彼女が公園(こうえん)で昼食(ちゅうしょく)をとっていると、見知(みし)らぬ男性が声をかけてきた。
「あの…、山田(やまだ)みすずさんですよね。僕(ぼく)は、君(きみ)の運命(うんめい)の人です。よろしくお願(ねが)いします」
彼女は何のことだか分からず、きょとんとしてしまった。彼は続けた。
「神様(かみさま)から連絡(れんらく)が来たんです。僕が、君の運命の人に決まったから、会いに行くように」
「ちょっと待ってください。運命の人って、何のことですか? あたしには…」
「分かります。いきなりこんなこと言われても…、ですよねぇ。僕は、君がその気になるまで待(ま)ちますから。ゆっくり考(かんが)えてみてください」
「困(こま)ります、そんなの…。だって、あなたみたいな人、好きになんか…」
いつの間(ま)にか、彼の後ろにもうひとり男が立っていた。すかさずその男が口を挟(はさ)んだ。
「そうだよなぁ。おい、君。そこをどいてくれないか。彼女の運命の人は俺様(おれさま)だ」
男は彼を押(お)しのけて彼女の前に出ると、「君が好きなのは俺だよな。仲良(なかよ)くしようぜ」
彼女は怯(おび)えたように、「何なんですか? あなたたちは…誰(だれ)なんです?」
「だからさぁ、君の運命の人だって言ってるだろ。早く決(き)めてくれないかなぁ。君の居場所(いばしょ)は公開(こうかい)されてるから、他の連中(れんちゅう)がどんどん来ちゃうんだよ」
彼女が周(まわ)りを見回すと、スマホを手にした男たちが続々(ぞくぞく)と集(あつ)まってきていた。
<つぶやき>神様が作ったアプリに不具合(ふぐあい)があったのでしょうか? とっても迷惑(めいわく)です。
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