今朝(けさ)は台風(たいふう)の影響(えいきょう)でひどい天候(てんこう)になっていた。テレビ局(きょく)の前では、クルーたちが屋外中継(おくがいちゅうけい)をするために慌(あわ)ただしく準備(じゅんび)をしていた。そこへ中継担当(たんとう)のお天気姉(てんきねえ)さんが、挨拶(あいさつ)をしながらやって来た。彼女を見たディレクターは驚(おどろ)いて駆(か)け寄ってきて言った。
「どうしたの? その衣装(いしょう)……」
彼女は短(みじか)めのワンピースを着ていた。外(そと)は、横殴(よこなぐ)りの雨が降(ふ)っている。
彼女は、ちょっと恥(は)ずかしそうに、「ちょっと、攻(せ)めすぎですかねぇ?」
「いやいや、こんな天気にそれはないだろ。外は嵐(あらし)なんだぞ。踏(ふ)ん張(ば)って立ってないと飛(と)ばされちゃうくらいの…。君(きみ)だって、分かるだろ。それくらい…」
ディレクターは、最悪(さいあく)の事態(じたい)を考(かんが)えていた。これは、間違(まちが)いなく放送事故(ほうそうじこ)になるだろう。クルーたちも加(くわ)わって、彼女を何とか止(と)めようとした。でも彼女は、
「だって、あたし今日が初日(しょにち)なんですよ。可愛(かわい)くいきたいんですけど…」
ディレクターは説得(せっとく)するように、「だから、ね。合羽(かっぱ)を着てもらわないと、濡(ぬ)れちゃうから。傘(かさ)なんか、とてもさせないんだよ」
彼女は口を尖(とが)らせて、「じゃあ、スタジオでやらせてください」
「君は、中継の担当だろ? 外の様子(ようす)をちゃんと伝えてもらわないと。それが、君の仕事(しごと)なんだよ。さぁ、合羽を用意(ようい)してあるんだから、それを着てくれ」
「でも…。あれ、可愛くないんですけど…。可愛い色の合羽ないんですか?」
<つぶやき>あくまでも、見た目重視(じゅうし)なんですね。可愛い服は天気の良い日にしましょ。
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