大佗坊の在目在口

見たり、聞いたり、食べたり、つれづれなるままに!!

その夜の侍

2009-07-14 | その他
戊辰の鳥羽伏見の戦いの後、鳥羽伏見から大坂・紀州に
逃れた会津藩士の足跡を追いかけていて、西条八十が
昭和二年に発表した「その夜の侍」と題する詩のことを知った。

その夜の侍
              西条八十
宿貸せと
縁(えん)に刀を投げ出した
ふぶきの夜のお侍。

眉間にすごい
太刀傷(たちきず)の
血さえかわかぬお侍。

口数きかず
大いびき
暁(あさ)までねむってゆきました。

鳥羽のいくさの
すんだころ
伏見街道の一軒家 。

その夜、炉ばたで
あそんでた
子供はぼくのお祖父さん。

ふぶきする夜は
しみじみと
想いだしては話します。

「うまく逃げたか、斬られたか。」
縁に刀を投げ出した
その夜の若いお侍。
                (昭二・三)

少年倶楽部名作選の「短編少年詩ほか」(講談社昭和四十一年)に
収録されている。
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