マンドリンの繊細な調べがことのほか好きである。期待して出かけたのだが、半分満足し、半分少し疑問が残った…。その疑問とは、「はたしてマンドリンという楽器は合同演奏に向いているのか?」という素朴な疑問である。
5月19日(日)午後、札幌コンサートホールKitaraで札幌市民芸術祭の一環として開催された「マンドリン音楽祭」に参加した。札幌市民芸術祭の各部門の催しは無料、または安価のために参加しやすい催しである。今回の「マンドリン音楽祭」も無料で開催された。
音楽祭は3部構成となっていて、第1部「独奏・重奏の部」、第2部「学生団体合同演奏の部」、第3部「学生団体・社会人団体合同演奏の部」から成っていた。
第1部の「独奏・重奏の部」では、次の3組がそれぞれ次の曲を演奏した。
◇デュオ・モ・ルエラニ〈マンドリン・マンドラ二重奏〉
(K.ヴェルキ/古典的様式によるソナチネ3番ニ長調)
◇森羅万象〈マンドリン・ギター二重奏〉
(C.ムニエル/スペイン奇想曲)
◇Sound₋Hole〈マンドリン・マンドラ・マンドロンチェロ四重奏〉
(ながえわかこ/「あさひかわ」四つの風景)
それぞれがマンドリンの繊細な音を奏でる演奏で私の期待を満たしてくれた。特に、森羅万象のお二人の演奏は息の合った素晴らしい演奏だったと私には思えた。
さて第2部の「学生団体合同演奏の部」であるが、この部には小樽商科大学プレクトラム・アンサンブル、藤女子大学マンドリンクラブ「フジ・フロイライン」、札幌月寒高校マンドリン部、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」の4団体66名が一堂に会しての合同演奏だった。演奏した曲目は…、
◇鈴木静一/狂詩曲「海」
◇E.グラナドス/歌劇「ゴエスカス」より間奏曲
◇丸本大吾/花の賛歌より Ⅲ.Flower Ⅳ.Inheritance
◇鈴木静一/劇的序楽「細川ガラシャ」
そして第3部の「学生団体・社会人団体合同演奏の部」では、札幌プレクトラム・アンサンブル、北海道教育大学札幌校マンドリンクラブOB・O G会、札幌マンドリン倶楽部、北海道大学チルコロ・マンドリニスティコ「アウロラ」、フィラルモニカ・マンドリーニ・アルバ・サッポロ、マンドリン・アンサンブル「カシオペア」、藤女子大学マンドリンクラブ「フジ・フロイライン」、マンドリン・アンサンブル「セレステ」、プレットロ・ノルディコ、函館北方マンドリンクラブ(特別出演)、と実に8団体105名という大規模の演奏となった。演奏された曲目は…、
◇丸本大吾/願いの叶う本
◇武藤理恵/コバルトブルーの奇跡~旅立つ君へ~
◇木村雅信/タンゴ・シンフォニカ op.288
◇K.ヴェルキ/序曲第4番ロ短調
以上の4曲だった。
残念なことに私はこれら合同演奏の部で演奏された曲のほとんどが印象に残らなかったのである。それは演奏が拙かったからでは決してない。いや、錚々たるメンバーによる演奏はそれぞれ素晴らしかったはずなのにである。
それはきっと、私の中でマンドリンの演奏はデュオやトリオ、あるいはクワルテットなど少人数による演奏こそが、マンドリンの良さが発揮されると思い込んでいたからではないかと思う。だから私は合同演奏を聴きながら、私の中のどこかで「違う、違う」と思いながら聴いていた節があったように思われる。
私はできれば少人数とは言わずとも、団体ごとに演奏できなかったか、という思いが残る。きっとそれは音楽祭を主催する側の都合があったのだろうと想像はするのだが…。
私は今年の春「Mandolin × Guitar Duo 森羅万象」が主催するコンサート「マンドリンの宴」において間近に少人数のマンドリン演奏を聴いてとても感動した体験が忘れられなかったせいなのかもしれない。
もっとも、会場でいただいたプログラムには各団体のこれからのコンサートスケジュールが記載されていた。私のような思いをもった者はぜひ各団体のコンサートにお出かけくださいという主催者側からのメッセージなのかもしれない。
そのメッセージを受け止め、できるだけコンサートに足を向け繊細なマンドリンの調べを堪能したいなぁ、と考えている。