みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1276「呼ばれる」

2022-07-15 17:46:49 | ブログ短編

 彼女は、ある声(こえ)に悩(なや)まされていた。それは、彼女の頭(あたま)の中で聞こえているのか、他(ほか)の人は誰(だれ)も気づいていないようだ。その声は、彼女を呼(よ)んでいた。こっちに来るようにと――。
 彼女を悩ます声は、日を追(お)うごとにますます頻繁(ひんぱん)に聞こえるようになってきた。無視(むし)しようとしても、頭から離(はな)れない。彼女は、精神的(せいしんてき)にまいっていた。彼女はすがるように友だちに相談(そうだん)してみた。でも友だちは、「空耳(そらみみ)じゃないの。気にすることないよ」と、ありきたりのことしか返(かえ)ってこない。
 彼女は、もう耐(た)えられなくなっていた。気を確(たし)かにしていないと、その声に従(したが)ってしまいそうになるときも…。そして、いつしか彼女は、声に従えば楽(らく)になるのではないかと思うようになってしまった。
 半月後。彼女の友だちが顔を合わせたとき、一人が言った。
「あの娘(こ)、どうしてるか知ってる? あたし、ぜんぜん連絡(れんらく)が取れなくて…」
「ああ…。そういえば、まえ会ったとき、変(へん)なこと言ってたわよね」
「あの娘(こ)なら、引っ越(こ)したみたいよ。私のことろにメールで知らせてきたから」
「えっ、なんで? もう、教(おし)えてくれればいいのに…。で、どこへ引っ越したのよ」
「そこまでは…。でも、家具(かぐ)とか…そのままになってたみたいよ」
「それって…、ほんとに引っ越したの? まさか、何かの事件(じけん)に巻(ま)き込まれたとか――」
<つぶやき>彼女はどこへ行ったのか? もしかしたら、あっちの世界(せかい)へ向(む)かったのかも。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする