよ>
夫は、自宅(じたく)に戻(もど)っているようだ。いつ会社を出たのか? 妻は足早(あしばや)に自宅に向かった。
ほんとに浮気だったのか、妻は確信(かくしん)が持てなくなった。だが、この妻の行動(こうどう)で、今度(こんど)は夫の方が、妻の浮気を疑い始めるかもしれない。さて、真相(しんそう)はいかに――。
<つぶやき>夫婦(ふうふ)なんて、些細なすれ違(ちが)いから離婚(りこん)ってことに…。気づかいが肝要(かんよう)です。
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