白鷺だより

50年近く過ごした演劇界の思い出話をお聞かせします
     吉村正人

白鷺だより(140)あめんぼあかいな

2016-09-16 09:03:34 | 思い出
あめんぼあかいな
平成21年2月急性大動脈解離で倒れ 岸和田の病院に担ぎ込まれ7時間に渡る手術の末
何とか命拾いして退院 その後 金剛にあるリハビリ専門の病院でリハビリに精を出した
左半身が不随のため 車いすでの移動の稽古 食事 排泄 入浴など日常生活に必要なことの練習 箸で大豆を掴む練習とかコップを移動させるお稽古だとかの体の運動と並行して普通に喋ることが出来ない僕が言語のリハビリを始めた 60日の入院制限があるため理学療法士や作業療法士がキチンとカリキュラムを作っての療養・トレーニングだった 僕の担当の理学療法士はPCで僕の仕事を調べ 吉村さんはお芝居をやってるのだからテキストはこれにしますと渡されたのが北原白秋の「五十音」であった そうそれは大学に入って劇団エチュードに入って腹式呼吸とともに先輩に教えられたのがこの「あめんぼあかいな」であった

北原白秋「五十音」

水馬(あめんぼ)赤いな ア イ ウ エ オ
浮藻に小蝦(こえび)も泳いでる 
柿の木栗の木 カ キ ク ケ コ
啄木鳥(きつつき)こつこつ 枯れけやき
大角豆(ささげ)に酢をかけ サ シ ス セ ソ
その魚浅瀬で刺しました
立ちましょ喇叭で タ チ ツ テ ト
トテトテタッタと飛び立った
蛞蝓(なめくじ)のろのろ ナ 二 ヌ ネ ノ
納戸に ぬめって なにねばる
鳩ぽっぽ ほろほろ ハ ヒ フ ヘ ホ
日向(ひなた)のお部屋にゃ笛を吹く
蝸牛(まいまい)螺旋巻(ねじまき)マ ミ ム メ モ
梅の実落ちても見もしない
焼き栗ゆで栗 ヤ イ ユ エ ヨ
山田に灯のつく宵の家
雷鳥は寒かろ ラ リ ル レ ロ
蓮華(れんげ)が咲いたら瑠璃(るり)の鳥
わいわいわっしょい ワ ヰ ウ ヱ ヲ
植木屋、井戸替え お祭りだ、


やがて体の練習が平行棒の伝い歩き、階段の上り下りになってきたころテキストがかわり
「外郎売り」になった これもエチュードの滑舌練習で散々やったテキストで
武具馬具 ぶぐばぐ 三ぶぐばぐ 合わせて武具馬具 六ぶぐばぐ や
菊栗 きくくり 三菊栗 合わせて菊栗 六菊栗 などの部分は覚えていた
二代目団十郎が初演したと言われ「勧進帳」「鳴神」「助六」などと並んで 歌舞伎十八番の一つである


拙者親方と申すは お立会いの中 ご存じのお方も御座りましょうが お江戸を発って二十里上方相州小田原一色町をお過ぎなされて 青物町を登りへおいでなさるは 欄干橋虎屋藤衛門 只今は剃髪いたして 円斎と名乗りまする

冬の二月に倒れ 半年のリハビリ期間を終えてなんとか退院したのは もう秋だった