天命を知る齢に成りながらその命を果たせなかった男の人生懺悔録

人生のターミナルに近づきながら、己の信念を貫けなかった弱い男が、その生き様を回想し懺悔告白します

倍賞千恵子著『お兄ちゃん』文中記「寅のアリア」のラッシュを見た浅丘ルリ子さんがそっと涙を拭いていた

2010-11-12 22:49:08 | 日記
今日の日記は、私が今読んでいるエッセイ書・倍賞千恵子著『お兄ちゃん』(廣済堂出版1997年刊)のことです。添付した写真は、その著書の表紙です。
この著書は、映画『男はつらいよ』で車寅次郎(渥美清)の妹・さくら役で共演した倍賞千恵子が渥美清との長い思い出を綴った心温まる名エッセイです。私はこの著書の中で、特に感動したエピソード第6章『渥美さんの目に魅せられて・リリーさんの涙を誘った「寅のアリア」』の一部を、以下に引用し皆さんに紹介します。
『渥美さんと芝居をしていると、目に魅せられます。とても小さな目ですが、でも、本当にすばやくいろいろに変化します。・・いつのころからか、「寅のアリア」と呼ばれる場面が「寅さん」に現れるようになりました。おダンゴ屋さんの茶の間で、おいちゃん、おばちゃん、博さん、満男、そしてさくらさんに囲まれ、お兄ちゃんが一人たっぷり語るのに耳を傾ける場面です。・・私が憶えているアリアは、「リリー・シリーズ」の第二作「寅次郎相合い傘」の中のアリアです。・・しばらくおダンゴ屋に滞在することになったリリーさんが、お兄ちゃんに送られながら、ある晩仕事に出かけます。戻ってきたお兄ちゃんが、茶の間で深々と溜息をつきます。そして、今リリーさんが日々を送ってきたキャバレーがどんなに貧しげか、そんなところで客がろくに聞いてもいない歌を歌うリリーさんがどんなに悲しい気持ちかを語るのです。
「あーあ、俺にふんだんに銭があったらなあ」
「お金があったら、どうするの」
「リリーの夢をかなえてやるのよ。例えばどっか一流劇場、歌舞伎座とか国際劇場とか。そんなところを一日中借り切ってよ、あいつに好きなだけ歌を歌わしてやりてえのよ」
「そんなふうにできたら、リリーさん喜ぶだろうね」
「ベルが鳴る、場内がスーッと暗くなるな。-みなさん、大変長らくをばお待たせいたしました。ただいまより歌姫リリー松岡ショーの開幕であります。静かに緞帳が上がるよ。スポットライトがパーッと当たってね、そこに真っ白けなドレスを着たリリーがすっと立っている。いい女だよ、え。それでなくたって、あいつは容姿はいいしさ、目だってパチッとしているから派手なんですよ、ね。ザワザワザワザワザワ。「出た!」「綺麗ねえ!」「いい女だなあ」「あ、リリー、待ってました!」「日本一!」。やがてリリーの歌が始まる。♪一人酒場で飲む酒は・・・場内はシーンと水を打ったようだよ。みんな聞き入っているからな。お客は泣いてますよ。リリーの歌は悲しいもんねえ。やがて歌が終わる。花束、テープ、紙吹雪。ワーッと割れるような拍手喝采だよ。あいつはきっと泣くな。あの大きな目に涙がいっぱい溜まってよ、いくら気の強いあいつだってきっと泣くよ」
あとでこのラッシュを見たルリ子さんが、そっと涙を拭いていたと、スタッフから聞きました。』
倍賞さんが紹介したこの映画の「寅のアリア」場面は、とても感動な名シーンです。私も、寅次郎が渾身を込めて、リリーへの愛を歌い上げる姿(アリア)に何度観ても涙します。

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