白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(430) 「バビロン」と「キネマの天地」

2023-03-04 11:01:09 | 映画

「バビロン」と「キネマの天地」

「ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督作品として鳴りもの入りで封切られた「バビロン」がどうも不調らしい 先月(2023年2月)たまたま沖縄のシネコンで観たのだが観客はわずか8名だった いつ終わってもおかしくない入りだ 長時間の映画との予備知識をもって臨んだが最後はシッチャカメッチャカになってしまい訳が解らなくなっていた どうも映画に臨む姿勢が間違ったらしい 

リウッドのSEXシンボル クララ・ボゥがモデルといわれるマーゴット・ロビー扮する新人女優の出世の物語、そう松竹映画の「キネマの天地」の有森也実扮する田中小春( 田中絹代がモデルか)を観る姿勢で見始めたのだ それ程この二つの映画には共通点が多い 時代も近くトーキーに切り替わる1920年代から1930年の頭まで映画産業が異常に大きく伸びた良き時代を描いていることもあるが( そうキネマの天地の副題はThe Goldenage  of  Movie)   アメリカと日本ではこんなにも違うのか 「バビロン」のブラピの役どころのサイレント映画の二枚目スター役の田中健が遊びに行くのは木の実ナナが歌って踊るクラブだが、ハリウッドの酒池肉林のパーティに比べその貧弱なこと アメリカでは役者のウサバラシに使うのは酒池肉林のパーティと大量のヤクとSEXを使うのに日本ではたかが酒とSEXだ

「キネマの天地」の脚本部の島田(中井貴一)は「バビロン」では映画製作志望のマニー(ディエゴ・ガルパ)だが極めて日本的にブルジョワの息子で左翼闘士の友人がいる(面白いのは本棚にマルクス兄弟(喜劇グループ)の洋書がありマルクス主義者に間違えられる) 岡田嘉子のソ連逃亡など日本の「キネマの天地」では近づく戦争の影が描かれているが「バビロン」ではそんなそぶりも全くない

ちなみに「バビロン」にはアメリカ映画の名作「雨に歌えば」が頻繁に登場するが この映画も又同じ時代を描いた映画である トーキーに変わっていく過程を面白おかしく描いた作品であるが封切当時は不入で不評であったが売れない映画をテレビの穴埋めに使われ、何度も放送されているうちにその主題歌も相まってだんだん良さが判ってきて今やアメリカ映画のベスト映画に必ず入っている

「キネマの天地」

東映の深作欣二に「蒲田行進曲」を作られ松竹人として悔しく思っていた野村芳太郎は 盆暮れに必ずニ本撮っていた「寅さん」を一本中止して貰って(寅さんレギュラー陣はこの映画に全員参加)製作した 脚本には井上ひさし、山田太一、朝間義隆、山田洋次が参加、監督には山田洋次 

松竹大船撮影所50周年記念 (たかが50年前の話だ)

蒲田末期から大船に移る直前までの話である(1986年封切)

「バビロン」2022

バビロンの名に相応しい狂乱の1920年代からトーキー革命を経て30 年代の新しい映画に順応できずある者は自殺してある者は人知れず消えていく 戦後昔映画製作志望だった青年が懐かしいハリウッドを訪れる 小さな映画館にフト入るとあの頃の話の映画をやっていた

脚本・監督  デイミアン・チャゼル

ブラッド・ピット マーゴット・ロビー

遥かかなたの話のようだがたかが100年以内の話しだ 映画はそれ程歴史を持っている訳でもない

たかが映画!!、されど映画!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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