みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0435「しずく2~食いしん坊」

2019-01-14 19:08:46 | ブログ連載~しずく

 しずくは背中(せなか)に激痛(げきつう)を感じて呻(うめ)き声を上げた。彼女が目を開けると、道路(どうろ)から三メートルほど離(はな)れた塀(へい)の前にうずくまっていた。さっきの激痛はその塀にぶつかったせいだ。しずくの腕(うで)の中で、子供が大きな声で泣(な)き出した。しずくはホッと息(いき)をつく。
 トラックがエンジン音をあげて走り去(さ)って行った。子供の母親が駆(か)け寄ってきて、しずくの腕から子供を抱(だ)きあげる。そして、母親は何度もしずくに礼(れい)を言った。
 しずくは家に帰ると、そっと二階の自分の部屋へ入った。制服(せいふく)は汚(よご)れているし、母親に見つかったらどう説明(せつめい)すればいいのか分からない。トラックの前に飛(と)び出して子供を助(たす)けたなんて言ったら、きっと母親は目を丸(まる)くして気絶(きぜつ)してしまうだろう。
 着替(きが)え終わると、しずくは階下(した)へ降(お)りて行く。母親はキッチンで夕食の支度(したく)をしていた。母親はしずくに気がつくと、「いつ帰って来たの? 今日は早いじゃない」
「ただいま。お腹空(なかす)いちゃった。今日の夕飯(ゆうはん)はなに?」
 しずくはテーブルの上のおかずに手を伸(の)ばす。すると、すかさず母親が言った。
「手を洗(あら)ってきなさい。つまみ食いはダメだからね」
 しずくはペロッと舌(した)を出して退散(たいさん)した。母親には何でもお見通(みとお)しなのだ。後(うしろ)にも目があるようで、たいていのことは見つかってしまう。母親には隠(かく)しごとはできないのだ。でも、今日のことは内緒(ないしょ)にしないと。家族(かぞく)に心配(しんぱい)をかけるわけにはいかないから。
<つぶやき>こっそりつまみ食い。これはやめられないよね。でも、母親にしてみると…。
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