白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(151)老女優は去りゆく

2016-10-15 07:46:54 | うた物語
  老女優は去りゆく

 僕がこの曲と出会ったのは梅沢劇団の市川吉丸に誘われて行った名古屋のとあるゲイバーのショウの中だった 
美輪明宏の歌に合わせてブサイクな彼女(彼?)が女優を演じて笑わし、そして泣かせた

老女優は去りゆく 美輪明宏 作詞・作曲

これでお別離なのね この劇場も
化粧を落として 煙草をふかせば
思い出すわ あの頃を 過ぎた昔を
女優を夢に抱いて 街へ来た頃を
私は十六 田舎訛りで
震えながら訪ねた ここの楽屋口

長い下積みの後で やっとありついた
端役でも 私は嬉しかったわ
それからはだんだんと 主役になれて
輝くスポットライト 浴びた歓び
楽屋には花々 拍手の嵐
取り巻きの人々 甘い生活

「でも若くして成功した誰しもがそうであるように 私もついいい気になっていた
その後 数多くの失敗が続いた 批評家には叩かれ 主役はライバルに持って行かれた
おまけに愛する夫は 若い女優と駆け落ち たった一つの心の支えだった子供は病気で死んで 
それを優しく慰めてくれていたあの人も事故で死んだ

ふと気が付くと まるで潮が引くように 私の身の回りから人々が遠ざかっていた
孤独の中で毎晩、毎晩浴びるようにお酒を飲んで やがてアルコールと麻薬の中毒、そして入院 
あの泥沼の中から這い上がるまでにどんな思いをしたか決して誰にも判らないわ
世間では私のことを再起不能と嘲笑っていた 落ちぶれた過去のスター! 落ち目の流れ星!

・・・もう一度 舞台に立ちたい あのスポットライトの下で拍手を浴びたい
私は恥を忍んでカムバック目指して通行人の端役から出直した 人々の同情の眼 蔑みの
眼にも耐えた なぜならば私には女優としての誇りと自信があったから 
でもその後の想像を絶する人々の悪意 意地悪 屈辱の数々 
でも私は負けなかったわ 耐えて耐えて耐えて耐え抜いた 

そしてとうとうあの念願かなったカムバックの日 
太陽のように輝くスポットライト 嵐のような拍手を私は一生忘れないわ

色んな役をやった 女王も 娼婦も 人妻も 娘も 
でもそれらは 今は夢幻のように消えて 私はすっかり老いさらばえて
今日 この劇場で引退していくのだ」

そうよ この劇場は解かっているのね
舞台に人生を 賭けた私を
私の何もかも 生きて来た道を
さようなら愛する 我が劇場
老兵は静かに 消え去るのみ
出ていくまで明かりは 消さないでね
出ていくまで明かりは 消さないでね

「ありがとう、ありがとう」

この一曲で長編のドラマ(しかも古きヨーロッパの)を見るような構成でよくできている
YouTubeで見ると演じている(歌っているのではない)美輪の演技も見事で人気絶頂の時は「こうまんちき」な顔となり 落ちぶれたときもプライドだけは忘れずすっかり老婆になって引退するときもちょっぴり寂し気に去っていく それでも大女優だったというプライドだけは忘れない

さて日本においてこのような女優はありえるのだろうか ノーである
まず日本ではよっぽどの事件(殺人、麻薬)を起こさないと落ち目にはならない 
ある程度の地位を築いた女優は単に演技力のなさぐらいで干されることはない
あり得るとしたら何とか先生(男優、脚本家、演出家)の愛人とかいう立場の女優である
先生が亡くなったり 消えていったりという理由で干されるということが多々ある
先生に敵が多かった場合 各プロデューサーは手のひらを返すように使わなくなる
何人かはそうして消えていったが元々演技力がないので再起することはなかった

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