白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(86) 八代亜紀「舟唄」のこと

2016-06-08 17:17:25 | うた物語
「舟唄」のこと

お酒はぬるめの 燗がいい
肴はあぶったイカでいい
女は無口な人がいい
灯りはぼんやり ともりゃいい
しみじみ呑めば じみじみと
思い出だけが 行き過ぎる
涙がポロリと こぼれたら
歌いだすのさ 舟唄を

沖の鷗に深酒させて
いとしあの娘とよ
朝寝する ダンチョネ

店には飾りが ないがいい
窓から港が 見えりゃいい
はやりの歌など なくていい
ときどき霧笛が なればいい
ほろほろ呑めば ほろほろと
心がすすり 泣いている
あの頃 あの娘を 思ったら
歌いだすのだ 舟唄を
ぽつぽつ呑めば ぽつぽつと
未練が胸に 舞い戻る
夜更けに淋しく なったなら
歌いだすのさ 舟唄を
ルルル ルルル・・・・

1979年(昭和54年)八代亜紀のスタッフは新曲の歌詞は阿久悠にお願いすると決めた 
最初は女心を歌った歌詞を持ってきたが ディレクターが気に入らず何度も書き直しをさせた 
そして出てきたのはほろ苦い男歌で「舟唄」といった 
そのころ阿久悠はスポニチに「実践的作詞講座」なるものを連載していて その美空ひばり編にその詞は載ったのだが 
阿久悠は苦しまぎれで その詞を引っ張り出したのである

浜圭介の曲もうまく乗り アイドル・ニューミュ―ジック全盛の時だったが 
じわじわとヒットチャートの順位が上がって行き 
周囲からはレコード大賞も狙えるという声もあったが 大賞はジュデイ・オングの「魅せられて」に持って行かれる 
ただ八代亜紀は大晦日の紅白歌合戦は大トリで「舟唄」を歌うことが出来た
(翌年同じスタッフで作った「雨の慕情」でレコード大賞を獲得する)

この紅白歌合戦の放送を北海道でみている男女を描いた映画「駅 ステーション」が出来たのは2年後の1981年 
高倉健、倍賞千恵子の有名なそのシーン
「わたし この歌好きなのよ」
「年末や新年は水商売の女の子の自殺が多いの だって男たちはみんな家に帰るでしょう」

この店「桐子」がある増毛町(ましけちょう)にはもう一軒重要な店があります
追っている犯人の妹(烏丸せつこ)が働いている「風待ち食堂」がそうです
この映画からインスピレーションを貰って出来た曲が鳥羽一郎の「風待ち食堂」です

人の世の坂 ころげ落ち
裏目裏目と 生きて来た
ふらり風待ち 湊の食堂
熱い番茶を すすりながら
俺はお前を 目に止めた
いい女だと 焼き付いた

ずっとここかと 聞いてみた
ずっと一人と 目を伏せた
北の風待ち 港の食堂
海が荒れたら 淋しだろね
そっとかばって やりたくて
ジャンバーを脱ぎ 抱き締めた

(新木創子作詞)

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