彼女は目の前にあるショートケーキを見つめていた。もう10分以上も思い悩(なや)んでいるようだ。そんな彼女を見て妹(いもうと)が、意地悪(いじわる)そうな顔をして言った。
「ねぇ、お姉(ねえ)ちゃん。いつまでそうしてるつもり? あたしが食べてあげてもいいのよ」
「ダメよ、そんなの…。これは…私のなんだから…」
「でも、ダイエットするんでしょ。で、どうなの? あの人には、いつ告白(こくはく)するつもり?」
「そ、それは、あれよ。もう少し…あれしたら……するわよ。絶対(ぜったい)……」
「お姉ちゃんさぁ、あの人と出会(であ)って何年たつんだっけ? 一目惚(いとめぼ)れだったわよねぇ」
「そ、それが何よ。あなたには関係(かんけい)ないでしょ」
「関係あるわよ。あたしも協力(きょうりょく)してあげる。お母さんに、甘(あま)い物は買わないように――」
「止めてよ。私から、甘い物をとらないで…。甘い物がなかったら、私…生きていけない」
「お姉ちゃん、そんなんでいいの? 好きな人に告白できないのは、覚悟(かくご)がないからよ。痩(や)せてから告白しようなんて、ちゃんちゃら可笑(おか)しいわ。太(ふと)ってもいないくせに」
「あ、あなたに何が分かるのよ。私は…。私はね…」
「そんなことしてると、欲(ほ)しいもの手に入らないわよ。他(ほか)の人のものになってから後悔(こうかい)したって遅(おそ)いんだから。すぐに告白するの。今のお姉ちゃんの気持ちをぶつけて、それでダメだったら諦(あきら)めもつくじゃない。そうでしょ。――で、半分(はんぶん)、もらってもいいかなぁ?」
<つぶやき>女子の身体(からだ)の半分は甘い物でできている。甘い物には心ひかれちゃいますね。
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