「あなた、あたしと付き合う覚悟(かくご)はあるの?」
彼は、告白(こくはく)した彼女からこう言われてしまった。彼は考えた。覚悟って…、何の覚悟だ?
彼女はさらに続けた。「あなた、あたしのこと何も知らないでしょ。もし、知ってたら…」
えっ…、何かやばいことでもあるのか? 彼は思わず答(こた)えた。「いや、ぼ、僕(ぼく)は、ただ、君(きみ)と付き合いたいだけなんだけど…。何か、あるのかなぁ? 君と付き合うには…何か…」
彼女は黙(だま)ってしまった。僕は必死(ひっし)に考えた。彼女の両親(りょうしん)が恐(こわ)い人とか…。いや、そんなことは…。それとも、彼女の元彼(もとかれ)が付きまとっているとか…。いや、そんな話は聞いたことないよなぁ。そもそも、彼女が誰(だれ)かと付き合ってるなんてこと…。あっ、そうか。彼女の家は貧乏(びんぼう)で借金地獄(しゃっきんじごく)にはまってるとか――。
彼女が突然(とつぜん)口を開いた。「あなた、何を考えてるの?」
僕は慌(あわ)ててしまって、「いやいや、別に何も…。あっ、そうじゃなくて…、君のことを…」
彼女は目を伏(ふ)せて、「あなたの覚悟って、その程度(ていど)なのね」
僕は、どう答えればいいんだ? 彼女って、こういうこと言っちゃう娘(こ)だったのか?
彼女は、僕の目を真(ま)っ直(す)ぐに見て言った。「本気(ほんき)であたしと付き合いたいんなら、ちゃんと誠意(せいい)を見せてください。そうじゃなきゃ、あなたとは――」
「分かったよ。えっと…、誠意ね。誠意を見せるから…。で、僕は、何をすれば――」
<つぶやき>彼女って真面目(まじめ)すぎるのか、それとも…。告白するときは、よく考えて…。
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