その恋(こい)は、突然(とつぜん)訪(おとず)れた。まるで事故(じこ)のように突然すぎて、彼女もそれが恋だと気づくのに時間がかかったようだ。
彼との初めての出会(であ)いは、それほど印象(いんしょう)に残(のこ)るものではなかった。でも、いつの間(ま)にか、彼は彼女の友達(ともだち)の一人になっていた。そして、気がつくといつも彼女の近くにいて、話し相手(あいて)になったりと距離(きょり)が縮(ちぢ)まっていく。
そして、その時がやって来た。二人だけになったとき――。彼から、突然のキス。
彼女はそれを拒(こば)むこともなく受(う)け入れた…かに見えたのだが――。実(じつ)は、そうではなかったようだ。彼女にとっては、好(す)きでもない人からこんなことをされて、これにどう対応(たいおう)したらいいのか…。彼女にはそのスキルもなければ、恋に対する免疫(めんえき)も皆無(かいむ)だった。
彼女は我(われ)に返ると、目の前の彼を突(つ)き放(はな)した。そして、何事(なにごと)もなかったように振(ふ)る舞(ま)おうとした。しかし、明らかに彼女は動揺(どうよう)している。
彼の方はというと…。彼女の反応(はんのう)が、思っていたのと違(ちが)うので困惑(こんわく)しているようだ。彼は思った。俺(おれ)のこと好きじゃなかったのか…?
どうやら彼は、思い込みで突(つ)っ走ってしまったようだ。彼は改(あらた)めて、彼女に伝(つた)えた。
「おれ…、君(きみ)のことが好きなんだ。もっと君のそばに――」
彼女は、彼の言葉(ことば)をさえぎるように、「ちょっと待(ま)って…。あの…、考(かんが)えさせてよ」
<つぶやき>恋って、思ってもいないところから芽生(めば)えてくるものなのかもしれませんね。
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