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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1337「扉」

2022-12-13 17:43:23 | ブログ短編

 夜の繁華街(はんかがい)。そこは、人間(にんげん)の愛憎(あいぞう)や欲望(よくぼう)が渦巻(うずま)く世界(せかい)。そして、摩訶不思議(まかふしぎ)な世界への扉(とびら)が開く場所(ばしょ)でもある。
 ――とある繁華街の街角(まちかど)に、一人の女が立っていた。その女はとても美しく、街ゆく男は思わず立ち止まるほどだった。そして、まるで花に集まる虫のように、女の周(まわ)りに男たちが群(むら)がり始めた。女はその中の一人の男を選(えら)ぶと、近くの雑居(ざっきょ)ビルに消(き)えて行った。
 そのビルにはいろんなお店(みせ)が入っていた。女は男を連(つ)れて、ビルの地下(ちか)へ降(お)りて行く。居酒屋(いざかや)などが並(なら)ぶ通路(つうろ)の奥(おく)まで来ると、何の看板(かんばん)も出ていない扉(とびら)の前で立ち止まった。
「ここは、何の店なんだい?」男が訊(き)いた。
 女は何も答(こた)えず、ただにっこり微笑(ほほえ)んで扉を開けた。扉の中は薄暗(うすぐら)く、何も見えない。男が入るのを躊躇(ちゅうちょ)していると、女は男の後へ回って背中(せなか)を力任(ちからまか)せに押(お)しやった。男は小さく声を上げると、よろけるように扉の中へ吸(す)い込まれていった。女は、中へ入ることなく扉を閉めた。そして、扉を背にして満足(まんぞく)そうに微笑むと、舌(した)なめずりをした。
 同じ街角に、一人の男が立っていた。今度は、女たちが群がっている。男は一人の女を選ぶと、あのビルの地下へ消えて行った。
 連れて行かれた男と女はどこへ行ったのか…。その姿(すがた)を見ることは二度となかった。不思議なことに捜索願(そうさくねが)いを出されることもなかったようだ。
<つぶやき>これは異世界(いせかい)へ引き込まれたのか。知らない人について行ってはダメですよ。
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コメント
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